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異世界訳アリ料理店〜食のお悩み承ります〜  作者: 地野千塩


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最後のスイーツ(3)

 別世界転移。


 どうやらメイはこういう状態になったらしい。ルイスの料理屋、異世界キッチンのボックス席で全ての事情を説明された。ちなみに日本からは、この状況を異世界転移というらしい。ファンタジー小説などの題材になっているという。


 ルイスは一年半前の地震でザーレなナ国と日本を行き来できるようになってしまったらしい。長谷川という起業家を助けた事をきっかけに日本でもダイナーを開いたという事だった。メニューは、ザーレナ国の料理を日本風にアレンジしたものが多い。正直なところ日本人には受けないが、ルイスの人柄で常連客も増えているそう。田舎のルイスの店もあるので営業時間は不定期だが、最近はお茶の時間や弁当なども提供して仕事を楽しんでいるらしい。さっきはメイが泣きついたせいでルイスの着ている白シャツは鼻水がついていた。それを見ていると、気になってくるが、ルイスはニコニコ笑って一つも文句を言わなかった。


 仕事について話すルイスの目は、キラキラと輝いていた。金色の髪の毛や体格の良い体つきなどは昔のままだったが、今はかなり楽しそうだった。メイの現状とは全く違う。少し恥ずかしくなってきたが、メイも事情を話す。劇団での挫折、身分格差、劇団長や脚本家の仕打ち、突然の地震についても話す。


「そっか。メイも大変だったね」


 心の底から労わってくれた声だった。メイは再び泣きそうになった。


「ところで帰れる?」

「大丈夫、ちょっと厨房の方へ行ってみようぜ」


 ルイスは子供のような表情を見せた。子供の頃と全く変わらない。幼馴染といるせいで、昔に帰ってしまった気分にもなる。


「あれ?ここ田舎のルイスの家?」


 厨房に二人で向かい、そこにある裏口の扉を開けるとなぜか田舎のルイスの店に繋がっていた。田舎の店の方は、ルイスの母や妹が開店準備をしていた。突然現れたメイに二人ともびっくりしていたが、事情を話すと「普通に帰れるよ!」と。


 メイはヘナヘナとその場に崩れ落ちた。もう帰れない事を覚悟していたので、今の状況は気が抜けてしまった。


「そうだ、メイ。どうせ日本にいるなら、飯でも食いに行かないか?」


 気が抜けているメイにルイスはそんな提案をしてきた。


「え? ご飯? 美味しいの?」

「うーん、たぶん美味しいと思う! 気晴らしにもなると思うし、どう?」」


 半信半疑だったが、お腹は空いていた。同時に心に余裕も出てきた。日本という別世界を観光するのも悪くない?


 それに劇団のことなども考えたくなかった。観光でもすれば、気がまぎれるかも?


「いいかも。ルイス、付き合ってくれる?」

「オッケー!」


 こうしてメイとルイスは世界、日本でご飯を食べに行くことになった。


 メイの今着ているワンピースや麦わら帽子は日本では目立つかもしれない。ルイスの妹からジーンズ、シャツ、サングラス、小さなカバン、サンダルも貸してくれた。また、日本がどういう場所かも軽く説明してくれた。ザーナレ国よりかなり栄えた国らしい。絵が動く「テレビ」や「スマートフォン」というのをルイスに説明を受けたが、近未来すぎてついていけない。ただ「インターネット」という技術があれば誰でも女優になれるじゃないか。「YouTube」というものには、夢しか感じられない。ワクワクしてきた。

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