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【完結済】世界を統べる王女使い《プリンセステイマー》~最強暗殺者は処刑や追放されそうになったので、最弱テイマーに転職してひっそり暮らそうとしたけど無理でした  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第二章 魔界妖精ドラゴニア編

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72.終わりと始まりのウエディング


 グランツフェズン北東のエルフ国境。

 王国軍とエルフ軍がいまだ戦っていた。


 報告を受けたアーデルが凛とした声を張った。


「エルフの総大将、ミッシェル! よく聞きなさい! あなた方に協力したジンフォン他50名のドラゴンは、すべて打ち取られました! もう逆転の目はありませんよ!」


 彼女の声は操る風に乗り、エルフ軍全体に響き渡る。

 それにより疑心暗鬼の声が上がる。

 信じる者、信じない者。

 ただ戦場では悩んだだけで効率が落ちる。


 ますますエルフ軍は浮足立った。



 その時、エルフ軍の後ろから、激しいときの声が上がった。

 本来なら森の中にいるのはエルフ軍の弓部隊。

 しかしその後ろからであった。


 銀髪を後ろになびかせて幼い少女が森を駆ける。その速さは、風よりも早く。

 テイマースキルで強化されたフランソワだった。

 銀の胸当てに細身の剣が木漏れ日を浴びるたびに光る。


「あたくしは由緒正しき始祖の直系フランソワ! ――皆の者、ミッシェルに従いて賊となるか、あたくしに従いて平和の徒となるか、どちらか選びなさい!」


 フランソワが穏健派をまとめ上げてエルフ軍の後ろを突いたのだった。

 実際、数はそこまで多くなかったが、王国軍との挟み撃ちになったことで、エルフたちに凄まじい動揺が走った。

 そして戦意が極限まで低下した。


 喚き散らすのはミッシェルただ一人。


「なにをしてるのです! 戦うのです! 敵は、敵は、すぐそこに!」


「もうやめましょう、殿下」「見苦しいだけです」「負けでしょう」


 他のエルフは剣を収め、捕虜的扱いを受けていく。



 フランソワが部下とともにミッシェルへ肉薄する。


「さあ、戦闘をやめさせなさい。特に奴隷たちの戦いを!」


「くっ……! 一時停止!」


 その声とともに、奴隷たちの動きが止まった。



 ずっとミーニャと互角の戦いを続けていた少年ローランドも動きを止めた。

 そして手に持っていた投げ短剣を手放す。

 地面に落ちて刺さった。


「ボクの負けだよ、アー……じゃないミーニャ」


「じゃあ、後ろ向いて」


「用心深いね」


 華奢なローランドが、ふわっと茶髪の髪を揺らして、その場でターンした。

 後ろ手に背を向けた彼に、ミーニャがすたすたと近づく。


「――【万識絶失アブソリュートコーマ】」


「え?」


 ミーニャの手刀が、とすっと背中を突いた。

 ローランドがガクッと頭を垂れた前のめりに倒れた。


「こっちのほうが確実」



 そしてミーニャはミッシェルに向かって歩き出す。

 ミッシェルは、ひいっと声を上げて後ずさりした。


