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第三十七回:家族旅行

 そんな日々の中、悠介の姉・玲奈の結婚式が九月の連休の中日に執り行われた。

 今は家族と離れて住んでいる玲奈のいる県、その山間部にあるホテルのチャペルを借り切って、である。つまりはキリスト教式の婚礼ということである。

 だからといって玲奈はクリスチャンであるわけではないらしい。世間一般の多くと同じく「一日クリスチャン」というか、単に形式的に利用しているだけであろう。


 結婚式に同席するために、普段着ないような礼服を買い与えられた悠介。式前日の朝、両親と共に家を出て東京駅に向かい、そこから新幹線に乗り玲奈の元へと向かう。今回は観光も兼ねてということで、二泊三日の予定でホテルも予約してあるのだ。相川家にとっては久々の、悠介が「引きこもり」になってしまってからとしては初めてかもしれない「家族旅行」ということでもある。

 そして、結婚披露宴。悠介にとってはご馳走が食べられるからまぁいいや、とその程度の認識である。ヴァージン・ロードを新郎・亮平と玲奈が共に歩んでいき「愛の誓い」なぞをする。そこで涙ぐんでいる恵介と優子。そのときのために派遣されていた牧師からの「簡単な説教」もあった。悠介にとっては聖書でも学んできて、修牧師からも聞いたことのあるような既に「おなじみ」のようなお話である。


 あとの時間、自然豊かなその県の観光名所をいくつか巡ってきた。レンタカーを借りて恵介の運転で、海へやら、山へやら、いろいろな方向へ。温泉にも入ってきた。悠介が同居していながらも部屋にこもりっきりだし、恵介も普段は仕事がそれなりに忙しく、家族で行動を共にするということも少ない相川家。今回の旅では、交わす言葉数こそそう多くなかったが、久しぶりの親子三人水入らずらしき時間をもった。


 さて、悠介にとっては、このたび嫁に行き、名字も長岡に変わった、姉・玲奈に対して、そう思い入れがあるわけではない。四つ年の離れた姉とは物心ついたときからそう仲良くしてきた記憶もない。それでもやはり幼い頃にはときどき喧嘩になどはなった。しかし、幼い身としては四つは大きな年の差である。だから、悠介のほうがよく泣かされてきた。そういったことがあるたびに「玲奈は女の子なのだから」と両親に諭され、玲奈のほうがかばわれる立場になってしまう。しかし「年下」という立場なのに「男の子」だからという理由で悪者扱いされるのか。泣かされたのはむしろこっちなのに。そのたびに悠介は納得がいかなかったものだ。


 連休の最終日の夜に東京に帰ってきた相川家の三人。明日からまた日常である。玲奈たちにとっては新婚ホヤホヤの熱い日々なんだろうけれども。

 そういえば、今年は六月に同い年であるはずの真理奈さんが結婚された。まだ自分たちは子供だと思っていた悠介だが、いよいよ「結婚適齢期」というものにも差し掛かりつつあるのだろうかと思う。まだ二十二歳、もう二十二歳。世間から「遅れ」をとりつつあると思うと焦りの気持ちが生じてしまう。大学に進んでいたとしても、もう四年生だ。就職活動に関しても、そろそろ内定先を決めて内定式に出席しなければいけない頃である。それでも「今はまだ」いいのかもしれない。だが、このまま三十、四十となっていくとなれば……。なんだか、惨憺たる未来以外、想像できない。親だって自分より先にいなくなるもの。結婚はできないとしても、ある程度「自立」というものをしなくては、生きていけない。

 東京に帰ってきた日の夜はそういうことも思い、なんだかモヤモヤしていた悠介。夜更けになってもなかなか眠れなかった。そして、翌日は昼近くまでぐっすりと。というわけで、生活のリズムはいまだ崩れがちのままである。それでも日曜日の朝にだけは、いつも八時に目覚ましを掛けていて、実際にその時間にちゃんと目が覚めるのだ。なのに平日はだらだらしているという。そこまでもが世間様とはなんだか逆になっているような。

 悠介の姉・玲奈も無事嫁いでいったということで。ここで家族水入らずの旅行です。

 形式だけでもキリスト教式に行われる婚礼の場において悠介はどのように感じていたのでしょうかね。一応は「求道者」であるという立場もあるわけですから。

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