負け犬クラブ6
レイ(圭人)
フォー(覚、圭人の友人、四回目の結婚をしている)
ダグ(強がりを言った男、家族に妻を壊された男)
エフ(元妻を強突張りと言った男)
メガネ(妻に浮気された男)
ユウ(人妻狙いの男、社宅で奥さんが苛めらた男)
「とうとう俺とレイだけか」
フォー(覚)はグラスの酒を空にして、ニヤリと笑った。
レイ(圭人)は決心がつかない。うまく話せる自信もない。
フォーの視線を感じるが合わせられない。
「じゃあ、俺からいこうか」
最初に話したな。四回結婚してるって。
一人目は政略結婚。最初から、お互い嫌だったんだろうなー。あいつも俺も最初から見下しあっていた。向こうの方が下だってね。だから、女としての矜持をへし折るような浮気をしてやって別れた。その後、あいつは自殺未遂して結構な騒ぎ起こしていたけど、離婚して他人だからとほっといた。父親に誰かに嫁がされていったとは聞いている。パーティーとかで会ってないからどっかで引き込もってんじゃない?
で、因果応報。そっ、まさにその通り。前妻にしたことをそのまま二人目の妻にやられた。いや、確かにね、上には上のヤツがいるのは分かってたけど、井戸の中の…を思い知ったよ。しばらくはなんもやる気なかったなー。まあ、自殺するほどじゃあなかったけど。二人目は海外でうまくやってるはずだよ。
三人目の結婚は共同経営者としてうまくいってたんだけど、不況だろ。共倒れになりそうで別れたってヤツ。まあ、円満離婚といえるなー。今でも経営者としてお互い雪駄琢磨してるよ。女と思ったら足元巣食われるからな、気が抜けない相手。
で、今回、四人目なんだけど…、彼女は俺と結婚していることを知らない。
フォーの発言にその場が凍りつく。
「とうとう犯罪者が」
「いやいや、家庭を壊しまくってるお前が言えるか」
「相手が知らないということは…」
「まっ、普通そんな反応だろうな」
フォーは笑いながら肩を竦めた。そんなこと気にならないという感じに。
「彼女は自分のことも分からない」
さっきとは違う意味でその場が凍りつく。
「ちょっと待って…」
「それって…」
「びょうき?」
「うーん、病気なんだろうな。なんかカタカナの長い名前だったから、覚えるのが面倒で。」
「彼女の父親が癌であと数ヵ月の余命宣告を受けている。世話を引き継いで欲しいと頼まれたんだ。もう結婚する気はなかったが、昔から知っている姉貴のような人だったから引き受けた」
夫のほうが財産に群がる亡者どもを蹴散らせられるだろ。
フォーはあくまでも軽く言うが聞くほうには全く気軽に聞ける話にはとても思えない。
「若年性アルツハイマー?」
「いや、舌を噛みそうな長いややこしい名前。今、サナトリウムに入っている」
メガネの問いにフォーは首を軽く傾ける。
「もしかして、初恋の相手」
「たぶん、そうなんだろう。会って『誰?』と言われても会えることが凄く嬉しい」
からかうようなエフの言葉に照れもなくフォーが答える。
「辛くないか。好きなヤツがそんなんで」
「たまに″俺″を思い出してくれるんだ。目の前の俺は俺の親戚の誰かと思っててさ。『あの子、元気にしてます?』とか聞いてくんの。彼女の中では俺は十代前半のガキみたいで」
痛ましそうにダグが聞くがフォーは気にしてなさそうに笑う。
「幸せ…?」
レイの言葉にニィとフォーは笑った。
「名義だけでも手にしたからな。もう離婚歴付ける気ないし」
「お前、やっぱり負け犬じゃないじゃん。初恋実らせて」
ユウが呆れたように言って、飲もう飲もうと騒ぎだした。
「負け犬だよ、彼女がそうなるまで気が付かなかったのだから」
その呟きをレイだけが聞いていた。
フォー(覚)はそれでも幸せです。




