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第23話:次の記録へ

 「みなさん、こんにちはー! まどいろちゃんねる、本日も元気にスタートです!」


 いろはの明るい声に続いて、まどかが少し間を置いて画面に映る。


 「さて、では本日の目的は──」


 「新しい街への移動でーす!」


 まどいろのレベルは、まどかが33、いろはが32。

 コボルト砦の攻略もスムーズだったし、そろそろより難易度の高いエリアを拠点にしたいという話になっていた。


 WLAにはメインストーリーのような一本道は存在しない。

 プレイヤーは好きな場所へ行き、好きな活動をして、好きな道を選ぶ。


 とはいえLV帯によって、だいたいの拠点地は決まってくる。

 LV1~10は最初の町 《ノルメリア》 、LV11~20は港町 《リーヴェン 》、LV21~30は魔法都市 《ウィルザード》 等、


 町から町への移動はワープ施設で瞬間移動できるが、その場所に一度でも訪れたことがある場合のみ。

 今回は今メイン拠点にしている魔法都市 《ウィルザード》 から、

 LV30~40のプレイヤーにお勧めの、鉱山都市 《ブレイドロック》 へと移動予定。


 「というわけで、本日は 《ブレイドロック》 まで、フィールド踏破しながら向かいます!」


 既にある程度情報が出回っているルートなので、特に問題は起きないだろう。

 途中、いくつかの小モンスターとの戦闘もこなすが、今のレベル帯では苦戦する相手ではない。


 視聴者コメントも和やかで、


 ▶ 今日はまったり旅配信?

 ▶ トリックスター、野外だとまた映えるなー

 ▶ BGMのチョイスが旅感あってすき


 などの声が流れている。

 

 戦闘半分、雑談半分で移動をしながら20分ほど経ったころ、視線の先に大きな影が見えてくる。


 「……あっ、見えてきた。あれが、次の街だね」


 岩山に抱かれた城壁の向こうから、かすかに槌音と蒸気の音が響いてくる。

 黒鉄の門は煤けた風格を漂わせ、冒険者や荷馬車の列が静かにその前に並んでいた。

 近づくごとに、じわりと熱を帯びた空気が肌をなでていく。


 「おーすごい! ザ鉱山都市! って感じ。ちょっと見て回る?」


 「そうだね、せっかくだし」


 ──と、そのとき。


 ぴろん、とログインメッセージとは違う、少し重厚な効果音が鳴った。


 「……システムメール?」


 いろはが確認するより先に、まどかが先に開く。


【WLA公式運営よりお知らせ】

このたび、配信者支援プログラムの一環として開催される

特別イベント『ネクスト スター アーカイブ』に、貴方を招待いたします。


招待対象:ゲーム内から誕生した有望な配信者5組

目的:配信者としての“総合力”を3つの異なる競技を通して競っていただきます

※競技内容は当日まで非公開

※開催日は一週間後。詳細スケジュールは別途連絡いたします


 「……えっ」


 いろはが読み終わる前に、まどかがすっと顔を上げた。


 「今……これって、私たち、選ばれたってこと?」


 「ネクスト……スター……? 名前、えぐない!?」


 「でも、ほんとに……うちら、招待されてる」


 対象者は、このゲームをきっかけに配信を始めた人たちの中で、特に注目されている5組。

 運営の文面にもあった通り、元々配信者として有名だった人──

 たとえば詠月ルナのような、ゲーム外からのファンも多く抱える存在は選出対象外らしい。


 だからこそ──まどかといろはのように、

 このゲームの中で配信を始めた新星たちが対象となっていた。


 「まどにゃん……ど、どうしよう。手ぇ、震えてきた……」


 「……わたしも」


 コメント欄が急激に流れ始める。


 ▶ え、ネクストスターってまじ!?!?!?

 ▶ おめでとうーーー!!!!

 ▶ 古参ファンが、うちの子が……!とか言ってそう

 ▶ う、うちの子が……!


 緊張。興奮。少しの不安。

 でも、そのすべてを上回る喜び。


 自分たちの名前が、世界に“認められた”という実感。


 まどかは、一度深呼吸をした。

 そして──カメラに向かって、まっすぐに言う。


 「……選ばれたからには、恥ずかしくない姿、見せるから」


 「わたしたちを応援してくれてる人たちの期待を、裏切りたくないもんね!」


 2人の目が合い、自然と笑みがこぼれる。


 配信者になって、まだ日は浅い。

 でも、着実に足跡は残してきた。


 そしていま、その一歩が、世界に響こうとしている。


 「ネクスト スター アーカイブ」──

 配信の未来を決める競演の舞台”、幕を開けようとしていた。

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