表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/131

第19話:仮面の先にあるもの

 《奇術師の仮面》

 アイテム効果:職業 《トリックスター》への転職が可能になる


 その文字がウィンドウに表示された瞬間、

 まどかを含む四人全員が、固まった。


 「トリックスター……?」


 いろはが、小さな声で読み上げる。


 「派生職だ……しかも、シーフからの」


 ミナトが静かに呟き、サラが目を丸くした。


 「えっ、でも、トリックスターって……今まで聞いたことないわよ?」


 すると、次の瞬間、さらに一行の情報が表示される。


《この職業は、現在この世界において確認されていない未発見の状態です》

《対応アイテムの使用により、存在が確定されアクティブ化されます》


▶ うわあああ初確認職業きたーーー!!!

▶ トリックスター!?そんな職あるの!?

▶ ガチでまどにゃんが最初の1人!?

▶ え、やば、歴史動いた瞬間じゃん……

▶「まさか……初確認の、職業……?」


 ゲーム開始から約4ヶ月。

 職業の派生ルートはいくつか確認されてきたものの、まだ全容は明らかになっていない。


 条件不明の職業も多く、転職アイテムですらその存在が稀少。

 そんな中で──今、まどかが手にしているのは、この世界でまだ誰も到達していない職業の鍵。


 まどかの憧れの存在詠月ルナも剣士の派生職、ダブルブレイカーへと転職しており、

 こちらも、2か月ほど前にルナが発見して以降、次の転職者はいまだ生まれていない。


 「……どうするの、まどにゃん?」


 いろはが訊く。


 「もちろん、使うよ」


 即答だった。


 「うん! ここでためらったら、配信者じゃないよねっ!」


 まどかが 《奇術師の仮面》を手に取る。


 ゆっくりと、その仮面を自らの顔に近づけ──


 その瞬間、画面が暗転する。


【システムメッセージ】

▶ プレイヤーネーム 《まどか》は 《トリックスター》へと転職しました

▶ 《初代トリックマスター》の称号を獲得しました

▶ 新しいスキルを獲得しました


 ──空間が弾けるように開き、まどかの体が光に包まれる。


 軽やかな音楽とともに、衣装が変化する。


 ショートマントのような装飾、装身具のようなナイフホルダー、

 そして袖元や足元には、軽快で演出的なフリルと刺繍が追加されていた。


 見た目は確かにシーフの流れを汲んでいる。

 しかしその動きは、もう“ただの盗賊”ではない。


 演目の主役のように。舞台の中心で敵を翻弄する“道化”のように。


▶ えぐ……演出すごっっ!!

▶ 見た目やばいカッコいい……

▶ 称号までついてる!?!?

▶ まどにゃんが、主役の衣装をまとった感じする……

▶ トリックマスターって響き好き


 さらに、最後のシステムメッセージが、画面上に浮かぶ。


《プレイヤー 《まどか》により、職業 《トリックスター》がアクティブ化されました。》

《職業 《トリックスター》をワールドのアーカイブへと登録します》


 静まり返る一瞬。

 全員が、その言葉の意味を噛みしめる。


 ワールドリンクアーカイブ──このゲームの名のもう1つの由来。

 この世界の“記録”と“歴史”が、プレイヤーの手で更新されるという仕組み。


 いま、まどかが選んだ行動が、

 この世界に「トリックスター」という職業の存在を初めて刻みつけたのだった。


 「……すごい、ね。ほんとに、記録されちゃった」


 まどかが、やや呆然としたまま言葉を漏らすと、

 隣にいたいろはが、にっこり笑った。


 「うん、まどにゃんはね、そういう人なんだよ。

 ただの“推し活”で入ってきたのに、気づいたら……主役になっちゃう人」


 「……主役って感じじゃないけど」


 「いいの! 今の、すっごく絵になってたから!」


▶ いやこれ、まじで伝説回だよ……

▶ 推しから始まって、世界の記録を更新するって物語すぎる

▶ トリックスターって響き、まどにゃんにぴったりすぎる

▶ ありがとう、まどいろ……!


 まどかの手には、ナイフ。

 その立ち姿は、数分前までの“シーフ”だった彼女と、まるで違って見えた。


 そしてその姿は、間違いなく──

 このゲームにとって、新たな“始まり”だった。

ここまでお読みくださりありがとうございます。

ここで第1章終了となります。

この後軽く1章のエピローグを挟み2章を開始していきます。

1日1回+αで更新は続ける予定ですので引き続きよろしくお願いします。

よろしければブックマークや感想等いただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