 しかし何気ない様子で歩くのに、ミーニャの速度は速い。

 あっという間に距離を詰めた。

 怯えるミッシェルののどに、短刀を突きつける。


「ローランドの隷属を解除して」


「わ、私はまだ、完全に敗北したわけじゃない! 今後の交渉の場で、まだ盛り返せる――」


「そう」


 淡々と無表情のまま答えると、ミーニャの手が動いた。

 ザンッと指輪のはまった右手の指をすべて斬り落とす。


「ぎゃあああ!」


 ミッシェルが切られた右手を抑えてのたうち回る。

 ミーニャが振り返ってローランドの右手を見る。

 その手についていた隷属紋が消えていく。


「終わり」


 短刀を振るって血を払うと、白鞘に収めた。



 フランソワが周囲にいるエルフ、そして人間たちに向かって高らかに宣言する。


「我がエルフ国は、今を持って人間国に敗北したと宣言する。ただちに終戦協定交渉に入る!」


「「「うわぉぉぉ!」」」

 人間たちが叫び、そして奴隷だった人間たちも騒ぐ。

 一方、エルフたちはうなだれていた。



 アーデルが白い振袖を揺らし、頬笑みを浮かべて銀髪の少女へ近づく。


「初めまして、フランソワ女王。わたくしはグランツフェズン王国女王アーデルハイトですわ。ノイス様からいろいろとお伺いしております」


「初めまして、アーデル女王。この度は我が国が迷惑をかけてしまい、誠に申し訳ございません。素晴らしい提案をしていただいたのに、それを足蹴にしてしまうなんて、本当に情けないですわ」


「いえいえ。事情があったのは仕方ないこと。もう捕虜交換やら賠償協定、領地返還を決めてしまいましょうか」


「いいのですか?」


「ええ、お互いノイス様を信じる者同士ですもの。ノイス様もできるだけお互いの傷を深めないことを望むでしょうから」


「そうですわね」


 フランソワが楽し気に、ふふっと笑う。輝くような少女の笑み。

 アーデルもまた目を閉じたまま頬を緩めて笑う。おしとやかな笑み。

 こうして和やかな雰囲気のまま、二人は交渉を進めた。



 多くの部隊が撤退していく中で、まだ戦場に残って二人を眺めるものがいた。

 ニグリーナがじろじろとフランソワを上から下まで見ている。


「ふぅん、あれが六人目の奥さん? 綺麗な子だけど、スタイルはアタシの勝ちじゃん!」


 ニグリーナが腰をひねりつつポーズを取る。

 隣にいるエカテリーナが、ふっと笑う。


「でも彼女は女王よ。あんた公爵令嬢じゃない。順番的には愛してもらえるの最後の最後ね」


「アタシはサキュバスなのにっ!」


 ニグリーナは白い肌がチラ見えするのも構わず地団太を踏んだ。



 その後、ミッシェルは国賊として死刑となった。

 また王国とエルフ国との和平が締結され、港町の早期返還も決定された。


       ◇  ◇  ◇


 晴れた日のドラゴニア。


 ドラゴンの体格に合わせた巨大な城の前に、大勢の人々が詰めかけていた。当然ドラゴンの姿もある。

 平原を見下ろすバルコニーには、青いドレスの上に白い薄絹をまとったシャロンがいた。

 顔も白いヴェールで覆われている。


 まるでウエディングドレスだった。


 ランも傍にいて、白いワンピースに白い花冠を被っていた。

 シャロンのドレスの裾を持っている。


「きゅいっ」


「ふふっ、裾持ち、お願いしますね」

 

