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第四十一回:おしごと

 悠介の「大活躍」のおかげだろうか。大成功に終わった教会バザー。

 それが過ぎて、十一月が来て悠介の教会初訪問から丸一年が経った。さらに十二月になり、悠介にとって教会で迎える人生二度目のクリスマスがやってきた。更にそれも過ぎ、また新しい年を迎える。


 今年は悠介が二十三歳になる年であり、同年代の人の多くが大学を卒業する年だ。大学に進学せず、四年近い歳月をいわゆる「ニート」として無為に過ごしてしまった悠介だが、年明けの頃からは、ハローワークに通うようになった。つまりは「働く意志」を持ち始めたということで。それだけでも「ニート」を半分卒業した、とも言えよう。


 やがて、しばらくハローワークに通ううちに、悠介はアルバイトの採用ではあったが、職を見つけることに成功した。

 週五日、朝十時から夕方五時まで。うち休憩時間を除く毎日実働六時間でのパートタイムでの、データ入力をメインとする事務の仕事である。新年度を前に求人が増えるタイミングであったのも手伝って、であろうか。これも「縁」あってこそだと言えよう。


 四月の初めから悠介は平日は毎日、仕事に通い始めている。悠介が採用された会社「両津(りょうつ)興業」は事務作業などの請負を事業内容のひとつとしている。その中で、悠介の勤務先となった「世田谷事業所」は悠介の自宅から自転車で約五分、徒歩でも十五分という近場である。これなら通勤では苦労することもあるまい。

 それでも、四年前に工場での軽作業を一週間でクビになった経験を持つ悠介にとって、仕事の継続については周りからも、そしてなにより本人自身の心配のタネであった。しかし、二十二歳にして、ほぼ社会経験ゼロのはずの悠介に対し、そのことを踏まえて仕事を丁寧に教えてくれる上司や先輩らのおかげで、悠介はだんだんと、一応は「社会人」となった自分に対して自信をつけていくことになった。

 そして、土日祝日は会社カレンダーでお休みなので、日曜日には今までどおり教会への礼拝に出席することができる。


 悠介がわりと容易く、職を見つけられて、なおかつ、わりと早く職場に溶け込むことができたのも、政府主導による「ニート就労応援事業」と銘打った政策のおかげでもあろうか。

 悠介が高校を卒業する前から、学業にも就いていない無業の若者に対して「ニート」と揶揄されることは多かったが、「ニート」の人口が増えていったことに関しても、若者の怠惰のせいだけだとは言い切れない、様々な社会的背景があったと言われるようになった。その中には長引く経済停滞の影響のみならず、かつての政策が失敗に終わってしまったことをも含むという専門家や批評家の指摘を受け、国の将来を担う「若い人材のやる気」を引き出すことをも名目に、政府は「ニート就労応援事業」に着手することにしたようだ。

 この「ニート就労応援事業」。悠介自身には直接関与はしていないが、その中には、ハローワークなどに対して若年の無業者や失業者に対してカウンセリングを行い、優先的に求人を紹介することを指導することや、彼らを雇用した企業や団体などに対しても補助金などを出し、その就業の継続ができる環境作りを指導することなどといった働きかけや制度の創設などがあるという。

 悠介もハローワークでは、希望職種調査や職業適性検査を受けたりしてきた。悠介自身の趣味はというとパソコンぐらいであったのだが、別にプログラミングができたり、パソコンを自作したり修理できたりするほど詳しいわけではない。それでも「パソコンを使った仕事をしたい」という悠介のかねてよりの「希望」はなんとか叶ったとはいえる。


 ただ、悠介にとっては慣れない仕事の疲れもあり、四月のうちは復活祭の礼拝も含め、日曜日の礼拝をお休みすることが多かった。

 そんなうちに五月の大型連休、ゴールデンウィークの時期を迎えた。今年もまたこの連休中に、悠介の姉夫婦である長岡亮平・玲奈夫妻が悠介の実家・東京の相川家を訪れたのであった。

 そのときには、昨年のゴールデンウィークと同じく、恵介お気に入りの料亭で、悠介とその両親、そして姉夫婦の五人での食事会が行われた。今回は「悠介の就職祝」という名目も兼ねての、である。


「悠介君、希望の仕事に就くことができたんだってね。本当におめでとう。というわけで悠介君の将来を祝福して、乾杯しましょうか」

 義兄の亮平は悠介に祝福の言葉をかけ、乾杯の音頭を取る。同席している中では最年少にあたる悠介ももう二十二歳、アルコールを飲んでもいい年齢ではある。普段は滅多にアルコール類は飲まないのだが、今日は祝宴の席ということで悠介のコップにもビールを注がされて、五人で乾杯。

「いやいや、義兄さんが励ましてくれたからこそですよぉー」

 実は今年は正月にも彼らは相川家を訪れたのであった。結婚して初めて迎える正月であるということで。そのときに亮平は悠介に対して、就職に関する相談などにのってあげたのだった。

「いやはや、亮平君のおかげですよ。私らとしても悠介が仕事を始めてから元気を取り戻しつつあって、ひとまず安心しとりますわ」

「そうですよね、ほんと亮平さんさまさま。悠介が無職のあいだずっと私も心配で心配でたまらなかったのですけど」

 続いて恵介と優子も亮平に感謝の意を示した。

 そんな和気藹々とした雰囲気の中、五人での会食は続いていく。

 さて、いよいよ悠介は「ニート」を卒業して「社会への第一歩」を踏み出しました。これから先はどうなるか。仕事だけではなく、同時に信仰も持ち続けて、それを深めてほしいものですが。

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