第9話:迷いの森の仕掛け
「わあ……森だ……」
いろはの声に、まどかも思わず立ち止まった。
ダンジョンの中とは思えないほど、本格的な森が広がっている。
「ここが“迷いの森エリア”。見た目通りって感じだね」
いろはの声も少し緊張を含んでいる。
足を踏み入れた瞬間、視界が開けた。広がるのは木々と草、霧のようにゆれる空気。
ここがダンジョンの中とは信じがたいほど、空間の密度も、質感も本物の森にしか思えない。
「MAPはランダム変形型で、進み方を間違えると入口に戻されるって」
「うわぁ、苦手そう……」
足元を慎重に進んでいく。
森の境界は見えないけど、攻略情報ではこのエリアは目に見えないブロック構造になっていて、
“正解の方向”に進まないと敵が出るという仕組みらしい。
敵が出たら元の道へ戻り他の道へ、敵の出ない道だけを通り続ければ森を抜けることが出来る。
わかっていれば単純ではあるけど実際その場に立ってみると距離感が狂う。
「大丈夫、攻略法自体はわかってるから。とりあえず、正面へ……10メートル」
歩き始めて数秒、唐突に空気が変わった。
ざわ、と木々が揺れ、茂みの影から何かが飛び出してくる。
「敵っ!」
フォレストウルフ、大型犬ほどの大きさの樹の体を持つ狼が2匹、
反射的にナイフを構えたまどかが前に出る。
いろはもすぐに魔導具を構え、魔力の光がほとばしる。
「二連歩──!からのスラッシュ!」
2匹の間に一気に飛び込み、まどかのナイフが横なぎに2匹の狼を切り裂く。
いろはの補助魔法がそれをサポートし、危なげなく戦闘をこなす。
だがやはり防御が硬い、LV20の時に奮発して買ったナイフだったけど、
さすがにそろそろ火力不足かな、また新しいの買わなくちゃな・・・。
そしていくらかのかすり傷をうけつつも、5分ほどかけて2匹の狼を倒しきる。
……けれど。
「思ったより消耗激しいな……」
「うん……MPもアイテムもちょっとずつ減ってる……」
息を整えながら、まどかは小さく頭を振る。
「今のうちに決めておこう。極力、戦闘は避ける。どうしようもない時だけ戦うようにしよう。」
「うん、了解、まどにゃん」
その後、まどかの空間認識といろはのサポートを頼りに、探索を続ける。
道を外しても気づかれる前に回避できたケースも多く、
8回のハズレの道を進みつつも、戦闘はトータルで4回に抑えられていた。
しかもそのうち1回は、いろはが盛大にすっ転んでバレるというお約束つき。
「次が……正解を7マス分進んだところ。そろそろ抜けると思うんだけど……」
まどかは少し息を止めて、前へと足を進める。
新しい十字路を勘に任せて北の方向へと抜ける。そして
……敵は、現れなかった。
霧が晴れ、木々の隙間にやわらかな光が差す。
視界の先、地面の中心に見慣れた転送陣が浮かんでいた。
「やった……!」
「抜けたああああああ!!」
▶ ここのギミック、攻略法知っててもムズいんだよな……
▶ 4戦で抜けたの普通に優秀すぎる
▶ まどにゃんの距離感ほんと頼れる
「マジで疲れた……涼しい森なのに、汗かいた気がする……」
「私も、ぐるぐるしすぎて今どの辺か微塵もわからなかったよ……正直まだ出られてない気分」
「安心して。ここに転送陣があるなら、間違いなく出口」
まどかが淡く笑う。
達成感と同時に、わずかな緊張感が溶けていく。
でも、油断はできない。
この先には、もっと大きな“見せ場”が待っている。
「確かこの先は……森の地下迷宮エリア。敵のレベルがもう一段階上がるよ」
「だいじょうぶだ!もんだいない!」
▶ あああ、なんでフラグを
▶ 次回、いろは死す!
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