半年前 ①
漠然と未来は、確約していると思っていた。
死は順番通りに訪れ、俺達の順番はまだまだ先だと思い込んでいたんだ。
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山笑う季節に、大親友だったつむぐが死んだ。
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「犯人は、未来がある若者なら誰でもよかったと話したそうです。岬つむぐさんの事を思いながら皆さんで黙祷を捧げましょう」
未来が確約してるなんて誰が決めたんだろう。
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「航大、俺、大学進学は出来ないと思うんだ」
「何で?」
「実はさ、父さんの会社潰れるみたいでさ。家も全部手放してもかなりの借金が残るらしい」
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犯人よ。
勝手に未来があると勘違いしてんじゃねーーぞ。
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「この先の未来が俺には見えないよ、航大」
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その命を必死で燃やし、両親の為に使おうとしていた……。
つむぐの人生を返せ。
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「犯人の名前は、大河内昇容疑者です。幼い頃から、未来の見えない生活をしていた彼にとって若者は輝かしい未来に進む事が出来て腹立たしかったと言います」
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未来を見させてくれない大人達の犠牲になったのが、つむぐだ。
犯人に少しでも未来を見させていたら……。
状況は、変わったかもしれないだろう?
あの日、つむぐの絶望と犯人の絶望がピッタリと重なりあって、犯人はつむぐを……。