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七夕
「七夕が終わったのに、まだお願い事、書けるよ。」
圭人は、小さな子供の言葉にハッとした。
七月七日が過ぎ、七夕が終わっていた。
去年の七夕は、しづくが店で売っている七夕セットを買ってきていて二人で楽しんだ。
『来年の七夕は、親子三人でありますように』
しづくが短冊に書いた願い事だ。
二人でそうしなるようにとベッドに向かったのを覚えている。
それが実現しなかったのは、圭人の責。
あの時、伸ばされた手を振り払わなければ、大きなお腹を愛でていたのかもしれない。
圭人は、首を振る。
去年の七夕の翌日、江里に会ってホテルに行っていた。
しづくの短冊を読んでベッドを共にしたのに、次の日に違う女を抱くなんて。
圭人に自嘲の笑みか浮かぶ。
あまりにも酷い裏切りに、情けない自分に。
しづくとの子供が欲しかった。
子供を失い冷たい部屋で泣くしづくを見たくなかった。
しづくをうまく慰められない自分が嫌だった。
圭人は、沢山の短冊がかかった笹を泣きそうな目で長い間見つめていた。




