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第三十九回:より大事なことは

 皆さま、お久しぶりです。久しぶりの新話投稿です。教会に通う習慣もすっかり着いて、いろいろと聖書の勉強にも熱心になってきた悠介ですが。その後も彼やその周りの人々のストーリーは続きます。

「悠介君、熱心に聖書を読んでいるんだね。感心したよ」

 礼拝後、解散となるやいなや、いつものように悠介の隣に座っていた見附さんがそう声を掛けてきた。

「でもさ、教会はただの『聖書を読む会』じゃない、ってことはわかるかな。俺なんかが敢えて言うことじゃないかもしれないけど」


 見附さんのその言葉にハッとする悠介。それからしばらくの間が生まれる。再び見附さんが口を開く。

「悠介君。君は洗礼を受けるつもりはあるのかな」

 悠介はまだ洗礼を受けていない身である。洗礼を受けて初めて教会員となる資格が発生することは知っているのだが。

「えぇ、まぁ……」

「いつになるかはわからないけど、洗礼を受けたいという気持ちはあるということかな」

「そうです、ね……」

 苦し紛れながらに答える悠介。

「そのへんは急がなくていいよ。俺たちも今の悠介君にはまだまだ洗礼は早すぎると思っているから」

 ここで胎内改め魚沼真理奈さんも話に加わる。

「でも、悠介さんも洗礼を受けられるときは必ず来ますよ」

「そ、そうですよね……」

 悠介の返答に対して、再び見附さんが。

「そのためには聖書とかのことをもっともっと知ってほしいけど、それよりも大事なことがある」

「それは確かな信仰を持つことですよね? 僕はイエスさまを信じますっていう」

「さっすが。ちゃんとそこら辺は解っているじゃないか」


「悠介君。君は神さまを信仰するかな?」

 今の台詞は柏崎さんからだ。海外生活の長い柏崎さんだけあって、「ガイジンの決まり文句」のような質問をしてきた。いつぞやに勤務先だった工場でサンドラから受けたような……。

「もちろん、信仰したいと思っていますが……」

「そこには、何か障害になるものでもあるのかな?」

 見附さんが再び尋ねてきた。

「うちは父親も母親もクリスチャンじゃないですから……」

 悠介の言葉に対して、真理奈さんと柏崎さん、見附さんが順に反応する。

「悠介さんのお父さん、お母さんですね。私たちも以前お会いしましたが、とてもご理解のある方だと私は思いました」

「やっぱり、ご両親に了解を取ってからのほうがいいけどね」

「まぁ、俺は悠介君は洗礼にはまだまだだと思うけど。柏崎君と真理奈ちゃんはどう思う?」

 見附さんは、ふたりに質問を投げた。

「僕としては、悠介君も近いうちに洗礼を受けられると思いますけどね」

「私も、悠介さんにできるだけ早く洗礼を受けていただきたいと思います」

「うん、三人とも意見はそれぞれちょっとだけ違うね。まぁ、俺も悠介君も、悠介君なら、いずれは必ず、とは思っているけどね」

 二人プラス自分の意見を総括して、見附さんが言った。続けてまた悠介の方へ質問を投げる。

「で、君自身は自分の洗礼についてどう思うかな?」

「僕も、ちょっとまだまだ、かなと……思います」

「でも、いずれは洗礼を受けたいんだよね?」

「はい……、もちろんです」


 しばらくの間が生まれたのち、見附さんが再び。

「もちろん、聖書を勉強することも大事なことだ。だから、今の悠介君の聖書の勉強への熱心さには俺も尊敬する。でもね、勉強だけじゃないんだよ。聖書のみことばは勉強のためにあるのではない。みことばを実践して、自分の愛や信仰を行動で示すことのほうが大事だと思う」

「愛や信仰を行動で示す、ですか……」

「その辺は悠介君が自分のできることから始めてほしいと俺は思う。来週は礼拝後に教会バザーがあるんだけど、そのお手伝いとかしてもらえないかな」

 世田谷小羊キリスト教会では毎年十月に信徒の提供品などを商品として出すバザーを開催している。この近隣住民にも商品を提供してくれたり、バザーを見に来る人も多い。それが今年も来週の日曜日に開催されるのだ。今年は悠介が来てからとしては、初めての開催となる。

 見附さん、そして柏崎さんが続いて言う。

「バザーのときは三階の研修室ふた部屋を販売会場として使うんだよ。その会場設営とか商品の陳列とかを手伝ってほしい」

「いいですね。そうだ、悠介君なら売上の集計とかも得意なんじゃないかな?」

「そうだねぇ。あれも結構面倒くさいからな」

 売上の集計は毎年見附さんがしているらしいが、自分の教師としての仕事などもあるのでヘルプが必要だといつも言っているという。逆にいえば、毎年それなり、またはそれ以上の集客や売上があるのだろう。

 ここは悠介としても快い返事をしたいもの。

「はい、喜んでお手伝いさせていただきたく思います」

「いいねぇ、ありがとう。助かるわぁ。表計算ソフトとか使えるかな?」

「そうですね、自分のパソコンにも古いやつだけど入っていますので。小遣い帳代わりにシート作ったりしています」

「あははっ、やっぱり悠介君って几帳面なんだなぁ」

 というわけで、来週のバザーでは悠介もスタッフとして参加することになった。

「もちろん、会場設営とか商品の陳列もできます」

「うん、ひとまずやる気を見せてくれてありがとう。そして来週はよろしく」

 見附さんが悠介にお礼を言った。それに対し悠介も。

「はい、こちらこそよろしくお願いいたします」


 そこで改めて周りを見回す悠介。

 見附さん、柏崎さん、真理奈さん、そして話しているあいだに側に来ていたサンドラ。みな、笑顔を見せている。礼拝堂の中にはほかの教会員や求道者もいるのだが、てんでに忙しそうではあったり、自分たちの話に盛り上がっていたりで。青年会のメンバー以外は特にこちらの話は聞いてはいなかったようだけれど。


 ここが自分の「居場所」ってやつなのかな、と。

 悠介は、今まで「居場所」というものに出合ったことはなかったかもしれないが、ようやくそのように感じたのであった。

 ネタ切れというわけでもありませんが、永らく新話投稿をしておりませんでした。今日は実にふた月以上ぶりの投稿です。これからも不定期ながらも完結に向けて投稿を続けていきますので、よろしくお願い致します。さて、今回は聖書の勉強よりも大事なことを悠介は教えられます。そして、「居場所」というものを見い出した悠介を描いています。信仰を持つ際には独り善がりになってはいけないと思います。

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