74.ランの想いと義務ハーレム(第二章エピローグ)
僕とシャロンは本の中の家にいた。
玄関でランの名を口にしたら、真っ白な空間に繋がったのだった。
僕は驚きながらつぶやく。
「こ、ここは……」
シャロンも隣で絶句している。
ふとその白一色の中に、きらきらと金色に光る物体に気が付いた。
「ん……あれは?」
「ラン!?」
シャロンが青いドレスを揺らして駆け出した。
何かを察知したのか、形の良い眉を美しく寄せて。
僕も慌てて後を追う。
すると、積み木遊びをしていたランが、笑顔で立ち上がった。
白いワンピースの裾を揺らして駆けてくる。
「ノイス! シャロンお姉ちゃん!」
「「しゃべったぁ~!?」」
僕とシャロンが驚いていると、ランが金髪をなびかせて駆け寄ってきた。
シャロンのお腹に飛びついて抱き着く。
「お姉ちゃぁぁぁんっ!」
「この子は、ラン、なの?」
「た、たぶん、そうです……」
僕の問いかけに、シャロンは戸惑いながら答えた。
小さな妹をしっかりと抱きしめつつ。
するとランがシャロンに抱き着きながらも、僕に頭を差し出した。
「ん? 撫でて欲しいのか?」
「うん、撫でて撫でてっ」
手を伸ばしてランの頭を撫でる。柔らかく温かい金髪が、指先に心地よい。
するとランは、つうっと頬に一筋の涙を流しながら笑った。
「やった……これで好感度100%になったぁ……っ!」
「好感度!?」
「これでもう捨てられないっ。ずっと一緒なの!」
ランが手を伸ばして僕にも抱き着いてくる。
僕はその言葉に、はっとした。
――そうか。
ランは一緒になってからずっと、ご飯を欲しがった。撫でて欲しがった。褒めて欲しがった。
ペットの好感度を上げるための行為。
シャロンが最初から好感度最大だったから気付かなかった。
ランは普通にテイムしただけだったんだ。
だから解放を唱えたら解除できてしまう。
でもランにとって僕は保護者でもある。
ううん、確か卵のランを持って逃げる途中、シャロンの手の中で孵ったと言っていた。
ランにとっては僕が父、シャロンが母代わりだったのかもしれない。
でも捨てられる可能性があった。
だから健気に頑張って好感度を上げようとしていたんだ。
だって一度もわがまま言わなかったもの、ランは。
異様なまでにいい子過ぎた理由が、捨てられたくなかったからだなんて。
その切ない思いに目頭が熱くなる。
僕は金髪を撫でつつ謝った。
「ごめん。ずっと不安だったんだね。解放したりしないのに。……でも確かにシャロンばかり見ててランに目をかけてやれなかったかも。ごめんね」
ランが首を振る。金髪がわしゃわしゃ揺れた。
「ううん、お姉ちゃん美人だから、わかる!」
「まあ、ランったら……私も自分のことで精いっぱいだったかもしれません。最初の時だってノイスさまに預けて、離れようとしました。あなたのことを想えば一緒にいるべきでしたのに……ごめんなさい、ラン」
「ううん。もう100%になった! ずっと一緒!」
ランは涙を散らして満面の笑みを作った。
――そうか。最初の時をラン視点で見れば、たった一人の肉親から捨てられて、知らない男に渡されそうになった。
どれほど不安だっただろう。
僕とシャロンはもう一度ランを抱きしめた。
強く強く抱きしめた。
ランは嬉しそうに、うんうんと何度も頷く。
そしてランの身体がしだいに半透明になってきた。
もうこうして会う時間はないのだと思われた。
きっとここの場所はランの想いが見せた幻影だろう。
いや、ランの心の中に直接つながったのかもしれない。
まだ言葉をしゃべれないランが伝えたかった想い。
真っ白な部屋の中、ランが遠ざかっていく。
いや、僕とシャロンが扉の方へ引き寄せられている。
「またね」
ランが笑顔で背伸びをするように、大きく手を振った。
そして扉が閉まった。
扉は金色だが光ってはいない。
僕はシャロンを見てから、金色の扉を開けた。
すると子供部屋に繋がった。
部屋の中で積み木遊びをするランがいる。
僕らを見上げて首を傾げた。
「きゅい?」
「ラン、いい子だ」
「ええ、本当にありがとう」
僕とシャロンはランの傍に座って抱きしめた。
頭を撫でると目を細めて喜ぶ。
「きゅーいーっ」
「この本の中の家が便利なのも、ランが役に立って褒められようとして、無意識のうちにこうなったんだね」
「きゅいっ」
「まあ、そうだったのですか!?」
「たぶん、そう。ランは本当に頑張ってくれてたんだ。ありがとう」
もう一度抱き締めた。
腕の中で可愛く鳴く。
「きゅいっ」
「よし、じゃあ外に出よう」
「きゅい!」
ランが上に手を伸ばす。
そして先に出ると上から手を降ろしてきた。
その手を掴んで引き上げられる。続いてシャロンが出た。
外は魔界の侯爵の砦。
執務机に頬杖をついて、公爵が呆れ顔で見ている。
「わけがわからんな。各地に繋がる扉までできるとは」
「いえ、もうわかりました」
「なに!?」
公爵は赤い目をむいて言葉を促す。
僕は傍にいるランの頭を撫でつつ、晴れやかな笑顔で言った。
「少しでも役に立って褒められたいという想いと、家族が欲しかったランの気持ちが、無意識に反映されたのだと思います」
「ふんっ。まあ、マジックバッグのヒントぐらいにはなった。ここからは我輩独自のアプローチで作り上げてやろうではないか、フハハハハッ!」
「頑張ってください。ではまた、公爵」「ごきげんよう、公爵さま」「きゅい!」
僕たちは挨拶をすると、本を持って公爵の砦を出た。
