幕間・山中独白
本編より時系列は戻って、ルイが魔法使いを捜して一人でテオ山をさまよっている時(本編『山中捜索』)の、とある人物視点からの語りになります。
静かな夜の山にファングの鳴き声が鳴り響いて驚いた。あたしが狙われているのかと慌てて杖を構えたけれど、そうじゃなかった。近くにファングや魔物の気配は微塵もなかったからほっと一安心したけれど、あたしじゃないのならファングに襲われている他の誰かがいるってことよね。放っておくわけにもいかないじゃない。
ただファングに狙われているその誰かが狙っているのはあたしとも限らない。念には念を入れて気配を消す魔法をかけて慎重に慎重に音を出来るだけ立てないよう、そっと騒動の方へと向かったわ。
騒動の中心はすぐに見つかった。木陰からそっと様子を窺うと一人の男の子がファングの群れに襲われていた。子って言ったけど、歳はあたしと同じくらいね。もしかしたらほんの下くらいかしら?その子を見てあたし呆れちゃった。彼、ほとんど素手に近い状態でファングの相手をしようとしているのだもの。あたしが呆れるのも無理ないわよね。むしろナイフと松明だけでよくもまぁ一頭退けたもんだわ。へぇ、と思っていると、ファングの群れのリーダーにバックから襲われてる。あいつら徒党を組んで結構やるのよね。
ピンチのようだし助勢しようかしらとしたところで、彼が杖を取り出すものだから二の足を踏んじゃった。魔法が使えるのなら、ますますあたしを追いかけて来た人の可能性が高いじゃない。
でもどうやら違ったみたい。どういうつもりで杖を出したのかわからないけれど、彼、杖を空振っているだけで魔法なんかちっとも使えない感じだったんだもの。また呆れちゃった。あの子この山へ死にに来たのかしら?まあでもこれではっきりした。彼は学園とは何の関係もないただの一般人。何故杖を持ってるのかは知らないけれど……。
とにかく、ここまで見届けた上で助けられなかったら後味悪いしいい加減に動こうかしら。せっかくだし、あの子の杖の振りに合わせて魔法の矢を一発打ち込んであげる。
──どうよナイスヒット!
ふふ、両方とも驚いてる驚いてる。彼に悟られないよう、去っていくファングを追うと更に二、三発打ち込んで、あいつらの襲撃する気力を完全に削いでやった。ここまで助けてあげる必要も義理もなかったかもだけど。ま、時々はこれくらいの人助けもしないとね。じゃないとバランス取れないものね。
一仕事終えて、遠くからこっそり彼を覗くと不思議そうに杖をぼんやりと見ていてちょっとだけおかしかった。うん、大丈夫みたい。ただ働きのお礼に、彼が完全に眠ってしまってから何かモノを持ち去ろうかとも考えたけど、可哀想だからやめてあげた。あの様子じゃろくなの持ってなさそうだしね。
さあ、あたしも戻ってもう寝ようかしら。それにしてもこの山、ファングをよく見るなあ。何頭か退治したけれど、群れの住処でもあるのかしら……。今度先生が来たら聞いてみようっと。
あーあ先生、次はいつ来れるのかなあ。




