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第130話:期待と味見

 

 国家トリガーレイン王城の一室。


 その中央でホログラムのウィンドウを操作するのは、この国の国王にしてトッププロゲーマーの一人 《キルティア》。


 愉快げにスクロールを続ける彼の視線の先には、今まさにWLA最大の注目を集めているトピック──「トリガーレインVSグラストムーン 国家戦」に関する匿名掲示板のスレッドが映し出されていた。


 日本サーバーではWLA始まって以来、初の国家戦。


 ゲーム内でも公式サイトでも告知されており、プレイヤーたちの注目度は極めて高い。


 当然、掲示板も日々勢いを増し、参加国のメンバー構成や過去の戦績、想定される戦術予想など、あらゆる角度から議論が繰り広げられていた。


 ちなみに、海外サーバーではすでにいくつか国家戦が行われた前例がある。


 その戦況や仕様に関する情報も一部共有されており、WLAファンたちの考察材料になっているようだ。



 掲示板の情報によれば、グラストムーン側の運営陣として現時点で確定しているのは以下の七名:


 ルナ(Lv78)、リーフ(Lv78)

 キジトラ(Lv61)、ラスク(Lv58)、タンクお兄さん(Lv56)

 まどか(Lv51)、いろは(Lv51)


 ルナとリーフは言うまでもなく、グラストムーンの建国と運営を担う中心人物。


 キジトラ、ラスク、タンクお兄さんの三人は、グラストムーンに所属する精鋭たちであり、自警団として活動している団員と団長である。


 国内の治安維持や、低レベルプレイヤーの支援を積極的に行っており、国民からの信頼も厚い。


 そして近年、著しい活躍を見せている配信者コンビ──まどかといろは。


 レベルこそ他のメンバーに比べれば控えめだが、先日のPvP配信などでも高い戦術眼と柔軟な対応力を示しており、実力面での評価は非常に高い。


 ちなみにこの2人は、前述の自警団の初期設立に関わった名誉団長という肩書きも持っている。



 対するトリガーレインの運営陣は、すでにお馴染みのレギュラー9名が確定している。


 キルティア(Lv78)、パイナップル(Lv71)、だーさん(Lv68)、

 たこすけ(Lv65)、ライモンド(Lv62)、ミケ(Lv61)

 ワタル(Lv57)、ぴょぴょん(Lv55)、シャケ(Lv52)


 この9人は全員、現役のプロゲーマー。


 特に国王キルティアは、某VR格闘ゲームにおいて日本ランキング1位、世界ランキング3位という、誰もが知る超トッププレイヤーだ。


 彼を筆頭に、パイナップルとだーさんはVR総合スポーツゲームの世界ランカー。


 そのほかのメンバーも、いずれも名のあるタイトルで世界100位以内にランクインしている猛者ばかりである。


 掲示板内では、当然ながら「プロゲーマー9人」という圧倒的なインパクトから、トリガーレイン優勢と見る声がかなり多い。


 さらに、国民数でもトリガーレインが優位であることから、戦力面での差を指摘する意見も少なくない。


 だが一方で、グラストムーンにはWLAのトップランカーであるルナとリーフが揃っていること。


 さらに他の5人のメンバーも全員、レベル以上の実力を認められているプレイヤー達である。


「残り3名次第では、普通に勝ち筋はある」──といった声もそれなりに見られる。


 実際、海外で行われた国家戦では、レベルや人数で劣る国が勝利した事例も存在している。


 特に注目されているのが、「運営陣専用バフ」の存在。


 このバフは通常ステータスに対して乗算ではなく加算でかかる仕様であり、その結果運営陣ユニット同士は、レベル差をかなり緩和できると言われている。


 つまり、運営枠に入った時点で「戦力」として一定の補正を受けるため、純粋なレベル差だけが勝敗に直結するわけではない。


 結果、プレイヤースキルや連携、構成の妙によっては、格上相手にも十分に戦える可能性がある。


 とはいえその点をとってもやはり、プロゲーマー集団のトリガーレインが優位を譲ることはないという見解が大半の意見ではあった。



 ──掲示板の読み込みを終えたキルティアは、満足げにウィンドウを閉じた。


「いやー、盛り上がってる盛り上がってる。強引にでも宣戦布告して正解だったな」


 ゆったりと立ち上がり、肩を回しながら言葉を続ける。


「ほんとは、もう少し育ってからやりたかったけど……ちょっとくらい味見しとかねーと我慢できねーよな」


 その表情には、相手を挑発するような悪戯っぽさと、純粋な楽しさが混ざり合っていた。


「今回のメインディッシュは別であるし、こっちも一切油断できないからな……。うちのメンバー相手に、どこまで食いつけるか──期待してるぜ」


 誰にともなくつぶやき、キルティアは軽快な足取りで部屋を後にした。


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