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異世界訳アリ料理店〜食のお悩み承ります〜  作者: 地野千塩


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ミルク粥(2)

 由乃は、近所にある飲食店を調べ続けていた。こんな事やって意味があるんだろうかと思い始めていたが、異世界キッチンというダイナーが気になった。


 異世界というとアニメや漫画で描かれるファンタジー世界ではないか。なぜそんな名前のダイナーがあるのだろうか。あまりアニメや漫画には詳しくは無いが、異世界というとご飯が不味いイメージがあった。そこで日本人出身の主人公が、美味しい和食を作ったりして無双するのがテンプレだった。気軽で面白いので時々アニメは見ていたが、なぜ現代日本で異世界?


 もしかして店主が異世界出身という事もあるのだろうか。いや、そんなファンタジーみたいな事はありえないだろう。


 ネットで口コミを検索すると、一人の外国人の青年が店を経営しているらしい。写真を見ると金髪の外国人だった。ヨーロッパやアメリカの方の人だろうが、ずっと日本人として二十五年も生きてきた由乃は区別賀つかなかった。体格もよく白シャツにエプロン姿も板についていたが、 夫の方がかっこいいと思ってしまった。夫に関しては食の趣味は合わないが、その他の部分は相性は良かった。やっぱり自分は夫の事賀好きなんじゃないかと思いつつ、口コミを検索する。


 異世界キッチンは、出てくるメニューが独自らしい。石のように硬いパン、酸っぱいスープ、油っこい鍋などメニューだけ見ているととてもそそられない。写真を見ると意外とおいしそうだが、なぜこんな料理を作っているのだろうか。確かに良い異世界アニメに出てきたような料理っぽい雰囲気を感じるが。


 口コミによると「異世界来たみたいで面白いw」とか「店主賀イケメン!」とあり、どうやら料理以外の面で受けているようだった。それだったら納得する。料理は味だけではない。食べている場所や状況によって左右される。実際、由乃は夫との食事が苦痛だった。食べている料理自体の味は不味くはないが、食の趣味と合わない家族と一緒にいるだけでだいぶ不味くなってしまった。夫にはチクチク文句を言われることも少なくないし。


 この店の店主は客と仲良くしたいタイプのようだ。今の日本では珍しい。常連客からのくちでは、店主は食に関する悩みをのってくれるらしい。会食恐怖症の客は店主に相談していたら、だんだんと治ってきたという口コミも書き込まれていた。


 料理屋というよりカウンセラーじゃない。数々の口コミを見ながら由乃はそう言った印象を持ってしまった。


 もしかしたら夫と食の趣味が合わない事も相談できるだろうか。友達には相談している事だが、解決策は今のところ思いつかない。この店主に相談するのもアリなような気がしていた。


 さっそく店の営業時間などを調べるが、不定期営業らしかった。朝にモーニングセット、深夜にお酒と料理を提供しているようだった。口コミを調べるとハッキリとした営業時間は書いていないようだ。店のホームページやSNSも無いようでミステリアスだ。


 本当に異世界人が経営していたりして?


 そんなミステリアスな店に、由乃はちょっとワクワクしていた。もちろん、本当に異世界人が経営している店とは思って居ないが、そう想像するとワクワクしてきた。料理の味はこの際どうでもいいか。この店に行ってみよう。


 深夜に行くのはハードルが高いので朝に行ってみるか。ちょうど夫も忙しくてしばらく家に帰って来ない。


 異世界キッチンに行ってみよう。


 そんな事を考えていたら、夫と食の趣味が合わない事などすっかり忘れていた。


 飲食店は味だけでは無いのかもしれない。こんな風にワクワクした気持ちを提供する役割もあるのかもしれない。


 由乃はワクワクした気分を抱えながら、異世界キッチンへ向かっていた。


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