41.魔界へ(第二章プロローグ)
二章開始。
本日は2話更新。1話目。
愚かな理想に邁進して国を危機に晒し、また暗殺騎士たちを殺そうとしたフォルクハルト国王を僕は処刑した。
しかし五日以内に周辺国が共謀して人間の国を攻めてくるため、その前にドラゴニアを取り戻さなくてはいけなかった。
僕は一人で魔界にいた。ゴミ処理場の大きな倉庫。
移動時間を短縮するために暗殺スキルを使って移動した。
だからみんなには本に入っててもらった。
僕は背負い袋から魔導書を取り出す。
「――【本化解除】ニグリーナ」
ぼふっと煙とともに、ほぼ裸体の美少女ニグリーナが現れた。サキュバスなのでいつも扇情的な格好をしている。
スレンダーな体を見せつけるように、手を上げて伸びをしながらあくびした。
「ふぁぁ~、もう大きなベッドさいこー」
「ニグリーナは本の中でベッドで寝てるんだ?」
「たぶん十人ぐらいで寝れる、ふかふかでおっきなベッド? 乱交し放題だから、アタシも家に欲しいわ~……――ってもう魔界!? 早いじゃん?」
「時間がないからね。さあ、魔界を移動できるゲート? を使おうよ」
「も~。せっかく二人っきりなんだから、たまにはアタシとイチャイチャしてくれてもいいじゃ~ん。こんなにエロいサキュバスを放ったらかしにしとくなんて、普通じゃありえないんだから~」
なだらかな白い頬を、ぷくっと膨らませる。可愛いのに、誘うような妖艶さのある仕草だった。
僕は肩をすくめつつ彼女を諭す。
「今はそれどころじゃないから」
「じゃあ、協力したらあとで楽しいことしてくれる?」
「うん、わかった。それよりゲートを」
「言ったかんね! 約束だかんねっ! ゲートはこっち――きゃはは!」
ニグリーナが桃色の髪を揺らしつつ、スキップしながら倉庫から出て行く。マントが広がりすらりとした手足が見えた。
僕は溜息を吐きつつ、後に続く。
血のように赤い空の下、案内されたのはゴミ処理施設の外れにある真四角な建物だった。
二階建てで、規格の揃った黒い石を積み上げて作られている。
中へ入ってすぐは吹き抜けで、天井が高い。
部屋の奥には黒い二本の柱が立っていて、柱の間の空間が歪んでいる。
ニグリーナが歪んだ空間を指さす。
「あれがゲート。魔素を消費して入力した目的地に飛ぶの」
「使い方は?」
「入力は隣の部屋。たぶん部下がしてくれるけど――ちょっと~、誰かいる~?」
ニグリーナが呼びかけると、一階の端にある小さな部屋から男が出てきた。
白衣を着たモグラ顔の男は近寄って来ると揉み手しながら言う。
「これはこれは主任。どうされました?」
――ニグリーナは魔界ゴミ処理施設の主任だった。魔界の公爵令嬢でもある。
「ゲートで東の端まで送って欲しいんだけど」
「今は無理でございます、主任」
「え!? なんでよっ!」
「公爵様が魔素の消費を控えろとおっしゃられまして……東の果てまでは消費量が多くなってしまいます」
「お父さんが? なんで?」
「研究に使うとかで、近隣一帯の魔素を高濃度で安定させたいそうです」
「また変な発明してるんでしょ……わかった。お父さんに頼んでくる」
ニグリーナは大げさに顔をしかめると、少し大股で入口へ向かう。
僕は隣を歩きつつ尋ねる。
「公爵って発明家なんだ?」
「そー。たまにはすごい発明するけど百個に一つとか千個に一つぐらいで。だいたいは明らかにゴミみたいなのも作るから迷惑してるんだよね~」
ふと以前、近くにある公爵の別荘に行った時のことを思い出した。
ネジとか工具とか、作業台があった気がする。
「いやいや役に立つ発明を一つしただけでもすごいよ。発明には失敗がつきものだって言うし」
「いくらなんでも失敗しすぎ! ゴミ処理発明だけの一発屋、みたいに陰口叩かれて。お父さんがバカにされるのは我慢できないってのっ」
頬を膨らませて憤るニグリーナ。
――ふしだらに見えて、意外とお父さん想いのサキュバスだった。
「なるほど。成功しやすくなるよう、協力できればいいね」
「どっちの味方よっ。その発明のせいでゲート使えないんだからっ」
「まあ、そうだね。なんとか使わせてもらわないと」
「話聞いてくれたらいいけどね~」
ニグリーナは鼻の頭にしわを寄せつつイヤそうな顔をした。
そして僕らはゴミ処理施設の近くにある、公爵のいる別荘へと向かった。
次話は夕方更新。




