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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

未来の見えない人-予知能力の少女と運命の彼-

作者: 四季

 昼休み、とあるクラスの中、一人の少女を中心として人だかりができていた。


「高校生の興味っていったらやっぱり恋愛っしょ。ねえ、ヒバリ、アタシの恋愛を占ってよ。この間告白されたんだけどさ。断ったほうが良いと思う?」


「うーん、そうだね。断ったほうが明るい未来が見えたかな」


「そっか~。じゃあそうする。ヒバリの占いって絶対にあたるものね」


 ヒバリと呼ばれた少女は、苦笑いを返す。


 少女の占いは百発百中だった――それもそのはず、彼女には未来予知の力があったからだ。だから今日の占いのことを予知夢で知っていた。


 占いで彼女が付き合った場合、待ち受けるのは見知らぬ男の暴力である。


 反面、付き合わなかった場合、別の彼氏と付き合い、結婚するビジョンが明確に見えていた。男の顔は知らない人間だからわからなかったが。


 少女は昔からその予知夢の力を使って、人の相談に乗ったり、家族の危ない危機を何度も救ってきた。しかし、今まで一度たりとも自分の未来は見えたことがない。


 たぶんこの力には制限があり、他人を見ることによって未来を思い描くことができるのだ。そう少女は考えていた。


 だからとある男と彼女が出会ったとき、その衝撃は計り知れないものだった。


(この人、未来が見えない――)


 同じ学園の男子生徒だった。クラスでも人気のほうであり、いつも誰それと付き合っているという噂がある人物だ。男の名前はキョウジといった。


 キョウジはことあるごとにヒバリに接近してきて、彼女に好意を示してきた。ヒバリは最初未来が見えないことが不安だったが、徐々にその誠意ある行動に、考え方が変わっていった。


 きっと彼は、私の運命の人に違いない。昔から、彼女は自分の未来だけは見えなかった。つまるところ、その未来に関係するから見えないのである。ああでもどうしよう、彼が特別な人間だったら、私は未来予知の力で彼のことを守れない。


 少女はそこまで考える程、その男へとのめり込んでいった。


 ある日のこと、少女はデートに誘われた。頷いて、デートを受けた彼女は、その終わりに、彼にこう言われた。


「お前、俺のことが好きなんだろ?」

「……え?」


 高圧的な態度に驚いたが、そういう強気なところも受け入れるほどに、彼女は彼に惹かれていた。


 (だって運命の人だから)と。


 だから彼女は頷いた。


「でもなぁ。俺は前からお前のことが大嫌いだったんだよ」

「え?」

「何度も何度も俺が手を出そうとしてる女に、やめたほうがいいって占いでいうお前がよ」

「……え、えっと。し、知らない、だって私、相手の顔は見えないもの。それより、そんなことで私に近づいてきたの?」

「ちげーよ。俺がお前に近づいたのは……こうするためだよ!」


 男は暴力を振るってきた。否、それは暴力を越えたものだった。


「あ、ああ……」


 彼女は腹部をナイフで刺されていた。

 さらに鈍器のようなもので頭部を殴られた。

 激痛の後、薄れていく意識の中、直近で占ったとある男と付き合うと不幸になるという結果を思い出す。同時に、自分に未来が見えなかった理由にも気づいた。


(私、死ぬんだ……)


「わ、私はみんなが幸せになるために……」

「そのせいで、俺は不幸になったんだよ! 責任とれよ! くそが!」


 罵声を浴びせられる。


(こんな最後はいやだ……誰か助けて……)


 男を見ると、ビジョンが見えた。


「ああ、そんな」


 もう彼女とは関係ない人生を歩むからだろう。自分は助からず、彼は捕まり、それから刑期を終えて――そして幸せになる。


 そんな残酷は運命を彼女はみた。そしてそれと共に意識を失っていく。


 彼女は最後に思った。

 

 私に運命の人なんていなかった。いたのは、ただの死神だった、と。

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