第四十四回:職場の同僚と
皆さま、またもやのお久しぶりでございます。
一年余りのブランクを作ってしまいまして、大変申し訳ありませんでした。
実際の季節も春になりまして。また、私の創作意欲も復帰しまして。少しずつ動きだす気になりました。
作中の悠介も洗礼を意識しはじめているようです。「試しに教会に行ってみた」略して「タメキョー」。第四十四回からの再開です。週一回は投稿したいものですね。それでは、またおたのしみあれ。
さて、平日の悠介はというと。「両津興業」での職場生活である。
七月に入り、四月の入社以来三ヶ月になった。それ以来精勤して、なおかつ周囲の期待以上の働きをしているということで、上司や先輩からの信頼も得始めているところだ。
この頃の悠介には職場にも親しい関係の友人ができていた。同級生たちとあまり積極的に交わらなかった小中学生時代、そして「劣等生」に落ちぶれたことに加え万引き事件もあって周りから相手にされなかった高校時代。それからのニート生活。要は教会とつながるまでは友人というものをろくに持ったことがなかった悠介ではあるが。
彼の名前は十日町颯。年齢は悠介より二歳年下の二十一歳だが、高校卒業後すぐに入社したため悠介より二年先輩だ。部署も同じなのだが、十日町はフルタイムの従業員なのでパートの悠介よりも立場的にもやはり上とは云える。しかし、「二歳年下」だが「二年先輩」ということで、それを相殺するかたちで、悠介と十日町のふたりはいわゆる「タメ」の友人同士としてやりとりするようになった。
十日町は悠介とはやや対照的でどちらかといえば外向的な性格であり、友人もそこそこ多い。だが、職場で年齢も近い存在といえば、悠介ぐらいであることから、ふたりは自然に親しくなっていった。
七月半ばの「海の日」を含む三連休を前にした、ある日の昼休みの会話。十日町が悠介にお誘いをする。
「相川君さ、今週末って三連休じゃん。で、日曜日にみんなでバーベキューやるんだけどさ、一緒にどうよ? 女の子も何人か来るよ」
「ああ、日曜日ね。ちょっと日曜日はいつも都合があってね……」
「えっ? というかさ、相川君っていつも休みの日何してんの? 引きこもりサンデーじゃないよな?」
それに対して悠介は、特に台詞の後半を、十日町の顔色を窺いつつおそるおそるながら口にする。
「うん……。土曜日は家で過ごしてるけど、日曜日はね、実は……教会に通ってるんだ」
「え? マジ? 初めて知ったかも。てか、相川君ってシューキョーやってるんだ……」
悠介に対してちょっと引くような素振りを見せた十日町。確かに今の日本社会で「宗教をやっている」というのはちょっと引かれる要素なのかもしれない。
しかし、既に仲良しとはいえ、「シューキョーやってるんだ」という十日町の言葉に少し不快感を覚え、同時に友を離れさせないかという若干の不安を悠介が襲う。実はつい先月、宗教団体を名乗るカルト集団が詐欺事件を起こしたことが、ニュースの話題となったところだったこともあり、だ。
悠介は「やっぱりその反応か……」と思いつつも、慎重に十日町に対しての言葉を選ぶ。
「いや、俺の行ってるところはね。ちゃんとしたキリスト教会だよ。みんな優しいしさ、牧師さんもすごくいい人」
「キリスト教かぁ。そういや、ツイッターで話題になってる『こひつじちゃん』とか思い出したわ」
「そう、そこだよ。俺、その『こひつじちゃん』を運営してる『世田谷小羊キリスト教会』に行ってるんだよ」
「え? マジか! やっぱり相川君もさ、ツイッターで見て気になって行ったのか?」
「うん、そうなんだよね……」
「まぁ、そのへんが相川君らしいといえば……、そうだよなぁ……」
ちょっと苦笑するような表情を見せる十日町。続けて。
「なんか、俺もさ、相川君の教会気になるなぁ。いつかさ、ちょっと遊びに行ってもいいか?」
「もちろん、もちろん。八月には教会でもバーベキューあるし、十月にはバザーもあるよ」
「あとさ、教会に女の子っている? 相川君、まさかさ、出合い求めて行ったとかじゃねーよな?」
そこで真っ先に真理奈さんの顔を思い浮かべた悠介。しかし、真理奈さんは既婚である。
「うん、まぁ……。俺らと同世代の人いるけど結婚してるし。教会学校には女の子いるけどさ……。」
「ちょ、人妻に、教会学校の女の子って……。俺らにとっては犯罪で草だわー」
要は「笑える」という意味のあるネットスラング「草」を敢えて口頭に出しながら、十日町は続ける。
「まぁ、相川君が出合い目当てじゃないなら、安心かもな」
そこでサンドラのことも思い出したが、敢えて口にはしなかった。しかし、一見さんを除けば、悠介に年の近い二十代前半ぐらいの成人女性と云えば……、真理奈さん、そしてサンドラぐらいだろうか。青年会も男性メンバーが多いし、悠介くらいの若い人は教会に来ることがあってもたいてい「一見さん」なものだから。
「あのさ、やたら出合いとか言ってるけどさ、十日町君は彼女いるの?」
「あぁ、はいはい。ボクはあいにく今んとこはフリーでしゅ。彼女いない歴三ヶ月でしゅ。あぁ、彼女欲ちいなぁー」
ちょっと道化したような口調の十日町。一方の悠介は「彼女いない歴」は年齢イコールの「二十三年」。それでも、恋愛に興味が全くない、といえばもちろん嘘にはなるのだが……。ダメ元覚悟で真理奈さんにラブレターを用意した過去を思い出してしまった。
そんなうちに、その日の昼の休み時間も終わりが迫っていくのだった。
クリスマスを祝い、正月は神社に初詣、そして死ぬときは仏式に葬られる。それでも、シューキョーにはちょっと抵抗がある。それが日本人の平均なのかもしれません。そして「シューキョー」をやっている人を偏見の目で見てしまいがちなのも。今後、悠介の「(職場における)年下の先輩」である十日町君ですが「バーベキュー」を通して教会につながるのでしょうか。




