はち
どうするも何も……。
やっぱり今のは間違ってた。
私が先生を好きになる筈がない。
「先生私が間違ってた。私、絶対先生に恋なんかしないもの。というか男に興味ないし」
「恋に絶対は無いが……。その根拠は?」
どこから取り出したか分からない煙草を唇に挟みライターで点ける。
ここ吸ってもいいんかい。
私はやっぱり聞かれてしまったと思いながらため息をついた。
「私が腐女子だから」
「腐女子?なんだそれ」
ま、知らなくて当然か。
とぼけた顔をする笹原に私は面倒臭くなりながらも説明。
「男同士が意識しあって恋するようなのに興味を抱いてる女子の事です。他の人は違うかもしれませんが、私はそれにしか興味が無いんで今は自分が付き合うとか考えられないんです。……気持ち悪いでしょ、先生」
だから言いたくなかったのに。
だから隠してんのに。
それなのに先生はこの数週間て見た事もなかった優しい顔をして笑った。
「気持ち悪くなんかないね。てか新崎自分で言ったじゃん。今はって。じゃあこの先どうなるか分かんない。俺だって頭のイカレた変態呼ばわりされてんだぜ?だったら腐女子とロリコン同士いい関係を築けそうな気がする訳よ」
ありえない。
こんな考え方。
笹原の短い焦げ茶色の髪が私のすぐ目の前にあった。
「好きだよ、まじで。俺と付き合わね?」
「先生……」
私はまだまだ未熟で何も分かってなかったんだ。
こんなに広い心を持っている人がいるだなんて―……。
と、ブラウスの中の上の方で奴の手が不規則にがさごそ動いているのを私は見逃さなかった。
「……先生。今の嘘ですよね?全部嘘っぱちですよね。言っておきますが私も中々手強いですよ。私は先生の冗談、全て見抜いていきますから。覚悟しといて下さいね?」
「ハハハ。ばれた?さぁ、どこからどこまでが嘘で本気か、新崎分かる?」
絶対に、騙されない。
この変態を絶対見透かしてやる。
騙されたフリしてでも本気では騙されないんだから!
「嘘うそ。好きスキ」
「嘘か本当かどっちなんですかぁっ!」
私は恋に落ちない腐女子です。