第二十八回:いったい自分は
さて、もうすぐ五月の連休、いわゆるゴールデンウィークである。今年のゴールデンウィークには悠介の姉・玲奈が久々に、現在の居住地である某地方都市から東京の実家に帰省してくることになった。もう何年も盆暮れ正月にさえ帰ってこなかった玲奈。今付き合っている彼氏と結婚することが決まったから、彼氏を連れて挨拶に来たいとのことである。
それに対してあまりいい顔をしない恵介。一方の優子はもう玲奈も二十六歳の大の大人なのだから自分の人生は自分の責任でもって自分で決める権利があるのじゃないかしら、と諭す。まぁ、あまりにも変な男だったら私も反対するけど、と付け加えつつ。
それに加えて悠介の「毎週教会に行く」という「ルーチン」がまたなくなってしまったことへの心配もあり、恵介の機嫌があまり良くないという状態が続くようになった。この「ルーチン」の停止は優子にとっても心配事のひとつとなっている。
ちなみに悠介はというと、玲奈からは完全に邪険に扱われている。子供の頃はそこまで仲が悪くはなかったが、玲奈が思春期にさしかかった頃からはずっと、だ。ましてや、悠介が万引き事件を起こした頃からはそれがきっかけだろうか、そのとき既に大学進学のために地元を離れていた玲奈は、実家にさえも寄り付かなくなってしまったのだ。
悠介にとっては仲の悪いはずの姉のことであったが、姉・玲奈の婚約の件。それに関して、悠介の中で若干のモヤモヤを感じるところのものとなっている。悠介自身は、自分は一生結婚なんぞはしないであろう、いやむしろできないと思っていたのではあるが。そう、悠介の「初恋の相手」もまた婚約中なのである。もちろん悠介とは別の男性と。
悠介が前から抱えていた悩みがまた頭の中に復活してきそうになる。悠介も二十一歳、今年で二十二歳。まだまだ若いのかもしれないが、このまま無職引きこもりとして無為に時間を過ごしていくのであれば、じきに三十、四十になってしまう。そうともなれば、「人生を詰んでしまう」という状況に陥ってしまうだろう。
今のうちに「なんとか」しておかなければ。でも「なんとか」とは。具体的に何をすればいいというのか。悠介は高校卒業後に大学に進学できなかった無念さを今でも引きずっている。なんとも悔しい思いを感じるが、そのたび、俺は「万引き」とかいう「不良」みたいなことを高校時代にやらかしたもんな。そんな奴が大学だなんて、と自分自身に言い聞かせている。仮に今から大学に進めるとしても周りよりかなり歳を喰ってしまったし、そもそも高校の学習内容というものも忘却のかなたにある。要は学力というものは高校卒業時より確実に落ちているにちがいない。
だからといって働くことは……。十八歳の頃の一週間だけの工場での職場生活を思い出す。そのときから全く就労ということをしていないのだ。もちろんその前も。
いったい自分は何がしたいのだ。
悠介はそう思う。そこで教会というものの存在を思い出す。世田谷小羊キリスト教会。あそこに寄り着いた理由も、世間におけるクリスマスの在り方に疑問を感じて、などというものだった。初めて教会に行った日、あれからもうすぐ半年が経つ。逆にいえばまだ半年も経っていないくらいなのだが。教会にまた足を運びたいけれど、真理奈さんがいると思うとなんだか近づきがたい。相手は悠介の事情だとかは全く知らないにしても。
いったい自分は何がしたいのだ、という今回の悠介の葛藤ですが。これまた、私も似たようなことを抱え込んだことがありますので。




