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異世界訳アリ料理店〜食のお悩み承ります〜  作者: 地野千塩


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異世界料理人のその後

 ルイス・クールソンは、別世界・日本とザーレナ国を行き来しながら料理人を続けていた。ミルク粥は日本人に受けないだろうと危惧していたが、味噌や醤油などの隠し味で味を整えて販売したところ、想像以上の人気を得ていた。他にもティータイムやお弁当販売など新しい事もやっていた。イギリス料理やタイ料理など日本意外の料理も研究し、メニューに活かすのも楽しかった。


 店をお手伝いしてくれる真美にはこの事実を伝えていた。最初は異世界なんて信じないと頑なだったが、実際の一緒に行き来したら納得してくれた。死ぬまで追い詰められていた真美だったが、「いざとなったら異世界で暮らせばいいか」と楽天的になっていた。確かに視野は広くなったようで何よりだった。今はもう死ぬ様子はなく、ルイスは心底ホッとしていた。


 幼馴染のメイは女優の夢をすっきりと諦めて、田舎に帰っていた。実家の酪農業を手伝って傍ら、この異世界キッチンもたまにやってきてくれた。女優をあきらめたメイだったが、日本のYouTubeには興味深々で、ここで演技や朗読を披露するのも楽しそうだと希望を持っていた。日本のライトノベルにも興味があるらしく、特に悪役令嬢もののアニメにハマっていた。言語がわからなくてもストーリー展開が分かりやすくて楽しいらしい。


 ルイスも新しいメニューなどを開発したり、異世界キッチンでの営業も未来に希望を持っていた。オーナーの長谷川からは売り上げノルマは厳しいが、何とか毎月こなしている。日本語もだいぶ上手くなってきた。書ける漢字も増えてきて嬉しい。お客様に別世界から隠す事はヒヤヒヤするが、今のところ全くバレていないのでホッとしていた。


 さて、今日も食に悩めるお客様がやってくる。


「娘が好き嫌い激しくて、食べてくれないんです。工夫してパンケーキに野菜なんかを練り込んでいたりするけど……」

「毎日の献立作りが苦痛で」

「他のママは可愛いキャラ弁作れるのに私は不器用」

「彼女が作るご飯が不味い。美味しいフリするの疲れたよ」

「寮母さんから苦手な食べ物よそられて苦痛。もしかしたら寮母さんに嫌われてるかもしれない」

「少食で、全部食べられない。学校給食で無理矢理食べさせられたのがトラウマ」

「どうしても動物が可哀想で肉が食べられない。玉子も魚も食べるのに罪悪感がある」

「食品添加物が怖い。毎日気をつけていてストレス」

「トイレでしかご飯が食べられない」

「ラノベ作家だが美味しそうな料理がかけない。正直、食べ物の話なんて書きたく無い」


 今日も様々なお悩みが寄せられる。正直、その全てのお悩みを解決できる自信はないが、ルイスの料理を食べると、心が軽くなっているようだった。


 日本人は相変わらずマスクをし続け、目が死んでいるものが多い。少しでもそこから生き返る為のお手伝いが出来れば、それでいい。


 ルイスは多くは望まない。金や名誉もさほど興味はない。ただ、自分のご飯を食べて少しでも笑顔になってくれれば、それで良い。それがルイスの一番の幸せだった。

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