第105話:報酬は2度おいしい
「……じゃあ、開けてみようか」
乙姫の崩れた場所に現れた大きな宝箱の前で、まどかが一息ついてから蓋を開ける。
中に詰まっていたのは、見るからに豪華なアイテムの山だった。
「うわ……これはすごい……!」
まず目に入ったのは、金鉱石や銀鉱石がぎっしりと詰まった袋。
どちらも換金アイテムとしても価値が高く、さらにアクセサリー制作や錬金素材としても使える万能素材だ。
▶︎ 「おおお!金銀ざっくざく!」
▶︎ 「売っても良し、素材にしても良し!」
▶︎ 「鉱石でワクワクするのはもう職人の性」
さらに装飾アイテム――珊瑚の髪飾りが目を引く。
淡く輝く赤珊瑚に精巧な貝細工。装備すれば水中での移動速度UP効果があるらしい。
「水中ダンジョンあったっけ? まあ、いつか絶対来るやつか、もってて損はないね」
次に手に取ったのは、装飾の美しい小刀。
海色に輝く金属で鍛えられており、銘には「乙姫の懐刀」と刻まれていた。
未強化状態でも、現在使用しているナイフとほぼ同じ性能を持っており、
特殊効果付きと考えれば、使い分け次第で確実に火力アップが期待できる。
▶︎ 「武器もらえるの熱いな!」
▶︎ 「水中特化っぽい?珍しい性能」
▶︎ 「名前が美しいね…」
さらにまどかが手にした瓶には、澄んだ青い液体が揺れている。
海神の飲み薬。
効果時間は30分、水中での呼吸不要に加え、緩やかな体力回復効果まであるという。
「これ、水中ボス戦とかでめっちゃ使えそう……!」
その隣には、竜宮の真珠。
すり潰して服用することで、万病に効くとされる万能薬。
もちろん錬金術素材としても最高級の扱いだ。
そして――
「うわ、まだある!」
宝箱を漁っていると、【餅つきウサギ】たちが続々とアイテムを抱えてやってくる。
まるで感謝の証のように、ぽてぽてと両手いっぱいに宝を抱え、順番にまどかたちへと手渡してくる。
▶︎ 「うさぎ達が健気でかわいい…」
▶︎ 「感謝の押し売り助かる」
▶︎ 「こんなにたくさんいたんだなぁ」
届けられたアイテムの中には――
三日月の髪飾り:MP自然回復量が+50%。うっすらと青白く光る魔力の装飾品。
月の紅玉:うさぎの瞳を思わせる赤い宝石。魔力の宿りが深い。
月面煎餅:食べると5分間重力が少し軽くなる。ユニークなバフ効果。
月面人参の種:育てると甘くて美味しいニンジンが採れるという、農業系アイテム。
「うさぎたち、いっぱいありがとうね」
まどかが手を振ると、うさぎ達は一斉にぴょこぴょこと頭を下げた。
ぶさかわも負けじと「キュッ」と鳴き、うさぎのひとりにハイタッチならぬ前足タッチをしている。
▶︎ 「癒しの極み」
▶︎ 「ぶさかわほんと主役」
▶︎ 「お土産いっぱいww」
報酬アイテムを見渡しながら、まどかが少し真面目な顔で呟く。
「珊瑚の髪飾りと薬は水中向け……懐刀も火力上がるし……三日月の髪飾りはいろは用かな」
「真珠とか鉱石はサラさんに相談かなぁ……煎餅の効果は未知数だけど、場面によっては強いかも」
「人参の種は……うん、フィーノさん達にあげよう。絶対喜ぶでしょこれ」
ひと通り整理を終えて、ふと立ち止まる。
「……っていうか、こんなに豪華な報酬。もしかして、あの乙姫……本物の乙姫だったのかな?」
思い返せば、謎は多かった。
最初に現れたウサギ、突然玉手箱を渡した乙姫、そして暴走、そしてこの宝。
「だとしたら、一体何が起きてたんだろうね……」
疑問は尽きないが、今はひとまずこれで終了。
竜宮城ダンジョン、無事攻略完了――。




