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しづく 愚か者の列に並んだ者  作者: はるあき
30/44

29.しづく6

いつもありがとうございます。

 しづくは何度も何度もパンフレットを確認した。

 出来るかどうか分からない。

 けど、やってみたいと思う。

 まずは相談。

 反対はされないと思うけど、心配はさせたくない。


「なんだよ、しづく。話って」


 まず、しずると梓さんが来てくれた。


「正哉兄さんが来るまで、待ってて」

「あっ、手伝います」


 梓さんがスッとキッチンに来てくれて、手伝ってくれる。

 インターフォンが鳴った。

「しずる、出てくれる? ピザだと思う」


 夕飯を作っても良かったのだけど、食器が揃ってないからピザを取った。


「了解。金は払っておくわ」


 キッチンからしずるに声をかける。


「お金はそこにあるから」


 今日はみんなに奢る予定なのに。

 本当はお店にしたかった。

 こんな時、どこがいいのかが分からなかった。いつも圭人に任せていたから。支払いも。

 だから、圭人に連れてってもらったお店は金額が怖くて使えなかった。両親の保険金(おかね)がまだ残っているから、どうにかなったけど。

 しずるはインターフォンに出て解錠している。


「ピザ屋に会ったから、受け取ったが」


 数分後、入ってきたのは正哉兄さんだった。

 しづくはガックリと肩を落とした。ピザを持ってきたということは、支払いは済んでいるのだろう。

 正哉兄さんは絶対お金を受け取ってくれない。


「で、しづく、話って?」

「まって、まずご飯にしよう」


 冷蔵庫からビールを取り出して、テーブルに向かう。


「ピザ、適当だけど」


 紙皿を回す。

 他愛ない話をして、笑って、時々拗ねて、怒ったりしてみてまた笑う。


「で、しづく、話って」


 デザートになった時点で正哉兄さんが口を開いた。

 デザートは大好きなケーキ屋さんのプリン。


「まず、一つ目。働こうと思います」


 しづくは姿勢を正してみんなを見た。


「働かなくていいだろ!」


 しずる、働かないと趣味がないから暇なんですけど。それにいくらお金があるといっても無限にあるわけじゃない。


「体は、大丈夫か?」


 正哉兄さんの心配は分かる。


「精神科も安定していると言われたし、体のほうも退院して何日経っていると思うの」


 それにすぐに就職出来るとも限らない。

 しづくの場合、職種が決まってくるから。

 それでも、()()()()()()、きちんと生活出来ていると胸を張っていえるようになっていたい。


「一つ目ということは、二つ目があるんだな」


 ビールを飲みながら、正哉兄さんが聞いてきた。

 反対はされないみたいだ。

「これ、やってみようと思う」


 パンフレットを見せた。

 この秋、開講予定の総合デザイン専門学校。今、受講生を募集している。色々な″()く″を集めた学校で、鉛筆からコンピューターまで様々な″(えが)く″を学ぶことが出来る。

 その中にある″絵本教室″に申し込もうと思っている。

 生まれ変わったあの子たちが読める本を作りたい。


「ああ、それか。事務員もやるか?」


 チラリとパンフレットを見た正哉兄さんがさらりと言った。


「今度始める新しい事業って!」

「どういうこと!」


 しずると声が重なった。


「昨日はそれについて話してた」


 あ、だから、あの男性と?

 視線で気づいたのか、正哉兄さんが頷いた。


「学校を作り、優秀な社員を確保する。いいアイデアだろう」

「優秀な生徒が他所に行くこともあるけどなー」


 ライバル養成学校が出来ることで、しずるが遠い目になっている。


「社でうまくいかず不貞腐れてるヤツも講師にしたら、目が出る場合がある」


 横目で見ると、しずるがホッとしていた。

 講師にならなくてすると思ったみたいだ。

 けど、正哉兄さんがそんな人たちばかりにさせるかしら?


「もちろん、お前も講師するんだぞ。人に教えることで伸びるヤツもいるからな。平等にしないと可笑しいだろうが」


 ニヤリと笑う正哉兄さんと頭を抱えているしずる。

 しずるは人に教えるの苦手だから。

「それはそうと、事務員の話だが、知り合いがちょうど募集している。応募してみるか?」


 専門学校の事務員は生徒の募集をしているから、本当はもう決まっているのだろう。そこにコネで入るのは気が引ける。


「どんな仕事なの?」


 事務員といっても色々ある。立ち仕事が多い場所もある。


「支援団体の事務処理の職員だ。諸事情で教育を受けられない子供たちを支援するな」

「あ!会社(うち)が、いつもチャリティーに参加してる?」


 講師の件から立ち直ったしずるが会話に入ってくる。

 じゃあ、けっこう大きなところなんだ。


「教室に通って、仕事って大丈夫ですか?」


 梓さんが心配して聞いてくれる。


「絵本教室はいいけどさ。仕事はもっとゆっくりしても」


 しずる、ダラダラした生活してたら働きたくなくなっちゃう。

 ちゃんと地に足をつけてるって安心させたいから。

 正哉兄さんは何も言わない。

 ということは賛成してくれている。


「教室は、秋からだし。色々してみたいから」


 せっかくだから、何でも挑戦してみよう。


「応募してみる。採用されるかは分からないんだし。」


 しずるが心配そうに顔をしかめるが気にしない。

 前に進むと決めたのだから。

後二話で終了です。

捕捉が何話か続きます。


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