物語のような物語
ーこれは物語のような物語ー
ープロローグー
「ここはどこ?!昨日部屋でゲームして眠たくなってベッドで寝てたはずなんだけど…。もしかして…夢?」森の中にその男の子は不思議そうに立っていた。
『これは夢ではありません。確かにあなたの夢の中から話しかけてはいますがこれから話すことはこれからあなたの身に起きることです』森全体から女性の声が鳴り響く。
「えっ?どこにいるの?誰ですかー?…もしかして幽霊?」男の子は恐怖で顔をこわばらせた。と、その時目の前に突然女の子が現れる。突然だったので男の子は声も出ず地面に座り込んでしまった。
「ごめん、ごめん。驚かすつもりはなかったんだけど。えーと、確か龍真くんだったよね。私はヨーコ。この森に住んでるエルフよ。」
男の子は我に返り「なんで僕の名前知ってるの?」と聞いた。
「それはあなたがこの世界を救う龍の勇者だから。」ヨーコは真剣な顔で答えた。
「僕が勇者?僕、まだ子供だよ。無理だよ。」迷惑そうに言った。
「あなたはまだ知らないだけ。あなたには龍の血が流れてるの。」
ーーーーーってちょっと待った!!ーーーーーーーーーーーーー
「こんなありきたりな物語じゃダメだ。もう少しこう今までにない斬新なものはないのか?!」
企画会議の真ん中に座っているチーフであろうその男は机にさっきまで目を通していた本を叩きつけた。
「すいません。おもしろいと思ったんですが…」と物語を書いた男は弱々しくチーフに答えると、チーフは顔を真っ赤にし机に拳を叩きつけようとしたが心を落ち着け椅子に座った。「もう一週間待つ。それまでに俺が納得するものを持ってこなかったら次からは会社に来なくていい。」とチーフは男にそう告げると席を立ち部屋から出ていった。「チーフ待っ…」男は声を掛けようとしたがドアが閉まってしまい聞いてもらえなかった。
ーー「渾身の出来だと思ったんだけどなぁ。」と男は呟きながら会社の帰り道を歩いていると「ちょっとそこのお兄さん。」と白髪の老人が声を掛けてきた。
「なんですか?」と男は返すと老人は「お兄さんなんか困りごとかい。そんなショボくれた顔で歩いとったら幸せが逃げてしまうぞ。わしで良かったら話しくらい聞いでやるぞ。」と笑顔で話した。男はその笑顔に安心し老人にさっきの会議での事を話した。「あー話して少しスッキリしました。悩んででもダメですよね。もう一回頑張ってみます。」と男は吹っ切ったようで笑顔で「話し聞いてもらってありがとうございました。」と老人に礼を言った。
「そうかい、そうかい。それは良かった。そういや、お兄さんの名前まだ聞いてなかったね。名前はなんて言うんだい。」と老人は笑顔で尋ねた。
「僕は大橋祐希っていいます。おじいさんは?」
「わしか。わしの名前は神造じゃ。そうじゃ、おぬし今から少しわしに付き合わんか。おもしろいものを見せてやるぞ。」と、祐希の腕を掴み歩き出した。
「ちょ、ちょっと。神造さんどこ行くんですか?」ものすごい力で引っ張られて足がもたつきながら老人の向かう先に歩いていった。
「もうすぐじゃ…。…ほら、見えてきたあの家じゃ。」と、どうやら老人の家に連れて来られた様子であった。
「着いたぞ。わしの家じゃ。」老人は笑顔で話した。
「中で見せたいものがあるんじゃ。こっちじゃ。」と老人についていくとそこにはゲーム機が一台置いてあった。そのゲーム機は今まで見たことがないゲーム機だった。
「見せたいものってこれですか?」祐希は不思議そうに老人の顔を伺った。
「そうじゃ、このゲーム機を見せたかったんじゃ。このゲームはプレイするものをゲームの中へ誘いその世界を体験できるという代物なんじゃ。」嬉しそうに老人は語った。
「??ゲームの中へ入り込む?そんな事できるわけないじゃないか。はぁー時間を無駄にしてしまった。早く帰って物語考えないと。」と祐希は思って帰ろうとすると、「まぁせっかくここまで来てくたんじゃ。騙されたと思ってしてみたらどうじゃ、おぬしの物語の参考になるかもしれんしのぅ。」と老人は祐希を止めた。
「わかりましたよ。つまらなかったらすぐやめますよ。」と祐希は渋々納得した。
「じゃあ、さっそく行くぞ。準備は良いか?」と老人はゲームの電源を入れた。すると、ゲーム機が輝き出し部屋一面光に覆われた。
「まっまぶしいっ。神造さーん。」
ーー目を覚ますと僕はベッドに寝ていたーー