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第二十九回:もういちど、教会へ

 パソコンを開く悠介。そして久々のツイッターへのログイン。「失恋」以来ツイッターへも「低浮上」の状態が続いていた。要はのぞいたり書き込んだりすることもめっきり減ってきたということだ。いっときは三千人以上いたはずのフォロワー、今は三千の大台を切ってしまっている。そういうことで「こひつじちゃん」の投稿もあまり見なくなっていた。

 久々のログインに対して「おかえり」と応えるかのように真っ先に飛び込んできたのは「こひつじちゃん」の投稿。

「弊教会のWebページがリニューアルされました。弊教会員でWebデザイナーの鴨目ジョナさんが主導となってがんばってくれました」

 鴨目ジョナさん。そんな人居たっけ。やはりハンドルネームなのだろうか。そう思いつつリンクをたどり、教会のWebページを開く。


 前はシンプルな作りだった教会のWebページ。新しい規格に対応し、みちがえるようになっていた。コンテンツも以前より追加されたものが多くある。

 なんとなく教会学校のページを開く。この教会では「こどもチャーチ」という愛称でも呼ばれている。クリスマス会などの写真が載せられている。どの子も楽しそうだ。俺も子供の頃から教会を知っていればなぁと思う悠介。「教育ママ」の優子の影響だろうか、子供時代にはほぼ勉強しかして来なかった気がするなぁと振り返る。ほかの同級生らと友達として遊んだりすることもとくになく、だ。

 そこで先生役として隅に写っていた真理奈さんの姿を見つけ、なぜか急に恥じらいを感じ、即ベージを移動する。

 次は牧師紹介のページへ。湯沢牧師夫妻が仲睦まじくツーショットで写っている写真の下に「牧師より」ということで、メッセージが書かれている。その中で。

――現代社会は悩みがつきものです。確かに昔に比べて経済的や物質的に豊かにはなりました。それに伴い、日常生活の中で便利になったことは数多いのかもしれません。要は持ち物が多くはなりました。しかし、それでかえって「重荷」を感じている人もまた多いのではないでしょうか。聖書には「疲れた人、重荷を背負っている人はわたしのもとに来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます」というくだりがあります。私が牧師を志し、本教会を設立した、そのもっとも大きな動機はこのみことばにあります。


 それを読んだ悠介。とりあえず牧師先生に自分の悩みをきいていただこう。お手紙も受け取ったところで、向こうも心配しておられるだろう。とりあえず「生存報告」だけでも、と思う。

 悠介は携帯電話を手に取り、教会に電話を掛ける。


「はい、世田谷小羊キリスト教会です」

 数回の呼び出し音の後に、牧師の修先生の声が聞こえてきた。もはやこれも「懐かしい声」である。悠介の脳の認識では。

「あ、お久しぶりです……。相川です。相川悠介です……」

「ああ、相川君ですか。お久しぶりですね。心配していました。どうされましたか」

「すみません、しばらくのあいだ教会に顔も出さなくて……」

「いえいえ。むしろまた教会のことを思い出してくれて、どうもありがとう」

「はぁ……。こちらこそありがとうございます」

「また、いつでもいいので、また礼拝にいらっしゃい。皆さん心配していらっしゃいますよ」

 修先生のその言葉を聞いてまた青年会のメンバーを中心とする皆の顔が悠介の脳裏によみがえる。それからおそるおそるながら悠介は自分の要望を述べる。

「はい……。というか、お忙しいかもしれませんが、僕とマンツーマンで相談の時間とかってとってくださることはできますでしょうか」

「ええ、もちろん構いませんよ。日曜日の礼拝後の時間でもいいですが、僕が教会にいるときなら平日でもどうぞ」

「是非、僕のはなし、聞いていただきたくて。日にちと時間を決めておけばいいですよね」

「ええ、そうしてもらえるなら、こちらとしても助かりますね。行き違いなどにもなりませんし。いつがいいですか」

「日曜日以外の方がいいです。今はちょっと礼拝には……実はなんだか皆さんに合わせる顔がなくって……」

「合わせる顔がない……。そんなことないと思いますけどね。まぁ、相川君がそうお感じになるということは何かお悩みごとがあるのでしょうね」

「ええ、悩みごとなら……、尽きないですよ……」

「相川君はお若いですからね。若いときこそ悩むことは多いものですよ。……では、そうですね、来週の水曜日のお昼からはお時間ありますか」

「ええ、はい。来週水曜日の午後からですね。お願いします」

「では、一時ぐらいからお待ちしていますので。お昼ご飯食べてからいらっしゃい」

「はい、ありがとうございます。では、水曜日。よろしくおねがいします」

 電話を終えた悠介。めったに予定などが書かれることがない自室のカレンダー。翌週の水曜日の日付に丸をしてその欄に「十三時、教会で牧師さんと相談」とメモを入れたのだった。

 悩んだ末、「また教会につながろう」と思った悠介です。

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