9.僕の新しい決意
本日2話更新1話目。
冒険者ギルドの図書室にて。
シャロンを解放できない理由を調べたら、ペットの好感度が最大だと解放できないことがわかった。
つまりシャロンは僕のことが超大好きになっていた。
そんな気持ちを僕に知られてしまったため、シャロンは羞恥心を爆発させて床の上でじたばた暴れていた。
少し勢いが弱まってきたので、ようやく僕は慰めの言葉をかけた。
「なんかごめんね、シャロン」
「もういいです……もう、私はどうしようもないですっ。『ドラゴニアの王女として国を取り戻さなくては!』と頭ではわかっているのに、心がもう『ノイスさまと離れたくない!』って叫んでいるのですっ。どうしたらいいんでしょう――あぁ」
シャロンは床に座り込んで、顔を手で覆ってしまった。
机の上ではランが首をうねうねと揺らしていた。
「きゅーいー」
「ランが頑張る、ですって? あなたが成人するまでに世界は暗黒竜の支配下になってしまいますわっ」
「しかも一生好感度が最大のままだと、リリースできないってことだよね」
「そうですわ。もうおしまいですわっ」
――僕が負ければ好感度下がるっぽいけど、わざと負けたって意味ないだろうし。
あいにく、僕は最強中の最強で、僕より強い人はいない。
僕は腕組みして考え込んだ。
「シャロンはドラゴニアに戻りたい?」
「もちろんです。悪いドラゴンたちを倒して、国を取り戻したい……ああ、でも、テイムされた状態では王となる正統性が認められません」
「シャロンは僕とどうしたい?」
「も、もちろん、ずっと一緒に、いたいですっ! でも、一方的に好きになってしまって、ノイスさまは私のこと、あんまり好きじゃなさそうで……あぁ」
「だから最初の頃、口調がころころ変わったんだよね。僕にどう接したら好かれるかわからなくて」
「当然ですっ! ドラゴンの男性とのお付き合いはわかりますが、人間の男性とのお付き合いなんて、どうしたらいいかっ」
「僕はもう誰ともかかわらずに一生一人で過ごしていこうと思ってたんだ」
「え?」
「でも、新しい自分を手に入れたら、もっと自由に生きてもいいのかなって」
「といいますと?」
僕はもう決心しかけていた。
――ひっそりと余生を過ごそうと思っていた。
でも、少しは目立ってもいいのかもしれない。特にテイマーとしてなら。
また僕は、誰かを好きになってはいけないと思っていた。
けれど僕に最大の好意を寄せる少女が困っている。
僕の力があれば助けてあげられる以上、助けてあげたっていいじゃないか。
だって誰かの人生を奪うというマイナスでしかなかった自分の力が、誰かを助けるというプラスに初めて使えるんだから。
そう思ったとき、僕は自分の本心に気付いた。
――ああ、そうか。そういうことか。
僕は【暗殺者】という自分のスキルが、つい調子に乗って力を使う自分が、あんまり好きじゃなかったんだ。
だからテイマーになって力を使わずに、ひっそりと余生を過ごしたかったんだ。
でもひょっとしたら……これからは自分を少しは好きになれるのかもしれない。
困ってる人を助けたりして。しかもシャロンはこんな僕に好意を寄せてくれた。
たったら、僕のやるべきことは……。
床に女の子座りして顔を覆うシャロンに近づくと、僕はそっと抱き寄せた。
はっと顔を上げるシャロン。間近で見る顔はとても整っていて、大きな二重の瞳は睫毛が長かった。
「ありがとう、シャロン。僕も君のこと嫌いじゃないよ。こんなに好意を向けられたのも人生で初めてだ。君を助けたいと思ってる。これは自分のためでもある。僕の力は奪うだけじゃなく、誰かを救えるのか試したい……だから一緒にいよう。一緒にドラゴニアを取り戻そう」
「あぁ――ノイスさまっ。……ですが、テイム状態はもう解けません。王族には戻れないのです」
「だったら、僕が全部テイムしちゃえばいい」
「えっ!?」「きゅい!?」
「僕がドラゴニアにいるすべてのドラゴンをテイムしちゃえば、誰もシャロンに歯向かわなくなるよ」
僕は白い歯を見せてニヤリと笑った。
僕の言葉にシャロンは青い瞳をまん丸に見開いた。
しだいに口の端を美しく上げて、くすくすと笑い始める。
そして、僕にぎゅっと抱き着いてきた。柔らかな胸が押し付けられる。
「ああっ! なんておかたでしょう! すごいですわ! ノイスさま! 私はとっても嬉しいです!」
「喜んでくれて嬉しいよ。まあそれまではできるだけ目立たないようにしないとね」
「はいっ、ノイスさま」
「――じゃあ、まずは身分証だ。さっさとダンジョンに五回潜って正規の身分証を手に入れよう」
「はいっ! ノイスさま!」
シャロンは今までで一番元気よく返事した。
そんな彼女の手を取って立たせる。
青いドレスを着た華奢で美しい少女。目の端に涙を浮かべて微笑んでいる。
ふと思う――こんなにかわいい人を好きになっていい資格はあるのか。奪ってばっかりだった僕が。
彼女を完璧に助けることができた時に初めて、僕は誰かを好きになっていいのかもしれない――。
そんなことを考えながらシャロンを見ていると、細い首を小さく傾げた。
「どうされました?」
「あ、ごめん。行こう」
そして僕たちは本を片づけると図書室を出てダンジョンに向かった。
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次話更新は夜ぐらいに。




