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7.しづく2
何もしなくても時間は過ぎていく。
しづくは窓から流れる雲を見上げた。
正哉兄さんが借りてくれたワンルームマンション。
毎日のようにしずるや梓さんが訪ねてきてくれる。
正哉兄さんも間をおかず、連絡をくれていた。
夜中に寂しくて泣いてしまう時がある。
何もかも壊したくなる時がある。
奇声を出して暴れたくなることが時がある。
正哉兄さんもしずるも梓さんもゆっくりでいいと言ってくれる。
ゆっくりと新しい自分を作っていけばいいと。
新しい自分って?
作れる?
どうやって?
不安で押し潰されそうになる。
探してしまう、大きな手を。
求めてしまう、暖かい温もりを。
弱い弱い自分。
強くならなきゃ。
みんなに心配かけないように。
笑えるように。
しづくは荷物に視線を戻した。
あの家からの荷物はまだまだ片付いていない。
とりあえず片付けよう。
出来ることだけしていこう。