0話 使い捨ての冒険者
「いやぁ、お前ほんとすごいな!! マジで俺のステータスカンストしちゃったよ!」
[ゴレラ=ワイドソン【C-】 Lv.30(max)]
一人の男は彼の肩に腕を回して話し、傲慢に笑う。
木造の壁、床、テーブル。あちらこちらから聞こえてくる冒険者たちの他愛ない会話。少しの暑苦しさと汗臭さが漂う空間――――冒険者ギルド内の酒場である。
満面の笑みを浮かべる男に対し、彼は苦笑していた。
「まあこのご時世、ランクがものを言うからな。レベルを上げないとやっていけないし」
彼は目を逸らしながらボソボソと言う。彼の視線の先では、テーブルの上で樽の器に注がれたエールが、飲み干してくれと言わんばかりに泡を上げていた。
ランクとは、冒険者の格付けにおいて基準となる値で、それは才能のようなものである。E-ランク~SSS+ランクまでの24通りで分けてあり、それは産まれたその時に決まる。ランクによって、レベルやステータスの上限も定まるのである。
「まったくだぜ! 俺ぁ、C-だが、これでAランカーとも渡り合ってやる! 一攫千金じゃぁぁっ!!」
男は叫び、エールをガッチリと握り、グビッとのど越しの音を立てて飲み干す。そして、その真っ赤になった顔で彼に言った。
「明日はクエストでガッポガッポだ!!」
「お、おう‥‥‥!」
* * * * *
――一週間後。
「お前、もう要らない」
男は冷めた表情で彼にパーティー脱退を押し付けた。理由は簡単。役に立たないからである。
パーティーから追放された彼の名は、クロウ=レアライズ。御年十八歳の、スキル《強化素材生成》を持つ冒険者である。
[クロウ=レアライズ【E-】 Lv.5(max)]