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きみの事が好きなんだ〜何故か気になるの〜

作者: ゆずり葉

きみの事が好きなんだ の続編になります。

ロイド視点から、フェリシア視点中心になってます。


短編予定でしたが、まだ続きそうです。

連載にどう切り替えるのか分からないので、このまま書き続けてしまいます。

もし、続きを待っててくれた方がいたら、ありがとうございます。

まだまだ初心者の私ですが、よろしくお願いします。

(あ、まただ)

私の目に、最近よく見えるものがある。

それは本当にふとした瞬間で。


背伸びをした後だったり、顔をあげた瞬間だったり。

そんな時、必ずと言っていいほど当たり前に、あの人の事が目に入る。

(ついこの前までは、かかわり合いになりたくにかったのに…)



人というのは不思議なものだ。

フェリシアはそう思う。

奥さまの用事で、二人で出掛けた馬車での帰り、今までのわだかまりがなくなったからか、とても普通に話をすることが出来た。近所の犬の話とか、兄弟のこと、好きな食べ物の話など、大いに盛り上がった。


「レクの実のケーキを母がつくると、弟と妹と取り合いになるんですよ。」

そう言いながら、目元を緩めてロイドは笑った。

「俺も好きだけど、やっぱり譲ってしまうから、いつもあまり食べられないんですよね」

食べられなくて残念なはずなのに、どこか嬉しそうな顔をして微笑むロイド。

(ロイド様って、弟妹思いの優しい人なのね)

ほぅとため息をつくと、ふと言葉がこぼれた。

「羨ましいなぁ」

「え?何がです?」

キョトンとした顔をするロイド。

「私、一人っ子だから。」

「フェリシアさんって一人っ子なんですか?」

「ええ。だから、兄弟で何かするのっていいなぁって憧れちゃいます。」

「そうですか?沢山いるのも大変ですよ」

肩をすくめてロイドは答えた。

「弟は何かと俺と同じ事をやりたがるし、妹は甘え上手でついつい手を貸してしまって。気付くと使われてるんですよ?」

おどけて困ってみせたロイドだが、やっぱり弟妹の話をする顔は嬉しそうだ。

「会ってみたいなぁ。」

言葉がこぼれる。

「きっと可愛いんでしょうねぇ。」

両頬を手で抑え、目を輝かせながらフェリシアは続けた。

「ねぇ?果実と木の実のケーキなら、どちらが好きかしら?」

なんともなしに出た言葉に、ロイドは顔を赤らめてびっくりした。

「…そ、それってつまり、その、あの」

しどろもどろになるロイドに気付かずに、フェリシアは一人話続ける。

「手作りお菓子をあげたら、弟さん達喜んでくれるかしら?」

キラキラした目で微笑みかけるフェリシアを見ながら、ロイドはがっくりとうなだれた。

「…あ、ああ、そういうことですか…ですよねぇ…」

前髪をくしゃりと掴み、苦笑いをする。

(俺のためにケーキを、なんて。つい期待してしまった)

自身の軽はずみな考えに、思わずため息をつく。

「で?果実か木の実なら、どちらが好きですか?」

「…えっと。弟も妹も木の実の方が好きみたいです。クルミやナッツの蜂蜜漬けにしたものとか好きですから。」

「なら、今度ご実家に帰る日に焼いて渡しますね?」

「…ありがとうございます。」

複雑な思いを抱えながらも、ロイドは微笑んだ。

(よくばりすぎるな、俺)

心の中でロイドは自分を戒めた。

(こうして普通に話せるだけでも、ありえないくらい幸せなんだから)

せつない気持ちをグッと握りしめ、ロイドは微笑んだ。

もちろんフェリシアはそんなこと気付く訳もなく···



たまに思い出すのだ。あの時はとても楽しかった、と。

ちょっと前までは考えられなかった事だ。

こんなふうに話せるなんて。

(明日はお休みだから、町にケーキの材料を買いに行かなきゃ)

そんな事を考えると、自然に鼻歌が出てきた。

(何作ろうかな?ナッツもいいけど、クルミの蜂蜜漬けの方が喜んでもらえるかしら?)

