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28.ダンジョンの手伝い

本日2話更新。2話目。


 暗殺騎士序列二位のミーニャをテイムした次の日。


 僕とシャロンはダンジョンに向かった。

 ミーニャを五回潜らせて、仮登録を本登録にするため。

 一緒にいることになる以上、せめて名前と職業だけでも新しいものを用意しないと僕が身バレする危険があった。


 

 ダンジョン地下四階の地底湖まで来ると、本の中からミーニャを出した。

 白いブラウスに赤いスカートを着た、猫耳少女が降り立つ。胸は薄くて手足は細いながらも、凛とした張り詰めた雰囲気を感じさせた。


 ミーニャは、ぼーっとした表情で辺りを見渡す。

「なぁに? 仕事?」


「仕事じゃないけど遊びかな。――モンスター倒してくれる?」


「ん」

 ミーニャは眠そうに、すたすたと歩き出す。

 ――と。


 ザバァッ!


 と、ちょうど正面から湖面を割ってトカゲが現れた。

 僕らに気付くと走り寄ってきたけど、ミーニャが通り過ぎざまに瞬殺する。

 いつの間にか、手には反身の短刀を持っていた。



「さすが序列2位だね。強い」


「よゆう」

 ミーニャは赤いスカートを翻して振り返った。


「あー、全部倒さないでね?」


「にゃ?」


「弱いのをほどほどに残す感じで」


「全部弱い」


「わかるけど。その中でも強い奴だけ倒して。視界から消えたら勝手に出口へ走るから」


「よくわからないけど、わかった」

 ミーニャは颯爽と新たな敵に向かっていく。



 僕は後ろにいるシャロンに話しかけた。ランと一緒に岩陰に隠れている。

「ここは任せていいかな?」


「どうされるのです?」


「伝声管の工事が進んでるか見てくる」


 実はそれ以外に一つ、ニグリーナに聞いておきたいことがあった。

 もしかすると予想より早くドラゴニアに行けるかもしれない。


 シャロンは丁寧に頭を下げた。

「わかりました。お任せください」


「きゅい」

 子供姿のランも地面に落書きしながら元気よく答えた。花をたくさん描いていた。



 モンスターを避けつつ地底湖の淵に沿って横手の壁へと向かう。

 そして壁を登って鍾乳石の隙間を通った。突き当りの壁をさわる。


「確かこの辺に通路が……」

 すると、にゅっと壁を抜けてすらりとした腕が出てきた。


 その勢いのまま、ほとんど裸にマントだけ着たニグリーナが僕に抱きついてくる。

「ノイスじゃーん! 濃いいの与えに来てくれたの?」


「違うよ。工事がどれだけ進んだか見に来たんだ」


「なーんだ。くれてもいいのに」

 不満そうに唇を尖らせる。



 僕は話を元に戻す。

「で、工事は順調?」


「まあねー。三日あればできると思う」


「よかった、意外と早いね。――お金はかかりそう?」


「んー? 地上のお金だと、どれぐらいだろ? 金貨5枚ぐらい?」


「そんなに少ないの?」


「んん? あの大きいやつ」


「大金貨だね。金貨だと50枚かな。わかった。あとでもらって渡すよ」


「りょかい!」

 僕に抱き着きながら素直な笑顔で頷いた。肩で揃えた桃色の髪が揺れる。

 大人びた仕草より素直な態度の方が可愛いと、ちょっと思った。



 少し照れてしまった内心を隠しつつ、彼女に尋ねる。

「あと聞きたいことあるんだけど」


「なになに? 今夜の予定? あいてるよっ!」


「じゃなくて。魔界って大陸ほどは広くないよね?」


「当然じゃんっ」


「それで昔は世界各地に通じてたんだよね?」


「そうだけど?」


「通路を少し掘ったりしたら、また使えないかな?」



 ニグリーナは眉間にしわを寄せて考え込んだ。

「どうだろ……? 調べたことないからわかんない。――どこか行くの?」


「できれば魔界を通ってドラゴニアに行きたいなと思って」


「ドラゴニアは昔も通じてないと思う。上の大陸の端から端までだから」


「じゃあ、大陸の東にある妖精国には通じる穴あった?」


「あったと思う。たぶん、だけどね」


「ありがと。助かったよ」

 ――これでドラゴニアまでの道のりをショートカットする方法がわかった。

 僕やランのスキルを使えば、土木工事も簡単だろうと考えた。



 するとニグリーナはすらりと柔らかい足を僕の胴に絡ませて下から見上げてきた。

 誘うような上目遣い。


「ねー、だったらさぁ。アタシっていつ頃、ドレインウインク? だっけ? 取れそう?」


「ん~? もう少しかかりそうかな。でも経験値ガンガン入ってるし。しかもニグリーナって、公爵令嬢なのにシャロンと違って上流階級系のスキルはまったくとってないから、かなりポイント余ってる」


「あー、儀礼とか礼儀作法とか? 男たぶらかせばいいんだから、作法なんて必要ないじゃん」


「うん、まあその考えで今後も暮らして。下手にポイント使用すると足りなくなるから」


 ――スキルには一般スキルと、職業もしくは種族の固有スキルがあった。

 下手に料理や裁縫、簿記や経営などの一般スキルを取ってしまうと、固有スキルを取るポイントが足りなくなってしまう。

 だから、多くの人は固有の道を極められないまま生涯を終えるのだった。



 ニグリーナが首をかしげる。

「わかったけど……経験値ってそんなに簡単に手に入るものなの? サキュバスはエロい視線で裸見られて、ようやく経験値が1溜まるんだけど?」


 ――だからいつも扇情的な格好してたのか。

 内心、納得しつつ答える。

「うん、まあね。今ミーニャがモンスター倒してるから。新しくテイムした子なんだけど。僕たち均等に経験値が入ってるよ」


「なるほど。何もしなくてレベル上がるなんて、やっぱペットの身分って便利じゃん!」


「実はその子、半分魔族でさ」



 唐突にニグリーナの赤い瞳がギラッと光る。妖しい色気を感じた。

「へぇ~。新しい魔族ねぇ……ちょっと会ってみたいかも? ふふっ」


「うん、今後一緒になることもあるだろうし、顔合わせしとこうか。こっちだよ」


 僕の案内で、来た道を戻った。

 ペットの位置はだいたいわかるので迷うことはなかった。


 ニグリーナはなぜか妖艶な笑みを浮かべて身だしなみを整えていた。

 まるで夜の戦いに挑もうとする美女だった。


明日は2話更新。

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