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第二十二回:胎内さんの優しさは

 今まで毎日正午に一話ずつ公開していましたが、今回より週三回、毎週月・水・金曜日のみの更新とさせていただきます。まだ自分の原稿として完成もしていないので。ご理解よろしくお願いいたします。

 やがて、礼拝が終わる。今日は第四日曜日。午後からは青年会がある。

 例によって、コーラスの練習から始まったのだが。今まであまり外に出る習慣のなかった悠介。自分がコーラスのハーモニーを乱している気がしてしまったのもあり、立って皆に合わせようと、歌声を出している間に体調を崩してしまう。悠介は少しためらいを見せつつも、賛美歌の途中ではあったが、体調不良を訴える。

「すみません……。ちょっと体調を崩してしまったようで……。少し休憩をいただけませんか」

 コーラスに参加していた他の青年会メンバーは一斉に悠介の方を向く。その中でも胎内さんは心配そうな顔を悠介のほうに向け、悠介の側に寄ってきてくる。


「あら、まぁ、体調を崩されましたか。大変ですね……」

 少しうろたえながらも、胎内さんは落ち着いた口調でそう言った。それに対して悠介は返す。

「ちょっとコーラスの練習、お休みしててもいいですか」

「ええ、もちろんですよ。向こうの椅子に腰掛けていてくださいね。お水持ってきましょうか?」

「はい、最近教会に来て、久々にコーラスとかしてたから、慣れていないのもあって、ついていけなかったみたいなんです……」

「相川さんも私たちの青年会の大事なメンバー、大事なコーラスのメンバーなのですからね。でも決して無理はなさずにお願いしますね」


 言いたいことはあったのだけれど、悠介は胎内さんの言われたとおり、部屋の隅のソファー風の椅子に腰掛けて、休憩をとることにした。しばらくして、胎内さんは水の入ったグラスをポットと一緒に悠介の側に持ってきてくれた。それを飲んで少しクールダウンする悠介。結局、コーラスの練習の時間が終わった後も、青年会の終わる二時半までそのようにしていた。

 二時半を過ぎて解散宣言が出ると、青年会に集っていたメンバーのうちの何人かがこの部屋「第二研修室」から出て行き、帰っていく。だが、胎内さんと見附さん、そして柏崎さんは悠介のことを気に掛けて、部屋に残って悠介の側にいてくれていた。


「相川さん、体調はいかがでしょうか」

 胎内さんが気遣いの言葉を掛けてくれた。反応する悠介。

「ええ、休ませてくださったおかげでなんとか回復しました」

「おうちには自転車で帰られるんですよね? どうかお気を付けて」

「はい……、ありがとうございます」

 胎内さんの優しい気遣いに悠介はお礼を言った。悠介の人生で、まだ知り合って日も浅い、しかも同年代である女性にここまで優しい気遣いをされるなんて、いまだかつてあっただろうか。女子生徒からも避けられがちだった小中学校時代、そして男子高時代などを思い返してみる悠介であった。


「来週もお待ちしていますからね。来週からはアドベントが始まりますよ」

 胎内さんのその言葉に反応する悠介。

「アドベントって何ですか?」

「来週からいよいよ十二月でしょ。十二月といえばイエスさまのご誕生をお祝いするクリスマスだよね。その四週間前の日曜日からはアドベント、日本語では降誕節というんだけど。教会ではそういう期間に入る。まぁ、もうすぐイエスさまがお生まれになるぞ! 待ち遠しいなぁーと思いつつ過ごす期間ということで……」

 代わって、柏崎さんがご丁寧に解説してくれた。

 そう、もうすぐクリスマス。悠介がクリスマスを前にした、この十一月という時期に教会を訪れてみようと思ったきっかけ。それは本来「キリスト教」の行事であるはずの「クリスマス」に対する世間様の認識に疑問を持ったうえで、それに対するアンチテーゼ的な意味で、ではそもそもの「キリスト教」とは何かということを、実際に教会という場所に足を運んで、伺いたかったということであった。悠介は頭の中でそのことを思い出す。


 そこで、胎内さんが微笑みながら話しかけてくれる。

「相川さん、あなたはもうこの教会になくてはならない人なんですよ。クリスマス礼拝では是非一緒に賛美歌を歌いましょうね」

 この教会はなくてはならない人。そうは言われたが、悠介は思い直す。きっと、胎内さんは自分だけにではなく、誰にでも優しいのだ、と。胎内真理奈さんという「女性」に惹かれていきそうになる自分自身に対して、ある意味「戒め」を投げたのであった。すべての人を愛して下さったようなイエス・キリストに倣っているのだ、と。

 教会をはじめて訪れるとたいていは優しくしてもらえるものです。しかし、その優しさは……、と。そりゃ、いろいろ勘ぐるでしょうね。

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