6 ウィリアムside
いつもありがとうございます。
今日はお兄ちゃんです。
楽しんで頂けると嬉しいです。
私にとって半年違いの可愛い弟は、仲の良い友でもあり一緒に学ぶ戦友でもあった。
弟は、剣術も勉学も私と変わらずに出来が良かった。だからこそ、一緒に鍛練するのも楽しかったし学ぶのも楽しかった。
いつ頃からだったか、弟を王太子に据えたい一部の過激な貴族達が暗躍しはじめた。
弟は 私 と同じくらい優秀だ。しかも、神子様の血をひく巫女を母に持った為、魔力・神力共に他に例をみない程強かった。剣術だけなら同じレベルだが、魔法を使えば私など相手にもならないだろう。
だが、私が王太子に選ばれていた。
私が正妃の子供だからなのか、それとも半年だけでも早く生まれたためか……私自身の価値ではないのではないか。
そうして私は下らない子供じみた嫉妬で弟を遠ざけ傷つけた。
弟と離れてすぐに後悔が募る。あの子が王位を望んでいない事など、良く知っていたのだ。幼いながら、いつでも私の為に動いてくれていた。
それがまた、私にとって辛い事だった。
本当に王にふさわしいのは、弟ではないか。
皆がそう思っているのではないか。幼い私の心は嫉妬と猜疑心でいっぱいになっていた。
定期的にふわりとした白い光の珠が、くるくると私の周りをまわっている事があった。神の力が働いている事は直ぐにわかっていた。毒に侵されていたり、体力が落ちていたりと身体的な際だけでなく、猜疑心で身動きがとれない時や、悪意に気落ちしている時など、私に何かあった時に弟が祈ってくれているらしい。
弟はいつでもまっすぐだ。
私を兄と慕い私が王になると信じてくれている。……ならば私は兄として応えたい。弟が支えたい王となろう。
そのためには、まず力をつけなければならない。誰にも文句のつけようがない王としての力を得てみせよう。そして、弟と私を引き離し、力を得たい貴族達を明らかにしてみせよう。膿は潰して出しきらなければ……そうしたら、弟を迎えに行こう。
そう誓ってからも、老獪な貴族達のしっぽを掴むのは苦労した。悔しいが、まだあと一歩足りない。そうしている間にも弟と私には距離が出来てしまっている気がする。近衛騎士達も一部の者にしか内情は知らせていないため、弟に警戒をしている者もいるようだし、逆に弟の近衛騎士達も私に警戒をしているようだ。
そんな時、神子様が降臨された。
多くの貴族の前で、神子様の言葉によって弟が私の味方であり、心から私を案じてくれていると証明されたのだ。噂に惑わされる貴族どもはこれで落ち着くだろう。後は影で動いている貴族のみだ。神子様降臨や聖女試験に乗じて動きがあるだろう。そこで全てを炙り出したい。
それよりも、弟の様子がおかしい。
確かに仲の良かった幼い頃に神子様を見た事や恋情のような想いを話していたが……まさか今でも想っているのだろうか?
あの私に譲ってばかりで、欲しいものなど口にしない弟が、神子様を抱き上げ離そうとしない。……間違いないな……まさか神子様か……弟よ。頭を抱えそうになる。
しかし、その想いが神子様の降臨に繋がっているのかもしれないな……と、ふと思った。
今度こそ私が弟に力を貸そう。いや、力になりたい。
神子様は弟の住まう月の宮の一室にお連れする事にした。月の宮は第二王子の住まう宮殿で、王宮の奥に位置し独立しているため、警備もしやすくて良いだろうと進言しておいた。一瞬、弟が嬉しそうな顔をしたのを見逃さなかった。……可愛いやつだ。
私が協力出来るのは、とりあえずこの辺までか。
落ち着いた所で侍女の用意したお茶を飲む。目配せすると近衛騎士も侍女も静かに退室していく。
「こうして話せるのも何年かぶりだな。いつも私の為に祈りをありがとう」
そう言うと、弟は眠る神子様からやっと離れ、昔と変わらずまっすぐに私を見つめてきた。
「いえ。兄上をいつも支えたいと……私に力がないばかりに……上手く立ち回れず……不甲斐ないです」
「いや。私もまだ暗躍している連中の全てを把握しきれていないのだ。もうしばらく待て。……出来れば……また昔の様に…………いや。ふふ……またな」
同じ気持ちでいる事はわかり合えた。これ以上の言葉はお互いに重ねる事はなかった。最近では一番嬉しい出来事であった。これも神子様の恩恵か? 静かに笑って立ち上がる。
「そうそう。私が協力出来るのはとりあえずここまでだからな。後はがんばれよ。」
ニヤリと笑って退室した。
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