ランを真ん中に挟んで3人で手を繋ぎつつ。
◇ ◇ ◇
ある日のドラゴニアの夜。
僕とシャロンは巨大なベッドの端で愛し合っていた。
青いドレスを半脱ぎにして乱れるシャロン。
「あぁッ――ノイスさま!」
「好きだよ、シャロン」
僕は彼女を抱きしめつつ、さらに愛し合う。
ひときわ甲高い声をシャロンが上げた瞬間、バンッと激しい音を立てて壁に新しくできた青い扉が開いた。
「きゃっ!?」
はだけた胸元を腕で隠すシャロン。
入ってきたのは、ニグリーナとエカテリーナだった。
「ちょっと~、ノイス! またシャロンばっかりじゃん!」
「あ、あたしたちにも、愛を分けなさいよねっ」
僕はシャロンの顔を見る。
「どうしよう……?」
「べ、別に構いませんわ」
シャロンがぷいっとすねたように顔をそむける。
するとニグリーナがにやにや笑いながら近づいてきた。
「何も取るわけじゃないんだから~。一緒にするだけっ」
「へっ! また一緒!?」
「そうよん――ん」
「んんっ」
ニグリーナがマントをはだけてスタイルのいい裸を見せつつシャロンにキスをする。
さらに唇を離すと僕にまでキスをしてきた。
「ん!」
「こら、がっつきすぎよっ! あたしも忘れないでよねっ」
エカテリーナが服を脱ぎつつ金髪を揺らして駆け寄って来る。
「今日もかぁ……」
僕はあられもない姿になった彼女たちを喜ばせていく。
女王たちの統治のおかげで、世界の三分の二は平和になった。
世界のすべてを僕が支配すればと言われるけど、義務が増えそうで躊躇している。
――奥さんはシャロンがいてくれたら、いいだけだしね。
ベッドに横たわるシャロンの両隣で、可愛い声で喘ぐ魔王とサキュバス。
しかしまたバンッと扉が開いた。
「あたくしを忘れてるのでは?」「妖精増やしたーい」「発情期きた」
エルフ女王のフランソワが銀髪をなびかせて入って来る。
すぐ後ろには虹色の羽根で羽ばたくマハスティ。
そして猫耳をぴこぴこ動かすミーニャ。
ベッドへと飛び乗って来た。
新規の3人が僕へと抱き着いてくる。
小さく柔らかな裸が僕を包んだ。
「たまにはあたくしでもいいのでは?」「わーい、卵産みたーい」「首噛んで」
「ちょっと! 待ちなさいよ!」「さすがにこれは、サキュバスいても! プレイの限界人数超えちゃうじゃん!」
いいところだったエカテリーナとニグリーナが叫んで抵抗した。
ベッドの上でキャットファイトのように入り乱れる。
騒がしくなった中、僕は手を伸ばしてシャロンだけを抱き締める。
「にぎやかだね」
「ノイスさまの大切な方たちですもの、しかたありませんわ」
「でも一番は君だから。出会ってくれてありがとう。シャロン、愛してる」
「あぁっ! 私もです、ノイスさまっ」
熱いキスを重ねて体を重ねる。
騒いでた周囲が動きを止めて「ずるいっ」とか「あたしにもしてっ」とか言われたけれど、気にしない。
できるだけみんなも愛するつもりだけど、やっぱり。
僕は世界よりも大切なシャロンを抱きしめながら、一生大切にしようと思った。
『世界を統べる王女使い《プリンセステイマー》~最強暗殺者は処刑や追放されそうになったので、最弱テイマーに転職してひっそり暮らそうとしたけど無理でした――〈完〉』
終わったぁ! くぅ~、疲れました! これにて終了ですっ~!
後半はかなり急ぎ足になってしまいました、申し訳ありません。
3巻予定だった話を2巻に詰め込んだせいです。
でも書きたいことは全部書けたと思います。伏線もほぼ全部回収できたかな。
ただ終わり方が微妙、ハーレムエッチは72話の後にして、ランで終わりたかった。余韻が……。
あと、ミーニャの母親の魔族のことも書けませんでした。暗殺騎士団も名前だけで全員出せなかったなぁ。
でもまあ大体全部できたのでこれにて完結です!
ちなみに読者さんに尋ねたいのですが、面白かったですか?
ここがダメだったという指摘があれば感想欲しいです。
まあ今流行りの「追放ざまぁ」や「追放復讐」になっていないので人気が出なかったのは仕方がないです。
自分から国を出て行ってるから追放じゃないし、
ざまぁ相手との因縁が薄すぎてざまぁじゃないし、
自分のためじゃなく子供たちのために成敗したから復讐でもないし、
流行りのテンプレを狙おうとして、見事なまでに空振り三振した作品でしたね、ほんと逆にすごい。
でもこの作品にブクマや★評価くれた人、本当にありがとうございます!
この暗殺テイマーの感想書くの面倒って思ったかたは↓の★評価をもらえると嬉しいです!
目安としてはこの作品が600円の文庫だった場合
★0=買わない。タダでもいらない。
★1=ブックオフで100円なら買う。
★2=古本屋で300円(半額)なら買う。
★3=新刊600円で買う、でも読んだらすぐ売る。
★4=新刊600円で買って、読み終えた後も手元に置いとく。
★5=新刊を二冊買って自分用と布教用にする。
こんな感じで(たぶん★1がいっぱい付きそう)
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました!
では現在更新中の新作をお楽しみください! 微エロ注意ですが。
『【書籍化決定】おっさん勇者の劣等生!~勇者をクビになったので自由に生きたらすべてが手に入った~』
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