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【完結済】世界を統べる王女使い《プリンセステイマー》~最強暗殺者は処刑や追放されそうになったので、最弱テイマーに転職してひっそり暮らそうとしたけど無理でした  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第二章 魔界妖精ドラゴニア編

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45.幼い練習


 僕らはニグリーナの魔界ゲート通行許可をもらうため、女帝エカテリーナのいる魔王城へ向かっていた。


 魔都レジーナの大通りを歩いていく。高層の建物が立ち並ぶ通り。

 あちこちに張り巡らされたパイプからは白い蒸気が時々噴き出していた。


 また、通りに面した店は珍しいものを売っていた。

 刺繍や裁縫の道具を売る店、自動タイプライターを売る店、ガラス製のフラスコやビーカーを扱う店。金属工具店。古書店。


 というか、よく見れば建物の五階や十階にも店があった。

 先ほどのバーのように外に向けてカウンターがある喫茶店や、テイクアウト専門の店。

 黒い翼を持つ悪魔や、ほうきに乗った魔女が利用している。



 僕は上を見ながら感心する。

「すごいね。横だけじゃなく、縦方向にも店が並んでる」


「スペースの有効活用って感じ?」


 シャロンが辺りを見回しながらささやく。

「ただ、雑貨屋や道具屋、趣味の店が多いですけど、食料品店が見当たりませんね」


「魔素があるから食事いらないじゃん。酒やお茶の嗜好品ぐらい?」


「なるほど」



 僕とシャロンは感心しながら、ごちゃごちゃした魔都の大通りを歩いていった。

 ――ちょっと住んでみたいと思わせられる、異常な雰囲気を持つ街だった。

 食料が手に入らないので、人間は生きていけないけど。



「こうして魔都を見ると、公爵の黒い砦を小さい別荘って言った理由がわかった気がするよ」


「でしょー。小さいもんでしょ――あ、お城はこっち」


 丸いロータリー広場に突き当り、別の大通りへと進んだ。

 じょじょに街を見下ろすほど高くて威圧感のある、黒い城が見えてきた。


       ◇  ◇  ◇


 魔王城に僕らは入った。

 ニグリーナは公爵令嬢であるので、すぐに魔界を支配する魔王エカテリーナの下へ案内される。


 黒い絨毯を踏みながら廊下を歩いていく。

 僕は戦闘になった場合に備えて、魔王の情報を知っておこうと思った。


「ねえ、ニグリーナ」


「なぁに?」


「エカテリーナってどんな人? 強い? 女帝って呼んでたけど」


「ん~、見た目は金髪ツインテールの可愛い子かな? 性格が意地悪で横暴でわがままだから、女帝って陰で呼ばれてるの。ただ吸血鬼と魔神のハーフだから、お父さんより強くって、たぶん魔界最強なんだよね~――でもノイスよりかは弱いから安心して。その魔素殺してるスキルと、壁に大穴開けたスキルがあったら絶対勝てるから」


「さすが、いとこだけあって詳しいね。昔から仲悪かったの?」


 僕は何気なく問いかけた。



 しかしニグリーナは辛そうに眉を寄せて俯いた。艶やかな桃色の髪が白い頬を隠す。


「ううん……子供の頃は仲が良かったよ。一緒に手を繋いで魔界幼稚園に通ったり、スキルの練習したり。――キスしたり~、お風呂に入ってお互いの身体を洗いっこしたり。ベッドに裸で潜り込んで触りっこして抱き合ったり。――アタシの吸精や魅了が女に通用するのも、エカテリーナが練習に付き合ってくれたからなんだ~」


「なんか想像以上に、仲がよさそうだね。――でも、今は嫌がらせ……喧嘩でもしたの?」


「違う。アタシがやっちゃったの」


「えっ!? いったいなにを!? ……まさか」


 僕の驚きに、ニグリーナが形の良い眉をあからさまにしかめた。

「女の子同士で、どうやって最後までいくってーの……違うわよ。あやうく死なせるところだったの」


「えっ! どうして?」



 ニグリーナは、はぁっと溜息を吐きつつ、床を見ながらぽつぽつと呟いた。

「ある日のことだけどね。ベッドで一緒に寝ながら、彼女が吸血スキル使って、アタシが吸精スキル使って、練習しあったの。でもさー、子供だったから、裸で抱き合って触りっこしてたら気持ちよくなって、お互い寝落ちしちゃって。でも彼女は口を離して吸血がストップしたのに、アタシの吸精は続いてて。それで、気が付いたらエカテリーナ、死にかけてた。親が不審に思って様子見に来なかったら、たぶん死んでた。それ以来、まともに会えなくなくなったし、嫌がらせばかりされるようになったってわけ」


「そんなことがあったんだ……それは辛かったね」

 僕が悲し顔して慰めた。


 しかしニグリーナは首を振った。桃色の髪がさらさらと鳴る。


「でもさ、悪いのはアタシじゃん? だから嫌がらせされて、怒ったり憤ったりすることはあるけど。今まで一度も、仕返しをしたことはないんだよね~……だから、ノイス」


「なに?」


「できたら、エカテリーナには、あんまりひどいことはしてあげないで欲しいな~、なんて思ってるんだけど……甘いかな?」

 桃色の髪を揺らしてニグリーナは寂しそうに笑った。



 ――ニグリーナって魔族なのに、見た目の印象とは違って、ほんといい子だと思う。

 僕は頷くしかなかった。


「わかったよ。できるだけ、穏便に済ませるから」


 後ろを歩くシャロンも悲しそうな声を出した。

「魔族として、とても仲がよろしかったのに悲しいことですわ……また昔のように仲良くなれたら、どんなに喜ばしいか……でも、難しいのでしょうね」


「二人とも気を使ってくれて、ありがとっ♪」


 ニグリーナは急に笑顔を作ると、白い歯を見せて可愛く笑った。



「ニグリーナ、何かできることあがったら言ってね」


「うん、あったらね――って、あるよ!」


「え、なに!?」


 ニグリーナが突然、元気な声を出したので僕のほうが驚いた。


「アタシが伝説のサキュバスになったら、すべてうまくいきそーだと思わない!? エカテリーナと仲直りできて、迷惑かけた両親にも恩返しできそうじゃん!」


「それであの奥義を取りたがってたのか……うん、わかった。協力するよ」


「ありがとっ――あ、着いたね」


 ニグリーナが大きな扉を見上げる。


 なにかもっと言葉をかけてあげたかったけど、玉座の間に通じる大きな両開きの扉の前に来ていた。


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