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しづく 愚か者の列に並んだ者  作者: はるあき
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22.清治3

 清治は部屋に入ってきた葉月に気付き、苦笑した。

 今から、何を言われるやら。

 言い過ぎたのは分かっている。

 もっと精神的に落ち着いたらとは思っていた。

 が、今が時期だったのかもしれない。

 出来事が思い出と化す前で。


「圭人は、一人になりたいって」

「悪いな」


 疲れた表情の葉月(つま)に謝罪する。


「私もごめんなさい」


 一瞬、何を謝られたのか分からなかった。


「思いだされたでしょう?」


 それが、面の皮が厚い愚かな母のことを言っているのか、巻き込まれ心を壊されて命を絶った女性のことを言っているのか。

 特に前者は血の繋がりさえ忌々しく思えてしまう。葉月の回りをウロチョロしているのは知っている。ああいう阿婆擦れに情けは無用なのに。いい加減、身の程を思い知らせたほうがいいかもしれない。


「何故、不倫したのかしら?」


 抱きついてくる葉月に答える言葉は一つだ。


「分からない。本人も分からないかもしれない」


 圭人君は、言い訳を(なにも)言わなかった。

 誰が悪いとも。


「だが、彼は何も考えていなかった」


 しづくさんのことも、木崎江里のことも、野村恵美のことも。

 だから、簡単に傷つけた。

 しづくさんには隠して。

 木崎江里には甘えて。

 野村恵美には思いに気づかず。

 しづくさんを裏切って。

 木崎江里を利用して。

 野村恵美を夢見させた。

 だから、三人とも傷ついた。

 ただ、木崎江里は最後まで圭人君に尽く甘やかした。目を背けていたことに目を向けさせ認めさせた。己の傷が深くなるのが分かりながら。それを圭人君は分かっていただろうか?


「圭人、大丈夫かしら?」


 ポツリと漏らす言葉に返すのは同じ答え。


「分からない。協力出来ることは協力するよ。」


 腕の中で、葉月がありがとうと頷いた。



 ふと、夜中に目が覚めた。

 葉月は隣でよく寝ている。

 ″白い結婚″を義父の幸生から反対され、一人いたら十分だろうと思っていたのが、いつのまにか三児の父親になっている。四人目ももしかしたらもうお腹にいるのかもしれない。

 結婚に対して希望も期待も何も持っていなかった自分が葉月と人並みの夫婦関係を築けているのだから、人の心ほど分からないものはないと思う。

 義務と義理だけの思いが変わっているのを自分でも感じる。葉月の努力の賜物だ。

 圭人君には悪いが、義母・瑞季の関心と愛情が息子にだけ注がれたことに感謝している。寂しい思いをしただろうが、葉月(つま)が瑞季の被害者にならなかったことに。

 ふと、思った。

 圭人君は、悲しむしづくさんが重荷になっていた?と。

 彼女の希望を叶えたいがまた悲しむ姿を見たくなかったのか?

 だとしても、圭人君はしづくさんとよく話し合うべきだった。

ありがとうございます。

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