ワクワクして仕方がない。

自分に弟妹がいたら、こんな風に可愛がってあげるのになぁ。

顔も知らないけれど、喜んでくれる姿が目に浮かぶようだ。

思わず顔が緩んでしまう。

持っている洗濯物はとても重いはずなのに、いつもより軽く感じる。

こんなに待ち遠しいお休みは久しぶりだった。


さて。

楽しみはすぐにやってきた。

今朝はいつもより目が早く覚めてしまった。

ベットから起き上がると、寝間着のまま朝食を用意する。軽めの朝食に、朝の支度もさっと終わらせた。

深いグリーンのジャケットと茶色のスカート、小花のついた少し小さめな帽子は最近のフェリシアのお気に入りだ。

久しぶりのおしゃれはやはり心弾むものがある。

「あら?お出かけ?」

声の方に向くと、廊下には上着を肩からかけた寝巻姿のリアンがいた。

「おはよ、リアン。ちょっとね、用があって。街に行ってくるわ。」

手を振りながら笑顔で答える。

「そう。気をつけてね。」

眠たそうにあくびをしながら、リアンは自分の部屋へと戻っていった。

フェリシアは足取りも軽く、玄関に続く階段を駆け下りて行った。



街は、2週間後に迫った春祭りに向けて活気に溢れていた。異国の衣装に身を包んだ人や、出店の店舗を組み立てている人もいる。

子供達が無邪気に笑いながら走っていくのを見ると、自分の子供の頃を思い出して嬉しくなった。

用のある雑貨店は表通りから一本奥に入った所にあった。ここは表通りの店よりこじんまりとしてはいるが、質がよく安いのでよく買いに来ている。


「こんにちは。」カランと音をたててドアを開けると、カウンターにいた恰幅のよい店主が、目を糸のように細めて笑いかけた。

「いらっしゃい。今日はいつもより早いね。」

「そうなの。何だか目が冴えちゃって。」

「おや、そうかい。花祭りが近いから、みんな 浮かれてるもんなぁ。」

店主は開いていた帳簿を閉じて、手を叩く。

「で、今日は何をお探しで?」

フェリシアは指を折りながら、うーんと考える。

「小麦粉とクルミの蜂蜜漬けでしょ?あと、膨らまし粉とナッツも欲しいわ。」

「ケーキでも焼くのかい?」

「さすがオーカルさん、話が早いわ。」

「ちょっと待ってな。」

そういうと店主は店の奥へ引っ込んだ。


持ってきたカゴをカウンターに乗せると、フェリシアは何ともなしに店の中を見回した。

いつも思う事だが、店の中がキチンと整理されていて、品物がキラキラと輝いて見える。

(やっぱりこの店は気持ちがいい)

そう感じながら視線を右にやると、ふとルクの実が目にはいった。大きな瓶に入っていた実は、どうやらブランデーに漬けてあるようだ。

(ロイドさん、ルクの実のケーキが好きって言ってたな。)

