第22話, 未来に焦がれて
第二章スタートです!
続々投稿して行きますよ〜!
私は今、どこを目指してこの道を進んでいるのだろうか。
二千年。
それだけの時間をただ、この欠片ほどの希望を叶えるために費やしてきた。
今更後に引くことなど到底できない。
いや、半端な私は逃げることさえできない。
そんな勇気があったのなら、私は今ここにいない。
地に伏したこの世界の穢れを前に、庇うように立ちはだかる目の前の彼のようになれたなら。
私はかつて、無力なただの少年だった。
人とは違う不可思議な力があったために、村の人々からは蔑まれ、気味悪がられたが、それを覆すだけの力を持っていなかった。
多勢が弾圧という刃を振りかざすことで、無勢は迫害という傷を被る。
この身には幾度となく傷をつけられ、そしてそんな人々の心の内が透けて見えてしまう私にとって、他人はすべからく狂気の塊だった。
そんな人に怯える私の元に、一人の少女が現れた。
少女の心の内は、陽だまりのように温かで綺麗だった。
こんな人も存在するのだと、心震えた。
少女は私と同じ無勢側の人間であるのにいつも笑っていた。
笑顔を絶やさず、朗らかに、明るく毎日を過ごしていた。
この少女と同じ時を重ねるとともに、次第に私は彼女に惹かれていった。
少年から青年へと成長した私は、彼女に愛を伝えた。
彼女は少し照れくさそうに、けれどはっきりと私の愛を受け入れてくれた。
私と彼女は村を飛び出し、二人きりの生活を始めた。
畑仕事で得た僅かな稼ぎで日々の生計を立て、病弱な彼女と二人、静かに暮らしていた。
ささやかで慎ましく、そして何より穏やかだった。
けれどもあの日。
何もかもが終わりを迎え、そして全てが始まることとなった日。
私は恋人のために、一人の大切な友を裏切った。
けれども友は私を責めることなく、あろうことか私に対して謝罪をした。
気づいてやれなくてすまない。
手を差し伸べることができなくてすまなかった、と。
違う。
私が欲しかった言葉は謝罪などではない。
私は彼に責めてほしかった。
彼に拳を振るわれても、甘んじて受け入れるつもりだった。
それだけでは決して赦されない罪を私は犯したというのに。
彼はその後死んだ。
そして私は恋人も救うこともできなかった。
友を犠牲にし、恋人を失って独り残された私は、やがて悪魔となって死さえも失ってしまった。
生き地獄。
何もかもを失った私は暗闇を彷徨い続けた。
私は一体、誰のためにこの道を進んでいるのだろうか。
いつからか頭にはもやがかかったようで、自分のかつての名を思い出すことができない。
私が裏切った友人の顔も思い出せない。
愛しい恋人のことさえ何も…
記憶に残っているのはただ結果のみ。
ともすれば全て幻だったのではないか。
そんな思考に何度襲われたことか…
手元に唯一残った希望は、この世界に新たな神を生み出すこと。
友人の愛した人が、彷徨い続ける私に託してくれた希望。
この手から溢れ落ちないよう必死に抱えている。
叶えた先に待ち受ける未来を、私は知らない。
ただ一つ確かなのは、その希望を叶えることが私の贖罪なのだ。




