表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/50

第三十四回:母の日

 巷での大型連休が明けた次の日曜日、悠介は久しぶりに日曜礼拝へと顔を出した。

 姉カップルと両親の顔合わせも無事終わったところで、真理奈さんの結婚も来月に迫っていることに気づいた悠介。それを直前に控え、ようやく真理奈さんに対する「恋心」的な何かが収束したのを感じたのであった。そういうわけで教会にまた行ってみようという気になったのである。



「やぁ、相川君。久々だね。どうしてたのか心配だったよ」

 受付を済ませ、振り返ると見附さんが居た。さらに一言。

「あ、今日は、真理奈ちゃん、保育園の行事とかで教会はお休みだからね」

 それを聞いて安堵の気持ちと残念だったかなという気持ちが入り交じったなんとも言えない気持ちになる悠介であった。


 牧師夫妻らからも「ようこそ。お久しぶりですね」「よくいらっしゃいました。歓迎します」となどという言葉を受けた。

 さて、今日は五月の第二日曜日ということで、巷でもよく話題になる「母の日」である。

 また、悠介が初めて教会を訪れたのは、昨年の十一月の第二日曜日だったので、あれからちょうど半年が経過したことにもなる。

 今日の司会当番は半年前に悠介が初めて教会を訪れた日と同じで三条さんだった。

「皆さん、おはようございます。さて、今日は『母の日』ですね。私も高校生、中学生、小学生と、三兄弟の『母』ですが、息子らに振り回される日々を送っております」

 フムフムと話を聞く悠介。そして、周りをさっと見渡す。子持ちらしき方の多くは三条さんの言葉に同意しているようだ。

「さて、この『母の日』というイベントはクリスチャンによって作られ広められたということをご存知でしょうか。そして、そのことは意外でしたでしょうか。それだけに教会の一年の行事の中でもクリスマスやイースターに次いで大切なものとされているのです。『母の日』については、一九〇五年の五月にアメリカのフィラデルフィアで母を亡くした少女が『生きている間に母親に感謝の気持ちを伝える機会を設けよう』と働きかけたのが始まりとされているようです。日本ではまだ明治時代でしょうか。その少女がクリスチャンだったのですが、その運動は彼女の居た教会を通してアメリカ全土に広がり、一九一四年にはアメリカの公式の記念日とされたそうです。それから更に時代が進み太平洋戦争終戦後になると、次第に日本でも普及していき、今日に至るわけです」

 そこで自分の母親である優子の顔を思い浮かべる悠介。今日も午後から青年会があるということで弁当を作ってもらったのだが、今日ぐらいは母親をねぎらってあげるべきなのだろうか、と感じる。せめて、花屋さんに立ち寄り、少ない小遣いからカーネーションの一本でも買って帰るべきか。


 やがて、いつも通り讃美の時間と主の祈りに続いて、牧師先生のメッセージが始まる。

「先程もご紹介があったように、本日は『母の日』ですね。私は一昨年の冬に母を亡くしまして、本日で人生で三度目の実母亡き『母の日』となります。妻の母親ももうずいぶん高齢でして、今は特別養護老人ホームにおります。時々、私達が訪れにいくと満面の笑みで迎えてくれるものですが、最近になってそのときにもご機嫌斜めなことも出始めまして。先週などは私の顔を見るなりキョトンとして、妻に『ヒロちゃん、この男の人は私の旦那さんかね』と言うなどということがありました……。というわけで、今、ご自分のお母さんがお元気である皆さん。孝行のチャンスは今のうちですよ。孝行したいときには親は無しなどとも言いますけれど。そうです、三条さんからもご紹介があったように、母の日の制定のきっかけとなった、まさに生きている間こそ、ですね。……エー、もちろんお父さんのことも大事にしてあげてください……。来月六月には父の日というのがありますが……」


 母親、そして父親という存在。今年二十二歳にして、いまだ親に完全に依存している悠介にとっては、尚更に大切にしてあげるべきところの存在であろう。今の自分はハッキリ言って親不孝者なのだから、と悠介は感じていた。

 「母の日」という概念。毎年のようにこれもまた商業利用されている面を感じます。クリスチャンが提唱した記念日だったということはご存知でしたでしょうか。「父の日」に関しても同様ですが、「母の日」の後付けのような歴史をたどってきたようです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