ついこの前の会話を思い出したフェリシアは、じっと瓶を見つめた。

「ルクの実も持ってくかい?」

いつの間にか戻って来た店主は、カウンターの上にドサッと持ってきた物を並べるとそう聞いた。

「えっ…」

戸惑うフェリシアをよそに店主は小瓶を取り出すと、大きな瓶からルクの実を1すくいして小瓶に入れた。

「これはサービスだ。持ってきな。」

他の物と一緒にかごに詰めてくれた。

「わ、悪いわ。」

フェリシアは焦ってそう言ったが、店主は手を左右に降りながら「気にするな」と言った。

「ご贔屓にしてくれてる常連なんだから、たまにはサービスしないとな。」

ウインクを一つすると、ニカッとわらった。

「…じゃあ、ありがたく頂くわね。お代はいくらかしら?」

「今日のは全部で500ルロだよ。」

フェリシアはポケットから財布を出すと硬貨を差し出した。

「ありがと、オーカルさん。」

両手でカゴを持ち上げると思っていたより重い。

「またおいで。次はドライハーブを仕入れておくよ。」

「そしたらパンを焼かなくちゃね。」

嬉しそうにフェリシアは答えた。

左腕にカゴを通すと右手で手を振り、ドアを開けて店を出た。


「得しちゃった。」

こぼれた言葉に顔がにやける。

重いはずのカゴを軽く感じるくらいには、気持ちが弾んでいた。だからだろうか、人に気づかずにぶつかってしまった。

「…いった…」

相手はガッチリした体格の男だったようで、ぶつかった拍子に道に倒れ込んでしまった。

咄嗟に手をついたので荷物は無事だったが、手のひらからは血が出ていた。

「気をつけろや!」男は怒鳴りつけてきた。

相手の物言いにカチンときたフェリシアは、すっくと立ち上がると、人差し指を突き出した。

「ちょっと!ぶつかったのはそっちも同じでしょ!

あんたこそ気をつけなさいよ!」

「んだとっ!」

怒った男が手を振り上げた。

(ぶたれるっ!!)

咄嗟に目を瞑ったフェリシアの腰をグイッと引かれる感覚があった。

(あれっ?)

いつまでも襲ってこない痛みを疑問に思ったフェリシアは、自分が暖かい何かに包まれているのを感じた。

(えっ?)

びっくりして目を開けると、誰かの胸に抱かれているようだった。目線を上げると、そこには良く知った顔があった。

「ロイドさん?」

ロイドは真剣な顔で男を睨んでいた。

「女性を殴ろうとするなんて、男のやることじゃないですよ。」

ロイドは男の手首をぐっと掴みながら静かに言った。

「このっ!」

男も力を入れて抵抗しようともがいていたが、どうやら敵わないと悟ったらしい。

ロイドが力を抜いて開放すると、男は手を振り払いながら、苛立たしげに睨むと去っていった。


息が、思わずホッと出てしまった。

自分が思うよりも、どうやら緊張していたらしい。

なのに次の瞬間、凄い力で両腕を捕まれてしまった。

「何考えてるんですか!!」

「…えっ」

「相手は男性ですよ!喧嘩売ってどうするんです!」

「痛っ…」

「あなたは!あなたはか弱い女性なんですよ!あなたに何かあったら俺は…」

「…痛いわ。ロイドさん、離して。」

ハッとしたロイドは静かに腕を降ろした。

自分がした事に気付いたらしいロイドは顔を赤らめた。手の置き場に困ったのか、自分の首を撫で擦る。

「すみません、つい、カッとなってしまって。」

別にロイドが悪い訳じゃないのに、謝られると何だか申し訳なくなってしまう。

「…私もついカッとなっちゃって。」

「あ、いや。気を付けてもらえればそれで。あなたが無事ならそれでいいんです。」

そう言って静かに微笑んだ。

(…優しい人)

じんわり暖かくなる心が、ザワザワして落ち着かない。

「本当に助かりました。それじゃ。」

そう言って誤魔化すように歩きだそうと一歩足を踏み出した。

「痛っ…」

途端にしゃがみこんでしまった。

どうやらぶつかった時に足を挫いたらしい。

さっきまで怒りで気付かなかったが、ズキズキと痛みを感じる。

「どうしました?」

ロイドが跪いて顔を覗く。

「足、ひねったみたい。気付かなかったわ。」

足首を擦りながら眉をよせた。

(どうしよう…)

困っていると、いきなり浮遊感に襲われた。

「きゃっ!」

思わず声が出た。

気付けば荷物のように、ロイドの肩に担がれている。

「僕がお送りします!」

(えっ!この状態で?)

