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第125話:勝負の行方は

 

 まどかとソラは、二度、三度と攻防を繰り返していたが、いずれも決定打を与えるには至っていなかった。


 絶影を使えば、おそらく勝負を大きく好転させることができる。


 しかしその後に待っている10分間の速度半減というペナルティが、どうしても頭をよぎる。


 たとえこの試合に勝てたとしても、次の試合で不利を背負ったまま戦う羽目になるのは明白だ。


 絶影を使えば、ソラはその瞬間から完全に守りに入る可能性は高い。


 制限時間いっぱいまで逃げに徹された挙句、逆転を許す可能性もある。


 そうなれば、次戦もペナルティを抱えたまま挑む羽目になる。


 そしてソラには、それを警戒せざるを得ないだけの実力がある。



 一方のソラも、決して奥義を使おうとはしなかった。


 彼の奥義は火力と手数が大きく強化されるが、その場から動けなくなるというリスクを抱えている。


 仮にスキルを発動したとしても、今のまどかであれば全てを躱しきり、逆に的になってしまう可能性が高い。


 動けない自分に、まどかの攻撃が集中すればひとたまりもない。


 互いに奥義を切る決断をできないまま、膠着した戦いが続いた。



 そんな中、戦況が動いたのは、まどかのちょっとしたミスからだった。


 これまでと同じように矢を躱し、銃を撃ち込んで牽制する。


 戦況は動かないまま時間だけが経過していくが、ふと気づけば、闘技場内の罠の数が確実に増えている。


 このままでは身動きがとれなくなる。そう判断したまどかは、銃を使って罠を誘発・破壊し、設置数を減らそうとした。


 だが、狙った罠は遠距離攻撃に反応する“反射罠”だった。


 銃弾は罠に命中すると180度向きを変え、まどか自身へと返ってくる。


 そしてそのタイミングを見計らったように、ソラが矢の連射を開始。


 まどかは防御と回避に回るが、体勢を崩したままでは対処しきれず、ついに被弾を許してしまう。


 即座に矢の連射が続き、まどかは立て直す余裕すらなくなっていく。


 追い詰められた末に、まどかはついに絶影を発動。


 発動してしまったからにはもうこれで仕留めきるしかない。


 色々考えてた事は全て一旦忘れて、これからの攻めだけに集中をする。



 やはり絶影の効果は絶大で、一瞬にして攻守が逆転。


 すべての矢を躱しきったうえで反撃に転じる。


 ソラも即座に戦法を切り替え、防御に徹する。


 まどかの残像の動きを目で追い、銃声の方向や破壊される罠の位置から、まどかの大まかな位置を割り出して対応する。


 的確な判断と反射神経で、直接的な一撃は避け続けていた。


 だが、時間とともにソラの罠はひとつ、またひとつと破壊されていき、ついには全て消失。


 今度はソラが追い詰められる側となり、まどかの放つ牽制の銃弾を受け流しながら、逃げ場を失っていく。


 そして、満を持して放たれた決め技—— 《終絶》 。


 タイミングを見極めた一撃が、正面からソラを捉え、直撃。


 勝利を確信したまどかだったが、ソラの姿はその場に立ったまま消えなかった。


 HP1で耐えるタイプのスキル、もしくはアイテムによる効果だろうか。


 ソラは、ギリギリのところで致命傷を回避していた。


 そして、まどかが決め技の硬直から回復するまでの一瞬、ソラはいつの間にか手にしていた黒いナイフでまどかの腕を引き裂く。


 とっさに振り払い、後退ろうとするまどかだったが、嫌な予感に駆られてぐっと踏みとどまる。


 そしてその場で瞬時に反撃に転じた。


 間合いはゼロ。ナイフを振り下ろし、ソラの身体を貫く。


 その瞬間、ソラの姿は光に包まれて消滅した。


 まどかの勝利が確定する。



 しかし、表示された自分のHPを確認したまどかは思わず凍りつく。


 ……想定以上に削られていた。


 その原因は「状態異常:猛毒」。


 最後のナイフの一撃に付与されていた状態異常が、急速にとまどかの体力を削っていたのだ。


 猛毒状態ではHPが減少するだけでなく、回復効果の減衰や反応速度の低下といった複数のデバフも同時に与えられる。


 もしあの瞬間、後退していたら——、先に倒れていたのは自分だったかもしれない。


 まどかは軽く身震いしながら、それでも勝利の余韻をかみしめる。


 勝ちは勝ち——しかし、思った以上に時間を使ってしまった。


 いろはとの勝負の行方は、ますます厳しいものとなっていく。

誤字報告ありがとうございます、修正いたしました。


ストックが完全に切れて更新速度がガクンと落ちてしまいましたが、

なるだけ出来次第で更新していこうかと思いますので引き続きよろしく願いいたします_(._.)_

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