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蒟蒻パスタ

作者: 大石次郎

ぽっちゃり系の夏木さんは昼休みになると保健室に行く人だった。


ある日、弁当に昨日の残り物の蒟蒻パスタを持ってきてしまった結果、昼休みの終わりくらいにお腹が痛くなった私は教室に戻る夏木さんとバッティングした。


「條原さん?」


「夏木さん、昨日の蒟蒻パスタ食べたらちょっとヤバそう。でもダイエットできるかも? なんつって。へへっ」


私はヨロヨロと保健室へ入っていった。



高1の2学期になると、私の通っていた女子校では蒟蒻パスタが大流行した。


理由はいくつかあるけど、一番大きいのは夏木さんが夏休み明けにすっかり痩せて漫画のように美少女化し、さらに、


「毎日、蒟蒻パスタ食べた」


と発言した為、私達はある種のパニック状態になった。


通学圏内のスーパーから糸蒟蒻とシラタキが消え、ついには普通の蒟蒻さえ消えた。


そして9月下旬になると私達は全員多少の減量と引き替えに、お腹が緩くなり、気力体力が衰え、学力は落ち、体育部は弱くなった。


結果、蒟蒻自粛令が学校から出され、11月になると寒くなったこともあり、夏木さん以外の私達は元の体重に戻った。



高3の冬休み、私は早々に推薦が決まっていたので同じような子達とその日はカラオケで騒いでいた。


トイレの帰りにドリンクバーに向かうと、バイトをしていた夏木さんと遭遇した。


「夏木さん! ここでバイトしてたんだぁ」


「キッチンで入ってる。ドリンクバーは外にあるけど」


私がジュースを注ぐ間、何故か夏木さんは固まった。ん?


「・・條原さん。私、蒟蒻パスタで痩せたというのは嘘。カウンセリングで暴飲暴食を辞めただけ。それだけ」


夏木さんはそう言って、作業を終えるとキッチンの方に去っていった。


私は誰にも言わずに卒業した。

夏木さんは皆に期待された芸能界ではなく栄養士の専門学校に進んだ。



スーツの上着を抱え、私はスマホ片手に下町の人気古民家カフェを目指していた。


美人過ぎる店主とか書かれてる。そんな事はまぁいい。鰆の蒟蒻パスタをメニューに入れてるのはちょっと面白いと思ったけど、それも一番じゃない。


そう言えば友達になってなかったぞ。と、たまたまネットで見掛けた時、気付いたから。

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