13〜18 魔法少女なニート
13
博士は今夜もうちに来ていた。
窓には段ボールがはってある。
「ツインテールになれ」
「は?」
いきなり何言い出すんだこいつ。
「魔法少女といえばツインテールだろ」
「確かに」
ツインテールといえば魔法少女のイメージはある。残念ながらわたしの髪は黒いけど。
「でも少女って年齢でもないしな〜。高校卒業してるし」
「じゃあ魔法ニートだな」
「立派な魔法ニートになってやるよ」
14
「てか、魔法少女って少女がなるんじゃないの? わたしは少女なのか?」
「魔法ニートな」
「うるさいわ」
博士はいじっていたタブレットから目を上げた。心底めんどくさそうな顔だ。
「少女は魔法少女にするわけにはいかない」
「矛盾してない?」
「リスクがあるからな」
わたしは昨日の魔物を思い出した。
あの時、博士は傷を負っていた(なぜか今日には治っているけど)。命のリスク、ということだろう。
「少女を魔法少女にして、勉学が疎かになったら困るからな」
「そっち⁉︎」
「その点お前は理想的だ」
「黙れ」
15
「というか本当に魔物ってこの世界にいるんだな」
「一般人には見えないからな。そう思うのも無理はない」
博士は神妙な顔をする。
「だが魔物は恐ろしい影響を及ぼす」
わたしはドキリとした。魔物が人を襲うなんて事ありえないとは言い切れない。
「……どんな?」
「景気が悪くなる」
「それだけ?」
「黙れニート」
16
「お前は魔法少女になったから、これから死ぬまで魔物が見える」
「マジか。そういえばママも見えてたな」
「つまり、魔物にもお前が見える」
「え……?」
「魔物に取り込まれるな。取り込まれたら……」
「ら…?」
わたしは恐る恐る聞いた。
「お前が不景気になるぞ」
「お小遣いが減る⁉︎」
「さすがニート」
17
「てかさ、魔法少女って給料出ないの?」
「出るぞ」
「え、マジか」
「しかし給料は母上に渡すように言われている」
「ぐうの音も出ない……」
18
博士は立ち上がった。
「今日は魔物も出ないようだ。私は帰る」
「博士って普段何してんの?」
それは何気ない質問だった。
「大学院生だ」
「……」
「じゃあな」
「……」
つづく