第三十三回:大型連休
牧師先生との最初の個人面談が済んでからも、まだまだモヤモヤしたままの悠介。
働いていない、いわゆるニートであること。そして、真理奈さんへの破れてしまったはずの恋心のこと。それを自らで歪ませたものとしてしまったこと。いろいろなことが頭を駆けめぐる。自分を責める気持ちだとか、将来への不安だとかは尽きない。
教会にまた足を運んで、まるで沼に浸かっているかのような今の自分自身を癒やしてもらうべきなのだろうか。そう、修牧師いわく教会は癒やしの場所だということなのだから……。
それから日をそう重ねないうちに春の大型連休、いわゆるゴールデンウィークへと突入する。
今年のゴールデンウィーク。そのときには予定通り、悠介の姉・玲奈が東京の実家に、その彼氏こと婚約者なる男性を連れて挨拶に来た。
玲奈の婚約者、名前は長岡亮平というのだが、当初は娘を嫁に出さなければならないことで渋い顔を見せていた恵介も、亮平といくつか言を交わすうちにいつの間にかすっかり彼のことを気に入ってしまったらしい。
彼らが東京に来た初日の夕食会を父・恵介のお気に入りの料亭において、恵介と優子はもちろん、悠介までもが同席した上で玲奈と亮平のカップルと伴にする。
結局は、恵介も優子も、亮平に対して「娘の伴侶としてちょうどふさわしい、好青年」というイメージを抱いたようだ。既に結婚式の日取りも決定していると。盛夏が過ぎた、ちょうど玲奈の誕生月でもある今年の九月に結婚式を予定しているという。
「亮平君。どうかうちの娘をよろしくお願いしますよ」
初めて顔を合わせたその日のうちに、そのような言葉を恵介は亮平に、普段優子や悠介が見ることのないような笑みを浮かべつつ、亮平に掛けたのだった。
もちろん悠介にとっては、近いうちにも亮平は義理の「兄」という存在になる。亮平は二十六歳の玲奈より四歳上の三十歳ちょうど。「こひつじちゃん」の「中の人」であり「教会でのお兄さん」である見附さんや柏崎さんと同年代ということになる。そして、身の丈百八十センチは優に超えているであろう、背の高い男性だ。
悠介はその亮平から、自分の新しい「弟」として、すっかり気に入られたようだ。悠介から見ても物腰柔らかで穏やかそうな亮平のことを「兄」として頼れる存在的に思えた。いっぽう玲奈はというと、相変わらず悠介を睨つけたりするようなことがあったものの。
ちなみに、亮平は「就労移行支援施設」の職員を務めているとのことである。まだ三十歳にしては難関の資格を保有しているため、「若きホープ」として職場のリーダー的な存在であるとかなんとか。また、悠介が無業であることは、玲奈伝てであろうか、すでに亮平は知っていたようだ。そのことも受けて、悠介は亮平から「君にも、というか君にだからこそ、できる仕事は必ずあるよ。だから心配要らない。将来に希望を持ってね」と言ってもらった。
恵介が亮平に娘・玲奈との結婚をすぐに承諾したのは、亮平がその職業的な立場上からも「義理の兄弟」となるはずである悠介の社会復帰、もとい社会進出への助けとなってくれるかもしれない、という目論見があってこそなのかもしれない。
父親・恵介も姉・玲奈の結婚を認めてくれて、めでたしめでたし、といったところではないでしょうか。
亮平さんは悠介にとっては、よいお兄さんとなりそうですね。




