49〜54 眠り魔法と博士の謎
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「眠り魔法が使えるようになったんだってな」
「マユちゃんから聞いたの?」
「ああ」
博士は途端に厳しい顔になった。
というか隈ヤバイな。また寝てないだろ。
「眠り魔法には致命的な欠陥がある」
「…何?」
「人間にしか効かない」
「役立たずすぎる」
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「もう一回ガチャ回させてよ〜。タダで!」
「うちは常に火の車だ。タダでやるものなんてない」
「じゃあ水魔法しか使えないじゃん! 水魔法で倒せるの魔物158種類中67種類だよ⁉︎」
「覚えたのか…」
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「魔法が欲しいなら金を払え」
「ニートの財布事情は厳しいんだぞ」
「知るか。そもそもあんな所で働いて論文書いて実験してる俺の事情の方がお前の財布より厳しいわ」
「死ぬのでは?」
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「会社か何か知らないけどそこ辞めなよ」
「弱みを握られてるから無理だ」
「…」
「…」
「教え」
「教える馬鹿がどこにいる」
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「というかマユちゃんの家にはいつも行ってないじゃん。なんでうちには毎日くんの?」
「お前にはまだ教えるべきことがたくさんある。それに」
「それに?」
「お前の母上にはお世話になったからな」
「…」
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(よく考えれば、わたし博士のこと何にも知らないんだな…)
「博士って好きな人とかいないの〜?」
「なんだ急に小学生みたいな質問して」
博士はそう言って眉をひそめたけど、うーんと考え込んだ。
「好きな人か…。寺田寅彦かな」
「生きてる人にしよ?」
つづく