プロローグ
プロローグだけ少し短めです。
よろしくお願いいたします。
「嘘でしょう……」
私はこの時に初めて気づいたのだった。いや、やっと気づいたと言うべきなのか……
私はあまりの衝撃に手足が震えて立っていられず、その場に崩れ落ちそうになった。しかし、私の異変にすぐに気づいた神官と護衛騎士に支えられ倒れる事はなく、すぐに近くのソファーに運ばれた。
大きなシャンデリアがキラキラと煌めき、天井画の美しい女神の微笑みがソファーに横にされた私を見おろしている。この絢爛豪華なホールに関係者が集められ、関係者全員が並んだ姿を目の前にしてやっと気づいた……
ここは乙女ゲームの世界だったのだと……。
私はこの事実にただ茫然とするしかなかった。
だって、たくさんラノベも小説もよくある転生もの転移もの全てにおいて主人公は、ちゃんとすぐ気づいていたから。
でも自分にあてはめて、よく考えて欲しい。
どんなに好きな乙女ゲームであっても、この目の前の三次元イケメンや美少女が、キャラクターだとはすぐに認識は出来ないと言うことを。
映画化するのにあたって、役者さんと推しキャラとの違いに違和感あるな~なんてレベルじゃない。それでも、そのキャラクターだと認識して映画を観ているのだから「違和感あるな」位の気持ちだっただけだ。
その逆は認識出来ないのはしょうがないと思う。
そう。例えば美女と野獣のエマ・ワト○ンが、どんなにベルにぴったりで素敵だと思っても、エマ・ワ○ソンをみてベルとは認識出来ないのに近いかしら?
今まで読んだあれは、やはり小説だったのだなぁ……と遠い目をして、現実逃避してしまっていた。
「神子様……」
どのくらい現実逃避していたのか、心配した神官のひとりが未だに震えている私におずおずと声をかけてきた。
ヒロイン、ライバル令嬢、政略対象の王子様達、騎士、魔術師、神官といった面々が、震えている私の方を心配そうにみつめている。
見つめている人達をみて、その絵が完成している事にまた衝撃を受けた。
私のポジションのキャラクターなんて居なかったよね?と。
聖女を決める試験を通して攻略するのよね? ……聖女候補でもないし、居ないキャラクターの神子が私ってどういう事―?
あまりの情報量に処理しきれなくなった私は、そこで意識を失ってしまった……びっくりしすぎて失神するなんて、それこそ小説の中だけで起きるものだと思っていたなぁと、薄れゆく意識の中で考えていた。