1〜6 博士との出会い
1
わたしはニートだ。
高校を卒業してプラプラしていたが、数ヶ月前からニートだ。
その日も夜にネットを見ていた。特に興味のないニュース記事だったけど、暇すぎてぼんやりとそれらを眺めていた。
そんな時、奴は現れた。
バリンッ!!
「⁉︎」
大きな音がした。音のした方向、つまり窓を見ると、割れていた。
そして1人の男が立っていた。
2
「だだだ誰だお前!」
わたしは叫んだ。深夜3時だったけど叫んだ。
その不審者は、額から血を流しながらわたしをビシリ!と指差した。
「私は魔法使いだ。お前を魔法少女にしてやろう」
意味がわからない。それよりわたしには言うべきことがあった。
「うるせー! 窓どうするんだ!」
「今言うべきことか?」
「大事なことだわ! ママに怒られるだろ!」
「さすがニート」
3
男は土足だった。窓も割れている。わたしは混乱していた。当たり前だけど。
男は指を下ろして言う。
「お前は昼夜逆転ニートだ。特に趣味もない。夜は暇だろう?」
「……そうだけどなんで知ってんの?」
「その暇な時間を使って魔物を倒さないか?」
「聞けよ」
「魔法を使えるようになるぞ?」
魔法。
それはちょっと魅力的に聞こえた。
「魔法って、例えば?」
「母上に怒られるのを回避できる」
「なる」
「さすがニート」
4
「自己紹介をしよう。私は魔法使い。博士と呼んでくれ」
博士。
窓からガラスを突き破って流血しながら魔法少女になることを提案してきた博士。
普通に怪しい。
「……魔法は使える?」
「もちろん」
「……」
「……」
「どうて」
「黙れニート」
5
「魔法少女になるからにはコスチュームが必要だ」
博士が指をパチンと鳴らすと、空中から布がばさりと落ちてきた。
マジで魔法使えるんだ……。
ぼんやりとそう思っていると、博士がババーン!とその布を広げた。
「これがお前のコスチュームだ」
それはただのレモン色のワンピースだった。
魔法少女っぽいフリルとか何もない。ハートとかの飾りもついてない。
「……地味じゃない?」
「経費削減だ」
「えー……。テンション上がるような可愛いのにしてよ」
「ニートにかける金などない!」
「ママと同じこと言うな!」
6
「我が社は常に人手不足だから、削れるところは削っている」
「会社なんだ……」
「よく考えてみろ。求人が出せるか? 魔法使い、魔法少女募集! 未経験者歓迎! 先輩が詳しく教えます! 昇給、正社員登用あり。制服貸与」
「怪し過ぎる」
続く