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5.僕のテイムは一味違った

本日5話目。


 深夜の山奥の広場にて。


 突然、大男ペイエンディが襲いかかってきたが、僕は暗殺スキルを使って大きな剣を破壊した。



 ガラガラと大剣の持ち手側に残っていた刀身部分まで瓦礫のようにひび割れて崩れていく。

 ペイエンディは壊れていく剣を呆然と見下ろす。


「な、なぜだ! 何が起きている!?」


「簡単だよ。剣を殺しただけさ。どんなものにも寿命はあるでしょ? だから暗殺スキルで即死させられるんだよ」


「馬鹿な! 暗殺スキルだと! 生き物を殺すスキルだろ!」


「みんな勝手にそう思い込んでるだけだよ。自分で限界を作ってしまってる。ほんとはなんでも殺せるんだよ」


「そんな馬鹿なっ……バカげている――!」


「バカげてる戦いをこれ以上続けても仕方ないでしょ。逃げてくれていいよ。僕はもう無益な殺生はしたくないんだ」



「ふざけるなぁ! 最強種であるドラゴンが武器を壊されたぐらいで弱くなったともうなよ! むしろここからが本気だ! ――はぁぁあああ! 竜掌破ドラゴンストローク!」


 ペイエンディが気合を込めて右腕を振りかぶった。

 僕を襲う右腕が太くなっていき、黒い鱗におおわれていく。元のドラゴンの腕そのものだ。


 僕は溜息を吐きつつナイフを構える。


「だよね。そう来ると思った。ドラゴンは能力最強だから、武器や防具を破壊したぐらいじゃ戦いを止めないんだよね……さよなら、【影移死斬シャドウスラッシュ】」



 黒竜の右手が直撃する瞬間、僕はペイエンディの背後に移動した。

 右手に持つナイフで背中をツンッとつつく。


 ペイエンディは舌打ちして振り返る。

「また後ろか! 逃げ足ばかり早い奴――ぐふっ!」


 口と鼻から大量の血が迸った。彼は胸を掴んでのたうち回る。


「な、何をしやがった……!」


「どうせ鱗は固いんでしょ? だから、内側から攻撃させてもらったよ」


「う、うちがわ……」


「どんな生き物でも体内に影を持つからね。その影を刃にしてめちゃくちゃに」 



 彼はますます血の池に溺れながら喘ぐ。

「ぐっ……なんてやつ……そう言えば、思い出した……西の国に何でも殺す暗殺者がいると……名は、確か――死神のリヒト……ぐふっ」


 ペイエンディが最後の血を吐いて絶命した。

 瞳孔の開いた顔で夜空を見上げている。


 僕はナイフをしまいつつ肩をすくめた。

「そんな奴もいたかもね……僕はもう知らないけど」

 


 僕は振り返った。

 シャロンとランは目を丸くして固まったままだった。


「あ、忘れてた」


 僕はペイエンディの遺体を探って丸い球を取り出すと、暗殺スキルで殺した。玉がパキッと割れて粉々になった。

 すると二人の呪縛が解けた。


 シャロンが青い髪をなびかせて駆け寄って来る。

 そして僕に抱き着いてきた。大きな胸が当たってるのも気にせず、涙目で僕を見上げる。

「ノイスさま! なんてお強いのでしょう!」


「きゅい!」

 ランも飛んできて、僕の胸に飛び込んだ。


 ずっしりと重いランを抱えつつ少し照れて言う。

「いや、まあ。あんまり人には言わないでね」


「はい、当然です! 助けていただいて本当にありがとうございます!」


「いいよ、これぐらい。もうランを守るって約束してたんだし。ね、ラン?」


「きゅいっ!」

 長い首を僕に当て、目を細めて鳴く。なかなか可愛らしい。



 シャロンは細い指で涙を拭うと笑顔で言う。

「では、ランをよろしくお願いします……個人的には、このままノイスさまとお別れするのは……いえ、なんでもありません。頑張って逃げ回りつつ、皇国を取り戻してみせますわ」


 そう言って、寂しそうに微笑んだ。

 ――きっと自分も守ってほしい、みたいなことを言いたかったに違いない。

 でも、ランを託した想いを翻意にするわけにはいかないのだろう。


 僕はテイマーなのだから、一緒にいるということはテイムすることになるし。

 彼女は言ってた。「成人したドラゴンがテイムされるなんて悲惨」だと。



 なので僕は気が付かないふりをして笑顔で答えた。 

「うん、頑張ってね――あとはランをテイムしなきゃだね」


「きゅいっ」


 僕は小さなランを見下ろしつつ、ふと思った疑問を口にする。

「でもさ……テイムって半殺しにしてからテイムするんだよね?」


「きゅいっ!?」



 僕のつぶやきに、シャロンが血相を変えて腕にしがみついてきた。


「お、お待ちください、ノイスさま! あなたほどの強さなら、弱らせずともそのままテイムできますっ! だから攻撃は止めて! ランが死んじゃうっ!」


 ものすごく取り乱して訴えてくる。言葉遣いがめちゃくちゃになっていた。



 僕はランの頭に手のひらを当てた。


「わかったよ。じゃあやってみる。えーっと、――テイマースキル発動【手懐ける(テイム)】」

 腕の中でランが金色に光った。


 そしてテイムが成功したと感覚的に分かった。

 気配探知のスキルを使わなくてもランの居場所がなんとなくわかる。

 またランの能力やスキルもわかった。



 ――そして。

 シャロンのスキルや能力もわかった。


 横を見ると、シャロンが青い瞳をまん丸に見開いていた。口も驚きで半開きになっている。


「ごめん……どうやら接触してるモンスターは全部テイムできてしまうみたいだね」


 さっきシャロンは僕の発言に取り乱して腕を掴んでいた。

 そのためランと一緒にテイムされてしまったみたいだ。



 呆然としていたシャロンだったが、急に膝から崩れ落ちるとお尻をぺたんとつけて座り込んだ。

 青い瞳に涙を浮かべ、整った顔をくしゃくしゃにして叫んだ。


「そんなぁっ! 国の復興のため、ここまで逃げてきたのにっ! どんなにつらくとも我慢してきたのに! ――成人してからテイムされたなんて知れたら、もう王位継承権が認められないわっ! なんでっ!」


 うわぁぁぁん! と張り裂けるような大声を上げて、年相応の少女のように泣きじゃくった。

 ランも心配そうにきゅいーきゅいーと鳴きつつ、小さな前足でシャロンを撫でる。


 ――大変なことになってしまった。かわいそう。

 たぶん僕のせいだけど。



 いくら慰めの言葉をかけても、シャロンの泣き声はいっこうに止まなかった。


今後は基本毎日更新。明日は3話更新予定。

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