親切心からなのだろうが、これじゃあ傍から見れば誘拐犯だ。

「ロイドさん!気持ちは嬉しいですけど、これは違います。何か違います!」

焦りながらフェリシアは必死に言い募った。

「ちゃんと送ります、けど?俺じゃ嫌とかですか??」

困惑した表情のロイド、これは分かってないと思ったフェリシアは尚も言い募った。

「嫌じゃないです!」

「嫌じゃないですけど!どうせ送って頂くなら、普通にして下さい。これじゃあ…私が荷物みたいです!」

やっと通じてくれたらしい。

あっ!と小さな声を出して、足が痛くないようにそっとフェリシアを降ろした。

「重ね重ねすみません…俺、気付かなくて。」

「…いえ。気持ちは伝わってますから。」

ビクッと体を揺らすロイド。

「…俺の気持ち、伝わってるんですか?」

恐る恐る視線を合わせてきたロイドは、顔がさらに赤くなっていた。

「?…はい。怪我した私を心配してくれてるんですよね?助けてもらった上に親切にして頂いて。感謝してます。」

目をパチパチさせながら、真っ赤な顔のロイドを見た。

はぁーと深いため息をついて、ロイドはしゃかみこんだ。

何やらブツブツ言っている。

「…あ、焦った〜。気付かれたかと思った。そんなに筒抜けなのかと思ったら恥ずかしくて。いや、確かにそうなんだけど、そうじゃないっていか、それだけじゃないっていうか…」

不安になって声をかける。

「あの?ロイドさん??」

もう一度深いため息をついて、ヨシッ!と気合を入れたロイドはしゃがんだまま背を向けた。

「乗ってください。」

「え?」

「おんぶします。」

「はぁ。」

「よく弟や妹をおんぶしてるので、慣れてますから!ど、どうぞ。」

そう言ってくるりと後ろを振り返ってパッと笑った。

(いや、そうじゃなくて)

思わず心の中で呟いたが、一瞬の間を不安だと勘違いしたロイドがさらに言う。

「今まで誰も落とした事ありませんから。安心して下さい。」

(だから、そうじゃなくて。)

こういう時って、お姫様抱っこじゃないの?

よく読む小説はそうだ。

しかも騎士がお姫様を、優しく格好良く颯爽とやるやつだ。

(…でも、まぁ。)

向けられた背中にクスッと笑いが出る。

(これはこれで。…いっか。)

「じゃあ、お願いします。」

そっとロイドの肩に手を置いた。

「失礼します。」

ロイドはフェリシアを軽々と持ち上げた。

「危ないので、ちゃんと捕まって下さいね。」

(ちゃんと?)

フェリシアなりに安全を考えて、首に手を回して抱きついた。お父さんにおんぶされた時を思い出しながら…。

途端にビクッとロイドは体を強張らせた。

「どうしました?」

首絞めちゃったかしら?とフェリシアは心配になった。

「…いえ。何でも。そう、何でもないです。」

耳まで真っ赤になったロイドは、顔を隠すようにして下を向きながら呟いた。

そして誤魔化すように、歩き出した。

相変わらず耳まで真っ赤なまま。

それを見て、何だかフェリシアは可笑しくなった。

(なんて、なんて!)

こみ上がる気持ちが止まらない。

(なんて可愛い人なの!)

こみ上がる気持ちのまま、ぎゅと抱きしめた。

勿論、恥ずかしがってると勘違いして。


…いや、勘違いではないのだけれど。

恥ずかしいのは恥ずかしいのだが。

ロイドは自分の煩悩と闘っていただけなのだ。

背中に当たる柔らかな胸の存在に。

なんなら背中だけじゃなく、スカートごしのムッチリした太ももの感触にも。

自分の血が沸騰するのを止められそうになかった。

(何、自分の首絞めてんだ、俺!)

他の方法があった事に今更気付いても後の祭り。

帰りの道はまだまだある。

自分の乗ってきた馬が勝手に戻ってきてくれないかと、厩につないだ馬に無茶ぶりしつつ、出来得る限りの早足で、ズンズンと進んで行くのだった。

人が人を好きになるのって素敵な事ですよね。

その過程をしっかり書けたらと思っています。

気持ちが募っていくのを表現出来るよう、頑張ります。

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