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狙われた女  作者: ツヨシ
3/6


「今度は肉じゃがを、ちょっと作りすぎてしまいました」

佐竹さんが言う。

ちょっとと言う量ではなかったが、私は快く受け取った。

こんなに癒される笑顔の人は、そうそういない。

二十歳くらい年上だと言うのに。

私の父親でもおかしくない年齢だと言うのに。

「いつもありがとうございます」

「いえいえ、作りすぎたんで、こちらこそ助かります。鍋は明日取りに来ますから」

「はい、わかりました。いつでもいらしてくださいね」

「それでは、おやすみなさい」

「おやすみなさい」

満面の笑みのまま、佐竹さんは帰って行った。

その肉じゃがもとても美味しかった。

佐竹さんは料理がかなり上手だ。

その時思った。

佐竹さんはなにか困ったことはないかと言っていた。

私は会社の帰りに感じる視線について話をしてみようかと思った。

が、やめた。

私は視線を感じただけだ。

それを理由に第三者に相談するのは難しいだろう。

それに佐竹さんに余計な心配をかけたくなかった。

巻き込みたくなかった。

私は視線のことは黙っていることにした。


この日も視線を感じた。

気のせいなんかではない。

誰かが私を見ているのだ。

それもなんとなくではない。

その感情はわからないが、強い意志を持って凝視しているのだ。

振り返るとやはりいない。

どれだけ隠れるのが上手いのか。

「そこにいるんでしょ。わかっているわよ。出てきなさい」

本当に出てきたらどうしようと思いながら、私は言った。

しかし誰も姿を現さなかった。


佐竹さんが鍋を取りに来た。

「ありがとうございます。何度も。肉じゃが美味しかったですよ」

「いや喜んでもらえると、作った甲斐があります」

「いや本当に美味しかったです。料理、お上手ですね」

「まあ、一人暮らしが長いものですから」

私は思った。

佐竹さんはなぜ一人暮らしなのだろうか。

奥さんや子供がいてもおかしくない年齢だが。

気になったが、もちろんそんなことは聞けない。

「では、おやすみなさい」

「おやすみなさい」


今日も視線を感じる。

いったいどうしようか。

イライラする。

同時に気味が悪い。

嫌悪感すら覚える。

色々まじり、最終的に残った感情は怒りだった。

私は振り返って言った。

「いい加減にしなさい。しつこいわよ」

何の反応もない。ただ静かだ。

私はとりあえずマンションに帰った。

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