7 リオンside2
お読み頂きありがとうございます。
私の思っていたよりも反響があり驚いています。
いつもいらしてくださる方もはじめましての方も、本当にありがとうございます。
兄上と同じ気持ちでいられた事が嬉しかった。
やはり兄上は変わらない。兄こそ、あの兄のカリスマ性こそ王にふさわしい。
そう喜んでいると……
「そうそう。私が協力出来るのはとりあえずここまでだからな。後はがんばれよ」
ニヤリと笑って兄上は退室していった。
そんなに分かりやすかったのか! と羞恥で衝撃を受けたが、兄上と神官長のおかげでチャンスを得たのだ。素直にありがたいと感謝した。
出来れば彼女が目覚めた時に、私が側にいたい。
いや。いつでも彼女の側にいるのが私でありたい。そっと彼女の眠る寝台に腰かける。彼女の小さな寝息が聞こえる。息をしてここにいる。それだけでも堪らなく嬉しかった。
白く細い華奢な腕は胸の上で組まれて、寝息に合わせて上下している。流れるような黒髪を一房指で掬い上げキスをおとす。やはり彼女から甘い香りする。胸がぎゅっと苦しいような、でもそれ以上に嬉しいのだ。自分の気持ちが制御できない。しかし、悪くないと不思議な気分だ。
声をかけた方が良いか、しばらく様子を見た方が良いのか悩んでいると彼女が身動ぎした後、静かに目をあけた。
そして、大きな瞳を私に向けにこりと笑う。
「……あれ? 今日もまたあなたが来てくれたのね。……嬉しい」
まだ寝ぼけているのだろうか。そして、いつもこんな嬉しい事を言ってくれていたのかと……心が震える。
実際に心臓がドキンと跳ねている。私の心臓を止めるつもりだろうか。声は鈴の音の様に美しい……
いや、まずは現状を認識して貰おう。
「神子様、こちらに降りてくださった事にまずは感謝を」
すると、何度か目をパチパチ瞬かせた後、大きく眼を見開いた。なんだこの可愛いらしさは。抱きしめたい。
ゆっくり身体を起こすのを支える。あの甘い香りにめまいがする。
「お身体に何か異常はありませんか? 神殿からこちらのお部屋に移しました。この部屋はどうぞお好きに使ってください」
「身体は大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
「いえ。いつも私の方こそありがとうございます。……やっとあなたに会えた」
そう言って手を重ねると、たちまち頬や耳まで真っ赤になってうつむき、小さく「はい」と答える彼女を押し倒さなかった私を自分でも褒めたい。あまりに可愛いらしい。
「私はこの国の第二王子でリオン・カステリオ・デ・ジェラルド。どうぞ、リオンとおよびください」
「はい。リオン様」
「いえ。リオンと……神子様は私達の身分に縛られる必要はありません。あなたは自由なのですから」
「でも……」
「リオンと」
「はい。リオン」
「私は……ええっと……あ! やだ。あの……実は今は名前がなくて……あ、でも前の…………沙羅です。九条沙羅。私の事も沙羅と呼んでください。」
「ではサラとお呼びしても?」
サラと呼べば頬を更に赤く染めうなずいている。彼女は少し困った様にしながらも、名前を呼ぶ事に同意してくれた。名前を知ることが出来て嬉しい。どんな些細な事でも彼女の事ならば知りたい。
すると、彼女はためらいながら聞いてきた。
「あの……私、降りてきたというのはどういう事なのでしょうか?」
その質問には驚かされた。彼女はどうも、神子様が降臨する事を知らない様だった。知らずに降りて来てしまったという事なのだろう。
実際、神子様に関する事はあまり知られていない。ただ何百年に一度くらいの頻度で降りてくることなど、私の知っている事を話した。彼女は私の話しを聞きながら、何か考えている。
「珠ちゃん達が朝からソワソワしていたのは、私が降りる事を知っていたのかしら?」
「タマちゃんとは?」
「光りの珠達の事なんです。私のいた所にふわふわと飛んでいた子たちなんですけど……そこには珠ちゃん達と私しか居なくて……今朝はいつもと違っていたから……」
人差し指を頬にあて、小首を傾げる姿は小動物にしか見えない……ではなく、サラはその珠ちゃんと過ごして居たようだ。
今朝は様子が違っていたと……こちらでいつもと違っていた事といえば……
「今日は国の聖女を決める試験に関する式典があったのです」
「それで、いつも祈りを捧げてくれる皆がみえたのね。あそこにいた皆は祈る力が強い人達ばかりだったもの」
そうにこりと笑って更に少しだけ話しをした後、侍女のベロニカや近衛騎士達を紹介した。その際、急に彼女が何かを考えこんでいる様子だったが、その後は少し休みたいと言っていたので、降りられた戸惑いもあるのだろうとそっとしておいた。
その後、侍女と多少なりと打ち解けたらしく笑顔もみられるとの報告を受けていた。ただ、やはり何か考えこむ様子がみられる事、昼も食事をとれない様子が報告されていた。
夕食も断られたのは辛かったが、食事が出来そうにないと言われてしまったのでしょうがない。後で、侍女に果物や甘い物でも届けさせるとしよう。
翌朝は眠れなかったのか、少し顔色の悪い彼女と一緒に朝食をとる。昨夜の果物のお礼を言われて微笑まれただけで、私の心臓は早鐘のように高鳴る。嬉しい。こんな気持ちは初めてで、自分でも戸惑う。子供のように自分の気持ちが制御出来ずにいるが、彼女に恋したあの頃に戻ってしまったのだろうかと自嘲する。
「今日は父上や兄上達がサラに会いたいと言っていたが、良いだろうか? 他にも聖女候補達や王宮の者を数名紹介したい」
彼女はもちろんですと笑ってから、また後程迎えに行くとお互いに席をたった。
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後、残り2話です。よろしくお願いいたします。