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異世界訳アリ料理店〜食のお悩み承ります〜  作者: 地野千塩


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番外編短編・ピーマン

「店長、何作ってるんですか?」


 真美はお手伝いしている異世界キッチンにつくと、ルイスに声をかけた。ルイスはこのダイナーの店長だが、ひょんな事がきっかけで雇われる事になった。一時期は刑所に行くか、自殺するか追い詰められていた弱者老人の真美だったが、今は回復していた。


 このダイナー、異世界に繋がっている。そんなあり得ない展開を知ったとき、全部気が抜けてしまった。ルイスが異世界人というのは秘密で、一部の人しか知らない事実だった。そんな秘密を知ってしまうと、なんだかワクワクする。未だに信じられない気持ちもあったが、もう刑務所に行くことや自殺する事は全く考えていなかった。異世界キッチンへお手伝いに行くのが楽しみだった。


 ルイスは店の厨房でピーマンを切っていた。


「ピーマンの肉詰めでも作ってみようと思ってさ」

「へえ」

「うちの国には無いんだが、日本の料理本見てたら作りたくなった。ま、今日のは試作」


 ルイスはそう言ってピーマンの種もワタも全部捨てようとしていた。


「ちょっと待って。ピーマンのワタも種も食べられるよ」


 真美は厨房に入り、そう指摘した。


「なんでも栄養素が豊富らしいわ」

「へえ、はじめて知ったよ」

「ええ。まあピーマンの肉詰めだったら捨ててもいいけど、炒め物なんかはワタも種も捨てなくてもいいかもね」

「いい情報聞いたよ!」


 ルイスは心底嬉しそうに笑っていた。こんなピーマンのワタや種に栄養があるなんて、どうでもいい情報なのに。こんなに喜んでくれるとは思わなかった。


「よし、じゃあ、真美さん。下準備の人参やじゃがいも切ろう」

「オッケーです!」


 真美もルイスの笑顔につられて、口元がほころんでいた。刑務所や自殺を企んでいた時の事が嘘のように生き生きと野菜を刻む。トントンとリズムカルな音が響いていた。

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