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第106話:届いた報せと、新たな扉


 ダンジョン攻略の配信を終え、ログアウト前の軽い達成感に包まれていたまどかだったが、グラストムーンの城下へと帰還したその瞬間、意外な展開が待っていた。


 ゲーム内SNSの通知──発信者は、グラストムーン国王・ルナ。


 彼女の名前の横に小さく「お知らせ」とタグのついた更新情報には、月の竜宮城に関する重要な仕様変更の発表が書かれていた。



 月の竜宮城に挑戦してくれた皆さんありがとう。

 現在このダンジョンでは、パーティによってボスのレベルが変動する可能性が確認されています。


 推奨レベル46というのは、私たちが最初に試した時点のボスレベルに基づいた暫定評価でしたが、

 条件によってはさらに高レベルの個体が出現するケースも報告されています。


 詳細な条件はまだ確定しておらず、現時点では

『道中で倒した敵の種類や数』『進行ルート』などが影響している可能性が高いです。


 ネタバレ防止の観点から細かい内容は伏せますが、挑戦者の皆さんは、戦い方を少し意識してみると予想外の展開が起こるかもしれません。健闘を祈ります。



 淡々とした文章のなかにも、彼女なりの誠意と警告が滲んでいた。


 まどかはその内容に、思わず「……もしかして、見てくれてたのかな」と小さく呟いた。


 だが同時に、冷静な思考も働く。

 数日間で何百というパーティが挑んでおり、成功・失敗問わず膨大なデータが蓄積されているはず。


 その中には当然、同じ乙姫との遭遇ルートをたどった冒険者がいたかもしれない。

 ──自分たちの配信だけが決め手とは限らない。そう自分に言い聞かせる。



 それはそうと、ひとつ気になる要素があった。


 配信後、ログを見直していて気づいたのだが──

 ダンジョンを出る直前に、まどかといろはのログウィンドウに同時に浮かんだ通知。


 【称号獲得:「餅月うさぎの友人」】


 その効果が問題だった。


 「月の竜宮城を再訪した際、餅月うさぎ達の住処へと案内される」


 これまでに確認されたどの情報サイト、攻略ブログ、SNSにも、この称号についての報告は出ていなかった。


 もしかして、自分たちだけが手にした特別な条件なのだろうか?


 ──だとすれば。


 「ルナさんに、報告しておいた方がいいかもね……」


 そう言って、まどかはスクリーンショットを添えてダイレクトメールを送信した。


 それから少し時間をおいて、2人は城下にあるフィーノ達の農場を訪ねた。


 報酬として入手した月面人参の種──あれを、渡しておこうかと思う。


 畑では、フィーノ、ユーリ、クレアの3人がいつものように農作業に励んでいた。

 まどかが手を振ると、フィーノが帽子を脱いで手を高く掲げた。


 「まどかさん、いろはさん! おかえりなさい!」


 人参の種を手渡すと、フィーノはまるで宝石を渡されたかのような反応を見せた。


 「これは……! かなり上質な野菜の種だね! ありがたい、感謝するよ!」


 「お返しに、今朝採れた野菜たちを──」


 そう言って、かごいっぱいのトマトやナス、珍しい青紫の小麦などを押しつけてくる勢いで渡してくれた。

 ストレージに収めながら、2人は笑顔で頭を下げる。


 「……料理スキル誰かに頼まないとねぇ」


 と、いろはがぼやいたそのとき──


 「ん? 新着……」


 まどかの視界に、DMの通知が再び表示された。

 送信元は、ルナ本人だった。


 その内容は、かなり長文だった。


 おつかれさま! まどいろの2人が竜宮城を突破配信見てました、おめでとう!

 報告の件、まさかそんなルートが存在するとは思わなかったよ……

 今までの挑戦者はどれも高レベルPTで、一気にボス戦へ進行してウサギ撃破ルートばかり。

 だから“乙姫撃破で竜宮消滅→称号獲得”ってのは完全に初耳!


 しかもその称号効果、ウサギたちの住処に入れるって……かなり特殊だよね。

 あのダンジョン、インスタンス形式で組ごとに違う可能性があるって話も出てるし、まだまだ解析が必要そう。


 もしよければだけど──通常の抽選とは別枠扱いで何時でも入れるようにしておくから。

 調査のために、もう一度ダンジョン入って確認してもらえないかな?

 報酬は……まあ、国王裁量ってことで、期待しといて!笑


 少し砕けた文面に、まどかは思わず頬を緩めた。


 「……見てくれてたんだ、やっぱり」


 「うん、しかも期待されてるっぽい……!」


 まどかはいろはの方を振り返り、目配せをした。


 竜宮城、再挑戦──確定だ。


 それはきっと、思っている以上に“特別な場所”の入口なのかもしれない。

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