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しづく 愚か者の列に並んだ者  作者: はるあき
33/44

32.始まりの終わり、そして始まり

誤字報告書、ありがとうございます。

 男はふと目についた店に入った。

 別れた妻が好きそうな店だ。

 妻と別れて三年が経った。あの日から、一度も妻の声さえ聞いたことがない。夢の中でしか。

 カラン

 ドアにつけられたベルがなる。

 木目調で整えられた店内。茶色で店内が暗くなるのを大きな窓と色とりどりなインテリアが明るくしている。

 空いている席に座った。

 平日だからか、時間帯なのか、ほぼ貸し切り状態だ。

 コーヒーを頼んで外を見る。

 青い空が広がっている。いい天気だ。

 子供たちはあの空で遊んでいるだろうか?

 あれから、何人かの女性と付き合った。いや、誘われて付き合おうとした。誰一人、一緒に暮らしたいと思えなかった。

 会いたい。

 今ある思いが未練なのか、謝罪のためなのか、自分でもよく分からない。

 ただ純粋に会いたいと思う。

 カランとドアのベルがなった。


「あら、どうしたの?今日は」


 陽気な店員が気軽な言葉で来客に声をかけている。

 馴染みの客が来たのだろう。

 ベビーカーを押した女。

 結婚したのか? 子供は無事生むことが出来たのか?

 胸がギュッと痛んだが幸せになっていて欲しいとも切に思う。


「弟の子なの。寝てしまって、家に帰るともう一人に起こされちゃうから」


 おとうとのこ?

 がっかりすると同じに安堵してしまう。


「もう一人って?」

「双子なの。今日は、奥さんと一人ずつ担当」


 カウンターの近くで話す女。

 愛しそうにベビーカーの子供を見ている。

 子供好きは変わっていない。

 どうやって声をかけよう?

 楽しそうな顔が嫌悪に歪んだらどうしたらいい。

 このまま気付かなかったフリをしたほうがいい?

 女が男に気がついた。

 目が大きく見開かれて優しく微笑んだ。

 笑う顔がずっと見たかった。


「久しぶりだね」

「久しぶり。少し話せるかな。」


 まだ自分でもどうしてあんなことをしたのか、分からない。

 自分の弱さから、逃げていたと言われたら、そうなのかもしれない。

 あの時のことを君が聞かなければ掘り返す気はない。

 ただ、君を傷付けたコトを謝るだけ。

 それから、これは君に言えない。

 言い訳にしか聞こえないから。

 あの時、愛していたのは君だけだ、と。

 そして、君を傷付け、逃げた。今も弱い俺だけど会って分かった。

 今も君を愛してる。

 だから、君の幸せを願おう。

本編、これで終わりです。

お付き合いいただき、ありがとうございます。

力不足で申し訳ありません。

裏切られたしづくの立ち直りと、子供だった男の成長を書きたかったのですが・・・。

捕捉(リハビリ編、サイドキャラの裏事情)等を不定期にアップします。

また、お付き合い下さいませ。



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