「きゅい!」


 ランが全身を使って頷いた。


 シャロンが大衆に向き直って手を振る。

 そこへ、バルコニーの端に控えていた初老の男――ドラゴニアの大臣が大きな声で叫ぶ。


「諸君! 英雄ノイスさまとドラゴニア女皇シャロンさまは、暗黒竜アンヘイエを倒し、世界に平和をもたらした! 皆のもの、讃えよ!」



「「「ノイスさま、シャロンさま、ばんざーい!!」」」


 広い平原に集まっていた人々が声を揃えて叫んだ。

 特に大きな声を上げているのが、マァサおばさんだった。



 僕は白いタキシードを着て、バルコニーへと進み出る。

 人々の歓声がさらに高まる。


 そして僕はシャロンの隣に立った。


 大臣が言葉を続ける。


「さあ、お二人とも! ドラゴニアの未来を託す、言葉の誓いを!」



 大臣の声に、シャロンは僕に向き直った。

 頬笑みを浮かべつつ、青い瞳で僕を見上げる。


「私はノイスさまを一生涯の伴侶として、そしてドラゴニアの皇王として、支え続けます」


 わぁぁぁ――っと、人々が叫んだ。


 シャロンが大きな瞳で目くばせをして、僕を促す。

 ――心を決めるしかない。

 でも、言葉はたやすく口を出た。もうずっと前から決めていたことだから。



「僕はノイス! 暗殺騎士団筆頭にして、シャロンをテイムした主人! 僕は未来を開いてくれたシャロンを一生涯大切にする!」


 うわぁぁぁ! と僕の言葉に人々が叫んだ。

 ちくしょー、などと悔し気声もチラリと聞こえた。


 僕はシャロンと向き直る。

 純白のウェディングドレスを着たシャロンは、いつになく美しい。


 僕は彼女の華奢な肩に手を置いて、抱き寄せる。


「綺麗だよ、シャロン」


「嬉しいです、ノイスさまっ」


 そして、僕らは大衆の見守る中、顔を近づけていく――。



 ――が。


 突然、お城二階のバルコニーに騒がしい声が響いた。


「ちょっと! ノイスさま!?」「ちょっとちょっと!」「なに勝手に進めてるのさ!」「あたくしたちもいますわよ!」「にゃ」


 良く知ったみんなが飛び出してきた。

 アーデルハイド、エカテリーナ、ニグリーナ、マハスティ、フランソワ、ミーニャ。

 

 女王や公爵令嬢たちが、白いウェディングドレスを着て、僕に抱き着く。


「一人だけなんて!」「アタシも!」「あたくしもっ」「みんな一緒っ!」「ずるいですの!」「にゃにゃ」


「「えええええ!」」


 僕とシャロンの驚きはよそに、僕は純白の花嫁たちに取り囲まれる。


 エカテリーナが顔を真っ赤にしつつ、大胆に抱き着く。



「ノイス、日替わり奥さんよ! 喜びなさいよねっ」


「ええ! 日替わりって……どうするの」


「そんなの。毎日、妻のところへ通うに決まってんじゃん!」


 ニグリーナがとてもきわどい花嫁衣裳で抱き着いてくる。

 僕はシャロンの手を離さず叫ぶ。


「さすがにそれは無理だよ、シャロンがいるんだから!」


「独り占めはずるいですわっ」


「あたしも楽しませてねっ」


 フランソワとマハスティはまだ早いだろうに、それでも嬉しそうに抱き着いてくる。

 後ろから抱き着くミーニャがぺろっと僕の首筋を舐める。


「わたしもノイスの予約しとく」



 シャロンが青い髪を振り乱して天を仰いだ。


「私の結婚式がめちゃくちゃですわぁ~っ!」


 その言葉にハッとする。

 僕は周りを取り巻く花嫁を押しのけて、シャロンを正面から抱きしめる。


 青い瞳を覗き込んで告げる。



「僕が一番大切にするのは君だから」


「の、ノイスさまっ――んぅっ!」


 僕はシャロンの唇をふさいだ。花弁のように柔らかな感触。

 さらに抱き締めつつ、左手に指輪をはめる。


 見ていた花嫁たちが叫ぶ。


「「「ああ~!」」」


「ずるーい!」「一番取られたじゃん!」「欲しい!」「いいな~」「まあ、しょうがないですわね」「わたしは首輪がいい」


 僕の腕の中でシャロンが頬を染めつつ微笑んだ。


「はい、ノイスさま。私もノイスさまを一番大切にしますっ」


 そう言って、もう一度、今度はシャロンからキスをしてきた。


 平原にいた人々が、おお~とざわめく。

 これもまたドラゴン的な風習だったらしい。


 平原にいたドラゴンが空へ向かってブレスを吐く。

 空に大きく火花が散る。



「「「女皇さま、ばんざーい! ノイス皇王ばんざーい!」」」


 緑の平原に、祝福の声が波のように轟いた。

 また各国の女王との結婚も祝福される。

 僕はみんなに抱き着かれて身動きが取れない。


 こうして僕は世界の半分以上を締める女王たちの王となったのだった。



 ただし日替わり奥さんを実行したら過労で倒れると思った。

 が、僕とシャロンのために国を挙げて協力してくれたのは事実。


 ふよふよと柔らかな花嫁に包まれつつ思う。

 なんとか打開策を見つけないといけなかった。

ご報告

おっさん勇者の劣等生が書籍化決まりました~。

https://ncode.syosetu.com/n8256gj/

よかったらお読みください。

暗殺テイマーは次話で終わりますが、苦戦中です。すみません。

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