43〜48 魔物の教本
43
博士はいつものように家にいる。わたしはこの光景に慣れた。慣れざるを得ない。
「博士、マユちゃんが教本って言ってたんだけど…」
「ああ、渡すの忘れていた」
博士はいつも持ってる大きなカバンからA4サイズの本を取り出した。
「これだ」
「分厚っ!」
渡されたらずっしりと重かった。
「こんなの持ち歩いてんの?」
「常に3冊は」
「肩死ぬぞ!」
44
開いてみる。
手書きの文字だ。
「うげぇ細かい…」
「学年一位だったんだろ、やれ」
「人の脳は退化するんだよ⁉︎ 今は『蒙昧』も読めない!」
「読めてるじゃないか」
45
「あ、これ昨日見た魔物」
「属性を覚えて、その属性にとって弱点となる魔法を使うことが戦いにおいて大切だ」
「…魔法使うのに550円取るでしょ」
「当たり前だ」
46
「今月もうお金ないからガチャ回せないな…」
「ガチャっていうな。なに買ったんだ。どうせ無駄遣いだろ」
「ギリシア人の物語Ⅰ 民主制の始まり(著:塩野七生)」
「…お前なんでニートしてるんだ?」
47
教本をペラペラとめくる。
そしてわたしは確信した。
「これ書いたのママでしょ」
「そうなのか? なぜわかる」
「ほら」
「?」
「絵がド下手」
「…俺たち覚えるのにその絵でめちゃくちゃ苦労したんだぞ…?」
48
「博士も読んだことあるの? てか覚えたの?」
「当たり前だ」
博士は胸を張る。
「寝る間を惜しんで…」
「だから寝ろ!」
つづく